第06話 ダンジョンモンスター

 入り口の兵士たちに許可をもらい、少し薄暗いダンジョン内部へと足を踏み入れた。

 真っ直ぐ続く一本道の先、奥の方は見通すことが出来ないぐらい薄暗いために不安な気分にさせられる。ダンジョン内部は、魔法で動作している光源が半永久的に中を照らし続けているが、この光源の光が若干弱いために真っ暗闇にはならないが輝度が足りないために薄暗くなっている。
 もっと遠くを見通したい場合は、松明などの照明道具をダンジョンへと持ち込めば良いのだが、毎回使うとなると費用がバカにならないし手荷物にもなる。
 魔法使いなら光を発生させる魔法を使えば照明道具も要らなくなるが、魔法を使うということは常に魔力を消費し続けること、魔法を使い続けている時にモンスターの奇襲を受けると別の魔法を使って対応することが出来ないというデメリットが大きすぎて、結局は緊急時以外の使用は控える事になる。そのため、最終的には少し薄暗い中でも目を凝らしてダンジョンを進むのが冒険者の定番となっている。

 長い通路を歩いて行くと、突き当りに階段があるのが見えてくる。階段までたどり着くと、フレデリカさんとシモーネさんと一度視線を合わせてから頷き合って階段を降りる。 
 階段を降りた先には3方向に分かれた、高さ5mに幅が10mぐらいある大きな道がある。内部は結構広いので、剣を振ったり魔法を放ったりするのには問題なさそうだった。
 クロッコ姉妹はいつも勘を頼って進む方向を決めているそうだが、それだと少し効率が悪いかもしれないと思って、僕が魔法で経路を探ることにした。

「魔力の消費は大丈夫か? 戦闘をするつもりなら、なるべく温存したほうが良いかもしれないぞ? 自衛のために少しは魔力を残しておく必要があるだろう?」
「コレぐらいの魔法ならいくら使っても大丈夫な位は鍛えているんですよ。ソレに、本当に無理そうなら相談して頼らせてもらいます」
 フレデリカさんは魔法使いとパーティを組んだ経験から、なるべく魔力を節約したほうが良いと忠告してくれた。しかし、実際に探索の魔法につていは全然魔力を使わないし大丈夫だと僕は考える。
 フレデリカさんは少し納得の言っていない顔をしていたが、僕が頼りにするかもしれないと伝えると、俄然やる気を出して任せろと非常に頼りになる返事を返してくれた。

 魔法を使って、今居る階層を調べて頭のなかに地図を作っていく。それほど広い階層ではないようで、5分ほどで頭のなかに今居る階層の全体地図を作成、そして次の階層へ降りるための階段がある場所へ向かう経路を描く事ができた。僕は魔法で調べた経路に沿って、クロッコ姉妹を案内しながらダンジョンを奥へと進んでいった。

 しばらくダンジョン内部の道を進んでいくと探索魔法に反応があった。反応のある方向へ注意を向けると、4本足で駆けてくるモンスターのものと思われる足音が聞こえてきた。

「前の方に何かいます。多分モンスターですが、コチラに走って向かってきています。モンスターの姿を確認してから攻撃に移って下さい」
 魔法で探った情報を2人に向かって報告し共有。フレデリカさんが大剣をしっかりと構えて備える。シモーネさんは弓を構え直して、無限矢を一本取り出してから矢を放つ準備をする。
「見えた! アーリーウルフが一匹、私が先に!」
 フレデリカさんが声を上げながら剣を振り上げて突っ込む。僕は彼女の援護をするために牽制用の魔法を放つ。

現れたモンスターの名はアーリーウルフ。体長はだいたい100cmぐらいの大きなオオカミ型モンスター、4本足を上手く使って素早く駆ける。アーリーウルフは素早い動きで翻弄するため為に、剣や弓で捉えるのが難しくて倒すのが少し面倒なモンスターと言われている。

 僕はフレデリカさんを援護するために、炎で創りだした矢“ファイヤアロー”を1本モンスターに向け発射。
 威力よりも矢のスピードを重視した魔法で、狙いを適当に定めて放つ。アーリーウルフに当って動きを止めた! と思ったら、ワーウルフは光の粒になって消えてしまった。
「あれ?」
 思わぬ効果に声が出た。

 ダンジョン内部に居るモンスターは攻撃を受けたり、傷を受けて血を流し続けると生命力が無くなる。そして、生命力が無くなればモンスターは死体になるのではなくて光の粒子になって、しばらくすると空中に溶けて消えていく。その時に、ドロップがあれば空間からアイテムが出現仕組みになっている。
 だから、ダンジョン内にはモンスターの死体が転がっているところを見ることはない。そして、ダンジョン内にいる一定のモンスターが倒されるとダンジョン内のどこかで復活して、またダンジョン内をさまよい続けるらしい。

 つまり、僕の牽制で放ったファイヤアローを受けたワーウルフが光の粒になったと言うことは……。
 僕は呆然と光の粒を見つめていた。そして、フレデリカさんが剣を振り上げた状態で顔をコチラに向ける。意気込んで突っ込んで行ったフレデリカさんの顔は恥ずかしそうな表情をしていた。
「えっと……、なんだか分からんが、すごい魔法だな!」
 剣を下ろして、彼女は僕とシモーネさんの元へと戻ってきた。

「さっきの魔法はすごかったな。だけど、さっきも心配したが魔力は大丈夫か?」
「今の魔法は援護の為にと思って撃ったものなので、そんなに魔力を込めずに放ったものです。だから魔力は全然消費してないんですよ」
 先ほどの魔法“ファイヤアロー”は、モンスターに当てて怯ませるぐらいの効果を想定して放ったもの。動きを止められたら良いな、ぐらいの考えで撃ったもので僅かな魔力しか込めていなかったから今の魔法で倒すつもりは全く無くて、想定外の事だった。
 アーリーウルフってこんなに弱かったか? と思ったが、多分久しぶりのダンジョン攻略で魔力コントロールがミスってしまったのだろう、不用な力が入ってしまったのだろうと考えて自分を納得させる。

「いやいや、援護と言ってもアーリーウルフを一撃で倒すなんて、凄い魔法じゃないか」
 フレデリカさんが興奮冷めやらぬ感じで僕を賞賛してくる。
「そうね、今まで組んだ魔法使いの魔法に比べて威力は段違いだわ」
 シモーネさんも追随して賞賛してくれる。聞けば、クロッコ姉妹が以前組んだ魔法使い達は非常に魔力が少なかったそうで。大体の人たちは魔法を10発も撃てば魔力を使い果たしてバテてしまったらしい。だけど魔法の威力は有ったそうなので、上手く指示して遠距離攻撃でモンスターにいい具合にダメージを与える切り札として活躍してもらったそうだ。
 流石にそんな魔力の低い魔法使いと比べられても僕としては微妙な気分になるだけだったが、何も言わずに胸のうちに秘めておいた。冒険者の魔法使いは姉妹の言う人達ばかりなのだろうか。

 そんな風にして、久しぶりのダンジョン突入して最初の戦闘はあっけなく終わった。

 その後もどんどん奥に進んでいくが、今居る階層のモンスターはどんなに魔力を絞って当てても一撃で倒せてしまえるような魔力耐久が低いモンスターしか居ないようだった。
 これじゃあ、クロッコ姉妹の力量を見る前にモンスターを倒しきってしまう。しかも、魔力を殆ど使わないので、モンスターとの戦闘終わりの間、ダンジョン内部へ突き進んでいる合間に全魔力が回復してしまう。そのぐらい、今使ってモンスターを倒せる魔法は魔力がほとんど必要ない。

 流石に出現するモンスターに歯ごたえがないと僕達3人の意見が一致し、2層、3層と最短ルートでダンジョン地下の奥へと突き進んでいく事に。

 5階層まで進むと、僕のファイヤアローの魔力を絞った遠距離からの牽制魔法を当てても一撃で死なないようなモンスターが出てきた。だがしかし、前線で振り上げるフレデリカさんの大剣と剛力で繰り出される一閃、僕とフレデリカさんの二撃でモンスターは尽く生命力を失っていった。そして、万が一倒し切れなくて光の粒子にならなくても、シモーネさんが弓で的確に射止めていく。
 今日即席で作ったパーティとして互いの動きにはまだ多少のぎこちなさは感じるが、だんだんと連携が上手くできるようになっている。
 
 姉妹が普段狩場にしている10階層。ココに来れば苦戦するかもと思っていたが、僕の牽制魔法で足止めしてからフレデリカさんが一撃を加えて、トドメにシモーネさんが弓で撃って仕留める。まだ光の粒子になっていなければ、ダメ押しにモンスターに向かって僕が魔法を当てる。このようにして攻撃パターンが上手くハマって、非常に簡単にモンスターを倒していくことが出来た。

「いやぁ早く着いたな。エリオットが居たから、ココに来るまでにいつもの3倍ぐらい早さでたどり着いたな」
「ほんとに。モンスターが近づいてきたら見える前にエリオット君が教えてくれるし、モンスターからの奇襲も受けなかったからダメージも受けなかった。本当に楽に来れたわ」
 なんだか、くすぐったいぐらいに褒めてくるクロッコ姉妹。探索魔法が非常に有効で、ダンジョン内部の状況を大体把握できるために、モンスターの出現位置や他の冒険者の位置などがハッキリ分かる。これらの情報を手に入る事ができたから大分楽にダンジョン攻略に進めるわけだ。

 そして姉妹のよく来る狩場で、しばらく僕たちはモンスターのドロップ品を狙って戦闘を繰り返し行った。

 

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