第36話 5人の旅路

 商業の国へ向かう旅は、ゆっくりと、だけど順調に進んでいた。

 商業の国へ向かう途中にある貴族の治める街などが近づいた時には、護衛係のフレデリカさんと情報収集を担当するトリュスの2人組だけで街へと赴いてもらって必要な物品の買い物をしたり、情報を集めたりしてもらっている。

 彼女たちの手に入れた情報によると、僕とフィーネの2人は人相書き付きで指名手配されて王国の各地で情報が集められているらしい。僕に関して言えば、生きて捕まえたなら報奨金が出るらしくて、王国にある街へはもう行かない方が良いと判断された。
 残りのフレデリカさんと、シモーネさん、そしてトリュスに関しては特に何も言われていないので一安心。だけど、油断はできないので情報収集も慎重に行ってもらっている。

 王国側は指名手配などの他に、各地へ王国兵を派遣してしらみつぶしに僕らを探すこともやっているらしい。本当に後ろから王国兵がやって来ているということだった。それほどまでに、あの女王は執着心を持って僕を害そうとしているらしい。そう考えると辟易して、早く他国へと向かって逃げ切りたいと思う。

 顔の特徴をはっきりと書かれた人相書きが出回っている僕とフィーネは、街に行けないので、もちろん宿にも泊まれないから基本的には野宿である。
 大人数で使えるテントをトリュスが用意してくれていたので、クロッコ姉妹とダンジョンで過ごした時に使った1人用テントに比べ、て非常にゆったりと場所を取って夜眠ることが出来た。
 モンスターが近づいてきた時に追い払えるように交代で見張りをしながら、交互に休む。最初の頃は、僕を先に休ませると途中で起こさず朝まで寝かせられているという事が何度かあって、男性という性別のせいで優遇されてしまう僕は、なるべく先に見張りを受け持つようにして、見張りを終えてからぐっすり眠るようにした。
 他の4人は特に言い合いもなく仲良く決めて、1番先にシモーネさんが担当、2番のちょっと中途半端な時間にフレデリカさんが担当、3番めの夜が遅い時間にトリュスさんが担当、4番目の朝早くにフィーネが担当するのが基本の順番となっていて、時々交代したり、2人組で見張りをしたりと、臨機応変に上手く担当替えをしていた。

 旅の途中で困るのが、身体から発せられるニオイや汚れを落とすための湯浴みをどうするかである。
 ダンジョン内部では、お湯で身体を洗うことが出来ないのは当たり前で、服を脱いで着替えることすらも、モンスターの奇襲や罠などの事を考えると危険なので、防具の上からニオイ消しの薬を使って身体の不快なニオイは消して、気持ちの悪い汗は我慢するのが基本であった。
 旅ならば、途中に見つけた川で水浴びすればいいが、僕が裸になって水浴びしようとすると女性4人が異常に恥ずかしがったり挙動不審になる。どうやらこの世界では男性が湯浴みをするときに裸になるのは上品ではないし、裸なのが上半身だけだとしても、おしとやかでないという評価をされる。もちろん無闇矢鱈と誰にでも見せつけはしないが、前世の記憶を持つ僕としては別に良いのにという考えをしてしまう。

 そして逆に女性の方は恥ずかしげもなく身体を晒し出すので、今度は僕のほうが恥ずかしい思いをするという感じになる。時々、フレデリカさんは水浴びを終えて野営をしている場所へ戻ってくるときに下は履いているが、上半身が裸で胸が丸出しという状況のままにして戻ってくる時もあって、どういう顔で迎ええれば良いのかわからない。
 他の3人の女性も、元々身に着けているモノは際どい服装なのに、更に何も身に纏っていないような肌が全て見えてしまうような格好で水浴びから戻ってくるので、いろいろな部分に僕の視線が引き寄せられて見てしまい反応しそうになって、意識してしまう。彼女たちには、僕からそれとなく言ってみるのだが、言い方が悪いのか上手く伝わらず、彼女たちの露出の癖は治らないようで、困っていた。

 食事について基本的には朝と昼の二食は僕が作る。他の4人の女性たちに任せると、豪快で雑な味付けで完成させてしまうために僕が担当する事になった。トリュスが用意した食料は大量だけれど、先の長くなりそうな旅のことを考えて、なるべく無駄遣いをしないように食材は大事に使って料理をする。

 女性たちの僕の料理に対する評価は高くて、フレデリカさん、シモーネさん、フィーネの3人は毎回大きな声を出して何度も“美味しい”と言って食べてくれるので作り甲斐がある。
あの無口なトリュスも時々、食べ終わった時に“美味しかった”と僕に小さな声で感想を言ってくれるので、その時は本当に作ってよかったと思える。
ただ、僕が肉料理を苦手としているので4人に振る舞える肉料理のレパートリーが少なくて、申し訳なく思うことが何度かあった。今は、将来に向けて料理の勉強を密かに進めていたりする。

 5人の旅路は、このようにして割りと穏やかに進められていった。王国から出発して1ヶ月が経ち、とうとう商業の国の国境近くまでやって来た。ここに来るまで王国からの追手に一度も出会うことなく、出発した当初に感じていたあせりなどは、今では一切感じる事なく商業の国へ辿り着くことが出来た。

 

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