第03話 ドレスを着た少女

 気合を込めて巣作りという作業を進めている途中、突然やって来たのは見知らぬ人間達だった。作り始めたばかりの俺の巣にやって来たという事は、わざわざ山の中を探索してやって来たのだろうと考えつつ、せっかく来たのだからと対応してみることにした。

 そして、そんな突然にやって来た人間たちは少しの会話だけ交わすと、見知らぬ少女を貢物として俺の目の前に置いていくと、来た時と同じように突然すぎると感じる速さで、俺の呼びかけにも応じずに帰っていった。

 眠っている状態のまま担架に載せられて、貢物として豪華に見せるためなのか美しい純白のドレスを着ている少女。そんな少女を目の前にして、俺は呆然としていた。

 いきなりやって来たと思っていたら、あんなに一方的な感じで話を進められて、俺の呼び止めにも反応せずに去っていくとは……。久々な人間との会話に高揚していた俺だったが、一気に微妙な気分へと変わっていた。

 しかも、訳が分からぬまま人間たちに圧倒されてしまう自分が居た。彼らとの会話で分かったことは、近くにあった集落の名がアルセンディア王国の都市だと言う事。

 先ほどまでの出来事を回想してみたけれど、分からないことが多すぎる。ということでまずは、目の前の少女をどうするべきか、という課題を優先しなければと思い至る。

 とりあえず彼女を眠りから目覚めさして、疑問のまま分からずじまいとなっている事情を詳しく聞き出してみよう。そして彼女から得た情報で、今後の自分たちの身の振り方を、どうするのか考えればいい。
 結論を付けて俺はドレスを着た少女に声を掛けて、呼び起こすことにした。

「少女よ、起きよ」

 少女を貢物として運んできた人間たちから、彼女の名前すら教えてもらっていなかったと思い出しながら、覚醒するようにと少しの魔力を声に込めて、眠っている少女に呼びかける。

 俺の発する声が少女の耳にしっかりと届いたようで、モゾモゾと身体を動かして反応を見せていた。そして、着飾っていたドレスが少し動いたことで崩れていて、もうすぐ起きるのだろう、と俺は少女の顔を覗き込んで起きるのを待っていた。

 しばらく待つと、眠ったままドレスの少女が薄く目を開き、その奥にあった青色の瞳が姿を現した。次の瞬間。

「ぇ? キャァァァアアアッ!」

 薄ぼんやりとしていた少女が、俺を見た瞬間に目を見開いて、さらに口を大きく開くと、甲高い女性の声で、思い切り叫ぶ声を上げられていた。そんな彼女の絶叫が、作り始めたばかりの巣の入口に響き渡る。

「っ!?」
 少女の発する、あまりの大声に俺の耳元はキーンとなって顔をしかめてしまった。そして、パタリと再び横になってしまった少女。

「あ、おい。まてまて、気絶するな」
「きゅー」

 喉から空気が漏れるような音を発しながら、仰向けに倒れてしまった少女。どうやら、俺がドラゴンの姿で顔を覗き込んでいたから、少女を驚かせてしまったようだ。

 先ほどのエスパダ達のような人間の、俺に対する反応を見ていたら、自分に恐怖心を持っていないと感じていたけれど、この少女は違ったようだ。

 ……いや、起きた瞬間に目の前に巨大な生物が顔を覗き込んでいたら、誰だって驚くだろうか?

 ということで、今度は気を失わないように配慮して、人間の姿に変化してから少女を起こすことにした。

 人間の大きさに変化して少女を見てみたけれど、身体が10代にも満たないような子供のように小さい。初見で感じていた年齢よりも、彼女はまだまだ幼いのかもしれない。

「少女よ、起きよ」
「んっ、うー」
 仰向けで気絶している彼女の肩に手を置いて、軽く揺すりながら声を掛けて優しく起こす。身体をよじって、むずがる少女。

 しばらくして、目を見開き覚醒したようだった。今度は驚いて気絶する様子は無かったので、安心しつつ様子を見守る。

 ぼんやりとした表情で、少女が俺の顔を見ていると思っていたら、突然何かに気がついたかのように少女は、その場で立ち上がった。

「はっ! ど、ドラゴン様は……」

 少女は気を確かにすると、すぐさま辺りをキョロキョロと頭を忙しなく動かして、ドラゴンを探している様子を見せた。なのて、すぐに人間姿の俺がドラゴンだという事を明かすことにした。

「君の探しているドラゴンは、私だと思うが。名は、アイルトン。よろしく」

 言葉だけでは少女が信じないかもしれないだろうからと考慮して、正体を明かしながら右手だけドラゴンの姿に戻して見せた。すると、気絶こそしなかったもののガタガタと身体を大きく震わせて、地面に座り込んでしまう少女。
 そんな彼女の様子を見て、右手をすぐに人間のものに変化させる。

「すまない、怖がらせてしまったか」

 起きた瞬間ではなく、前もって宣言しながら姿を見せれば、少女も怖がることも無いだろうと予想しての行動だったけれど、どうやら三日前に見た都市の人達や、先ほどのエスパダ達とは違って少女はドラゴンに対して恐怖心を抱いているようだった。

「も、申し訳、ございません、でした、アイルトン、様。わ、わたしは、……」
 声を聞いているだけで可哀想だと感じてしまうほどに、声を震わせている。しかも、座り込んだ場所で居住まいを正してから、自己紹介を始めた少女。

 俺の方から落ち着けと言ってみせても、尚更に恐縮するような未来しか予想できなかったので、今は何も言わずに彼女の話を聞くのに徹していた。

「わ、私の名は、あ、アルビナ、と申します。アルセンディア王国との交流の為、えっと、あなた様に捧げられました。どうぞ、あなた様のお好きなように」

 たどたどしくも、しっかりと最後まで言い切るアルビナと名乗る少女。見た目の幼さとは違って、怯えながらも言葉はしっかりとしていた。しかし、彼女の言葉からは今知りたい情報は得られていなかった。
 なので、彼女から詳しい事情を探ろうと、俺は質問を始めた。

 

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