第03話 戦闘訓練

「皆様、お疲れ様でした。これから皆様を、生活するために用意した部屋に案内します。今日からそこで寝泊まりをして下さい」

 王様との謁見が終わると、勇者達がこれから生活するためにと用意した部屋へと案内することになった。

 まさか数十人もの人数が召喚されるとは想定していなかったために、急遽用意した部屋である。だが、城の中は意外と開いている部屋があったので急いで女中に準備させることで、なんとか対応することは出来ていた。


***

「おはようございます、皆さん。早速ですが、魔王討伐のための戦闘訓練に入ります」

「「「はい」」」
「「「……」」」

 翌日から早速、勇者たちを城の訓練場へと集めてから魔王を討ち果たすための訓練に入る。彼らの能力がどれくらいなのか調べるため、一人ひとりに剣を振らせてみたり、魔法の使い方を教えてからすぐに実践してもらおうと考えていた。

 素直に言うことを聞いてくれる勇者たちと、僕を疑っている様子で無言の返事で警戒心を強めているという姿勢を見せる勇者たち、その2つのグループに分かれている。だが、僕は特に何も指摘すること無く訓練を始める。

 言い伝えによれば、勇者という称号を持つ人間は唯一魔王を倒しうる可能性を持っているという他にも、神から授けられた特別な能力によって普通の人間とは比べ物にならないぐらいの強大な力を持っていると言われていた。

 1つ懸念だったのは、本来ならば1人の勇者だけ召喚することを目的とした召喚魔法陣だったはずなのに、現れたのは数十人の勇者の称号を持った者たち。もしかしたら、勇者としての力が人数の分だけ分散したのではないかとも危惧していた。

「まずは、あそこにある剣の中から好きなのを選び、手にとって適当に振って見せてください」

 今までに本物の刃がついたロングソードなんて手に持ったことがない者達なのだろう、恐る恐ると言った感じで並べられていたロングソードを手に握り持ち始める。

 しかし、ロングソードを振り始めると様子は一転して、初めてとは思えないような慣れた手付きで剣を振り、危なげもなく問題があるようには見えなかった。

 危惧していた勇者の弱体化は、調べてみればそんなことは無く皆が優秀な力の持ち主であるようだった。

 更に詳しく調べてみると32人居る勇者である彼らは、それぞれ得意なことが別々ではあった。

 剣を振ることを得意とする戦士タイプの者たちに、魔法を得意とする魔法使いタイプの者たち。それから支援を得意とする僧侶タイプの者たちなどに分かれていた。

 人数が多い分パーティーを組んで戦わせたりすることが出来る、当初想定していた勇者1人だけの時には考えられない戦術を取れる事が判明した。人数が多いことで新たな戦闘プランを検討できるようになったのだ。

 こうして僕は初日から彼ら勇者に対して剣を振れ、魔法を覚えろと多岐にわたる訓練を課した。しかし、その翌日。

「ジオン様、勇者たちが訓練場に来てません。今から引っ張り出してきますか?」

 兵士の1人が心配して、こんな事を尋ねてきた。どうやら、前日の訓練で音を上げたのかサボる者たちが続出して何十人も訓練場に来ていない。しかし、サボらなかった何人かの勇者達は訓練を続けて受けようとしているのが居たので、特に問題は無かった。

「いや、訓練に出る気のない者達は放っておいて良い」

 魔王を倒せる可能性を持っている勇者が1人居れば、それで問題はない。今の所必要だったのは、勇者という称号を持つ人間であり、魔王を倒せる可能性がある者だけ。別に魔王戦での戦力としては、それほど期待していないので他の人間は怠けて休んでいても一向に構わない。

 それから、訓練から脱落しなかった勇者達だけを鍛える。目標は、魔王戦に挑むための決戦地へと辿り着けるだけの体力と、少しの戦闘力を身につけて生き延びれるようにすればいい。

 更に戦闘訓練を重ねていく。勇者の称号を持った者達は成長するスピードも恐ろしく早くて、何年も鍛えて兵士となった精鋭の者たちでさえ、勇者たちが数日後には鍛えてアップした能力であっさりと追い抜かれていた。

 けれど、次のステップの訓練で行った魔物との実戦で躓く者たちが多かった。人形ではないけれと、獣の姿をしている魔物であり、剣で斬りつける事や魔法を当てるのに躊躇してしまう勇者達。

 ただ躊躇していたら魔物たちは構わず攻撃を仕掛けてくるので、コチラが殺らないと殺されてしまう。

 そして生き物を殺すという決意をした男子達は全員が魔物を倒す事に成功していたが、女子の何人かは魔物であっても可愛そうだと攻撃が結局出来ずに居る者たちを残して、戦闘訓練は終わった。

 魔物を倒せと必ずしも強制することでもないので、攻撃に躊躇してしまった彼女たちは後方支援に回すなどして彼らの戦闘の適正を見て配置を考えていく。

 こうして訓練を重ねていって魔王討伐のための準備を進めていた。このまま順調に進めていけば、魔王が倒せる準備が完了するのも間もなくという感じだろうか。