キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第01話 ライブは成功?

 会議室では、肌を刺すような沈黙が続いていた。

 部屋の中に置かれているホワイトボードには、大きく目立つ赤文字で”グループが売れるためには?”という文字が書かれていた。そして、椅子に深く座って腕を組み静止する皆の表情は渋い。

 

 その会議室には5人のメンバーが居た。

 

 青地剛輝、緑間拓海、浅黄龍二、舞黒優人。そして俺、赤井賢人が揃って出来上がった男性アイドルグループ「クロマキー」

 

 メジャーデビューを果たして、初のワンマンライブも実施した。

 

 ありがたい事にデビューして初めて行うライブだというにも関わらず、1万人を超えるお客様を動員する結果となり、デビュー初ライブで大成功だと言える結果に終わった。

 

 デビューして間もないから知名度もそこそこのアイドルなのに集まった動員数だと考えると、驚異的なほどに多いお客さんの数だったので間違いなくライブは大成功と言えるだろう。

 

 この結果はメンバーのひとり、デビュー前にも関わらず既に俳優としてドラマや映画に出演して活躍した実績があり、俳優を辞めてアイドルとなった今も変わらず多くのファンが変わらず付いている緑間拓海の力が大きいだろう。

 

 その他にも、父親が大手有名企業社長であり御曹司でもある浅黄龍二の幅広い交友関係やら、舞黒優人がネット上で独自で動き密かに行った地道だが手堅い広報活動の結果だと言える。

 

 それから、青地剛輝と俺達が小学生の頃から長年続けてきた先輩アイドルのバックダンサーとして仕事をこなしていた成果が、微力ながら今回の初ライブ動員に結びついたんだと考えられる。

 

 とにかく、5人のメンバー皆の力が合わさって初のワンマンライブとしては破格と言える位の人数が集まってくれた言える。

 

 

 

 このように、最初から好スタートを切れたと思えるようなアイドルグループ。これから俺達は有名になっていって、自分たちは芸能界で売れるだろうと予想していた。

 

 だがしかし、そんな俺達の予想は大きく外れていた。ライブ後の俺達には仕事の話が全く舞い込んで来なかったのだ。

 

「仕事の話、全然こないねー」
「ライブ大成功やったのに、何でや!?」

 仕事もなく暇な現状について龍二がポツリと不満そうに漏らした。そして、剛輝が叫ぶように意味が分からないと不服の声を上げた。

 

 彼が言うようにライブは成功に終わった筈だった。だが、その後はグループの活動に何ら影響が無かったのだから。

 

「デビューしてから初めてのライブで、1万人もお客さんを集めたのなら少しは話題になってもおかしくない筈。なのに、テレビでは1つもニュースとしては流れていない」

 沈着冷静に優人が知っている現状について、皆に説明をしてくれた。そして今の状況はおかしいと疑問を呈する。

 

 ライブに関して、それどころかクロマキーというアイドルグループについての情報がテレビや雑誌等のメディアには一切流れず、世間で騒がれることが無かったという。俺達が好きとか嫌いとかファンになっくれるとか以前に、知る機会が無いから認知されていないという状況らしい。

 

 ライブは大成功だった筈なのに、テレビでは不自然なくらい全く何にも触れられていなかった。

 

「つまり誰かが意図的に、俺達の存在を世間に知られないように情報を止めてるってこと?」
「多分、そうだと思う」

 話を聞いて俺は、思いつく理由を口に出してみると優人が同意した。予想ではあるものの、誰かが俺達の活躍を妨害しようとしている、という事について。

 

 なるほど、そんな事をしそうな人物に俺は心当たりがあった。

 

「アビリティズ事務所の現社長である、金盛って奴の仕業だろうね」

 俺や青地剛輝が以前所属していた大手芸能事務所である、アビリティズ事務所の現社長。以前あった出来事から推測すると、まだ俺達を恨んでの妨害工作をしているという考えに思い至った。

 

 そして、俺達を妨害するということは新しく芸能事務所を立ち上げた三喜田社長を妨害することにも繋がる。あの金盛という人は、アビリティズ事務所から三喜田さんを追い出すだけでは飽き足らず、その後も続けて嫌がらせをしてくるつもりのようだった。

 

「アイツか……」
「どういう事?」

 金盛という人物の性格について知っている剛輝は、俺の予想に首を縦に頷きながら納得し同意していた。

 

 しかし金盛をよく知らない、新しい芸能事務所が立ち上がった後にスカウトされて入ってきた拓海、龍二、そして優人の3人は疑問の表情を浮かべている。

 

 俺はアビリティズ事務所から社長という座を奪われた三喜田さんに関して説明し、その後にも色々あって俺と剛輝が三喜田さんに付いてきて新しい芸能事務所に移籍し、活動し始めた経緯についてを詳しく説明した。

 

「そんな事があったのか」
「酷いですね」
「あの人、そんな奴だったのか」

 話を聞いて、拓海、優人、それから龍二がそんな感想を漏らす。見た目は人畜無害そうな普通のおじさんだし、テレビに出演している頃は人当たりも良く外面がいい人だったので、勘違いしていたようだった。そして、そんな裏の顔がある人なのかと驚いている。


「けれど、これから僕たちどうしましょうか?」

 優人は金盛という人物に関しての話題から話を変えて、今後のグループ活動をどうするべきなのか、改めて皆に問いかける。さて、どうすればいいのか。

 

「とりあえず、テレビに出て知名度を上げるっていのは金盛って人の妨害があって今は無理、という事だよね?」
「じゃあ、テレビ以外で活躍して知名度を上げるようにしないと」
「知名度を上げるのに効果的な方法といえば……、イベントに出演したりテレビ以外には思いつかないな。そんな方法、他には無いんじゃないかなぁ」
「それなら、どないせいっちゅうねん」

 いま俺達が所属しているアイオニス芸能事務所の社長である三喜田さん。その三喜田さんが社長でありながら、クロマキーという俺達新人グループを売り出すため必死に営業に出てくれている。

 

 だがしかし、今の所はテレビに雑誌にイベント出演など全て断られていて仕事を取る事が出来ないでいるらしい。

 

 じゃあ、俺達は売れるためにどうするればいいのか。

 

 クロマキーという男性アイドルグループを世間の人達に、まずは知ってもらえるように。どんな活動が必要なのか、どんな活動をすればいいのか。

 

 皆で何度も話し合いを続けた。しかし、今のところは名案と言える答えは出てこないようだった。

 

 

次へ >>     目次

【スポンサーリンク】