第06話 城門

 目的地の近くにまで飛んできた俺達は、カイニーアの街が見える場所である近くにある山の中腹辺りに一度着陸していた。そして、着陸してすぐに俺はドラゴンの姿から人間に変化していた。そして、慣れない空の旅で疲れている様子のアルビナの横に並んで立っていた。

「到着しましたか?」
「あぁ、あそこに街がある。少し歩く必要があるがな」

 時刻は昼頃を過ぎたぐらいだろうか、快晴で視界も広くて辺りがよく見渡せる場所だった。なので、俺の指差す先にある街はアルビナにも見えていただろう。

 しかしアルビナは、王族として城の中で生活していたために、城の外にある街の外観や、城壁の外側にある山々についてはあまり知らなかった。そして、土地勘があまり無いために本当にカイニーアの街なのか、うまく判断できなかったようだ。

「あ! お城があります」
 しかし、都市の中にある白塗りされた大きな城を見て、ようやく自分の知っているカイニーアの街である事を認識したらしい。

 これからあの街に人間の姿へと変化したままで、侵入することにしていた。俺達が降り立った地から、山を下って行って城門を通ってからカイニーアの街に入るという計画。それを、実行しようとしていた。

「あの……、私はこのままの姿で行けば、不審がられるのではありませんか?」
 両手を広げて、着ている服を俺に見せてアピールしながらアルビナが言った。

「確かに。商人として身分を偽って行くのには、その格好では無理があるかもしれない」
 アルビナの姿は、貢物として運ばれてきた時の純白のドレスで着飾ったままだった。しかも、この国の王女という事だから街の人達には顔を知られている可能性も高く、街を歩けばすぐに問題になるかもしれない。

 だから、徹底的に商人として格好を変装してから街の中に入ろうと、アルビナに魔法を掛けて見た目を変化させるという方法を使った。

 まぁ、彼女の王女としての立場や俺のドラゴンとしての権威を示せば、街の中入り込むのは変装なんてしなくても簡単に入っていけるかもしれないけれど、俺の存在が王様や街の人達に極力知られないように、なるべく正当な手順を踏んで他の人間たちに紛れて都市の中に入っていきたいと考えていた。

「これでどうだ?」
「こんな服装、初めて着ました」

 アルビナの格好は、先ほどのドレスから比べて、だいぶ粗末なモノに見た目だけが変化していた。頭を覆うような緑色がくすんだローブを上に着ていて、顔は覗き込んでもハッキリとは見えない、というように錯覚するような魔法の効果も加えていた。

 あくまで、見た目を変化させているだけなので、街に入っていけば彼女の服装も用意してあげないといけない。そんな事を考えながら、城門近くにまで男女二人で歩いて行く。


***


 それからしばらく歩いて、降り立った地点から城門の近くにまで到着していた。

「下から見ると、この城壁は意外と大きいな」
「この城壁は、カイニーアの街のシンボルですから」

 視界に広がる、ぐるりと都市を囲む城壁を見上げながら驚いている俺の横で、少しだけ自慢げな顔で城壁の情報を補足してくるアルビア。

 前回に見た時は、上空で飛び回っていて城門には注目して見ていなかったので、あまり印象には残っていなかった。しかし、人間の姿に変化して見てみれば思いの外大きくて、外装も見応えがあって結構面白い作りをしている城壁であることがわかった。

 外からやって来るらしい商人や、街に住む人達が出入りしているらしい城門を見つけて、そこへ歩き近づいていく。どうやら、城門を通るのに検問を行っているらしいので、俺達も大人しく検問を行っている列に並んで待っていた。

 結構な時間を待ってようやく自分たちの番になると、城門兵と思われる鎧を着込んだ中年男性が近づいてきて、検問が始まった。

「ようこそ、カイニーアの街へ。見たことの無い顔だが、初めてか?」
「あぁ。この街には、初めてやって来た」

 にこやかに対応してくれている城門兵は、俺の発した”初めて来た”という返答を聞いて、さり気なく目線を動かして俺の身形を見て調べているようだった。そして、城門兵から続けて色々と質問されることになった。

「名前は?」
「私はアイルトン、後ろにいるのは手伝いのベルカ」
 自分の名前はそのまま言って、アルビナという名前は注意を引く可能性が高いと感じて、あらかじめ考えていた偽名を使って質問を逃れる。

「このカイニーアには、一体何の用事で?」
「商売をしに来たんだ。色々と取り扱っている」
 そう言って、空間魔法に保存していた獣の肉を一つ取り出して、疑うような目線を向けてきていた兵に見せる。すると、少しだけ警戒心を解いた兵士。

「なるほど、空間のスキル持ちだったか。この肉の質も良さそうだな」
「分かるか?」
「俺の友人の一人が、街の中で商店を営んでいてな。商品の目利きのコツを少しだけ教えてもらったんだ。良かったら、友人の店に行ってやってくれ」

 そう言って検問を無事に終えると、何事もなく城門を通してくれた兵士。検問を行った彼には、街の中で商店を営んでいるらしい友人について教えてもらい、店のある場所も教えて貰っていた。

 無事に城門を抜けると、城壁の向こう側に有った街の様子がようやく見えるようになっていた。

 石畳の道の両側に建っている、木製の建築物と石造の建築物。建物の背は低く、遠くには白色の城も見えていた。古い街であるらしいが、見た目には建物が整然と並んでいて清潔感も有って綺麗な街だと感じていた。

「さて、とりあえずは換金に行ってみよう」
「分かりました」

 後ろにアルビナを引き連れて、街の中に有る商店を探して取り引きをするように目指していた。

 

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