第26話 船長たちの事情

 ブリッジから出された後は、医務室で気絶していたライラさんを横目に見ながら、ヨハンナさんによる腕の治療を受けつつ、状況が変わるのをしばらく待っていた。

 それから二時間ぐらいが経った頃。船長たちの話は終わったのか、再びブリッジへと集まるように艦内放送での呼び掛けがあったので、今も眠り続けているライラさんはベッドに寝かせたままにして、ヨハンナさんと二人でブリッジへと向かった。

 ブリッジには船長のミラさんと副船長のステインさんはもちろん既に待機していて、俺達二人が到着した後すぐにドミナさんもやって来て、俺の他に四人の船員がブリッジに集合することになった。そしてその場で、今後のジュペンス号の航路について説明がなされた。

 説明を要約すると、これから船長達の母星であるエムナという星に向かうらしい。

 ジュペンス号は先の逃走でエンジンに大きなダメージを負ってしまったために、これ以上の探査航海は困難だろうと判断されて、修理のために船長の故郷の星のエムナに行く事を決めたという。

 惑星エムナに向かうという予定については皆が納得したのか、誰からも反対意見は無かった。俺も、彼女たちの母星には興味があったので特に反対はしなかった。ただ、少し気になる事が有ったので、その事について聞いてみることにした。

「俺たちを襲ってきた船団から助けてくれた、あの真っ白な宇宙船は何なんですか?」

「……えっと、あの船は、これから向かうエムナの星の守護を担っている特別な船なんです」

 俺の質問に、言葉を選んで答えてくれるミラさん。俺達を助けてくれた白い船について、あの船はエムナ星船と呼ばれている見た目通りの特別な船らしくて、普段は同じ名前である惑星エムナに危機が迫っていないか常に周りを巡回していて、星の王や住人を守護している存在らしい。

 ただ、ミラさんの答えを聞いても疑問は解けることはなく、むしろ謎が深まってしまった。俺は更に突っ込んで聞いてみた。

「そんな重要な任務を担っている船が何故、星から離れた場所に居て僕達を助けてくれたんですか?」

「実は、ユウさんには説明していなかったのですが、私はこれから向かうエムナで星王をしている者の娘なのです。つまり、エムナの星王女というわけです。と言っても、継承順位の低い私は、次の星王になる可能性も低いですし関係ないと思って説明していませんでした」

 ごめんなさい、と言って説明不足だったことをミラさんから謝られる。つまり、星王女という高い立場のミラさんに危機が迫っている事を予測して、白い船はミラさんの危機に駆けつけてくれて俺たちは助かったと言うことらしい。

「頭を上げてください、ミラさん。むしろ立場を知らなかったから、ミラさん達と恐縮せずに付き合えたんだと思います。と言うか、僕のほうが無礼な振る舞いをして謝らないといけないんじゃないですか?」

「いえ、先ほど説明した通り私は継承順位が低いので、身を固くされるような立場でもありません。今まで通りに接してもらえると嬉しいです」

 ステインさんやドミナさんのミラさんへの立ち居振る舞いを見ていて、船長という立場以上にミラさんは結構偉い人かも知れないと予想していたけれど、その想像を遥かに超えて上の立場の人だったらしい。

 けれど、そんな事を気にしないで良いとミラさんは気さくに対応してくれて、俺はひと安心していた。



***



 こうしてミラさんの本当の姿を知った俺は、惑星エムナに向かう道中でステインさんとライラさん、ヨハンナさんにドミナさん四人、ジュペンス号に乗る他の船員たち皆の惑星エムナでの立場についても教えてもらっていた。

 副船長のステインさんは王の血を引く家系の貴族らしくて、小さな頃からミラさんと交流があり、二人はいわゆる幼なじみのような関係だったらしい。そして、このジュペンス号ではミラさんに次いで立場の高い人でもあるそうだ。

 メカニックをしながら俺に色々な現代技術について教えてくれているライラさんは、政府が経営する研究所で働いていた職員だったらしい。細胞に関する基礎研究に携わっていたけれど、ライラさんは別の研究をしたかったらしくてモチベーションが保てず、研究員を辞めたところでミラさんに拾われて、今はジュペンス号のメカニックをしながら好きな研究に没頭しているとのこと。

 船医のヨハンナさんは、ミラさんの専属医師として長年勤めていた関係で今回の宙域探索に同行してくれることになったそうだ。

 そして最後に護衛のドミナさん。彼女も長年ミラさんの護衛を務めている関係で、引き続き宇宙に出るミラさんを近くで守るために、今回の宙域探索に同行することになったそうだ。

 皆の本当の立場を知ることが出来て、より皆との距離が縮まっただろうと感じつつ惑星エムナへと向かっていった。

 

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