第17話 市場

 荷物の受け取りが終わり、ライラさんの目的であった品も無事に一緒に受け取り終えた。と言う事で、第二の目的となっていた俺の惑星エテリの見学をさせてもらうために、店舗販売を行っているという区域へとやって来た。

 宇宙船から降りて倉庫までの間に、道の案内と取引をしてくれた店員と思われる女性と出会っただけで、それまでに他に人が居るのを見ることはなかった。多分、あちら側で商売中に他の客とは一切接触しないように配慮してくれているからだろうと思う。

 そして、他の店員に出会わなかった理由は分からなかったけれど、何か思惑が有ってのことだろう。とにかく、惑星エテリに降りてから今まで最初の女性を除くと、他に人と出会うことは無かった

 だけど、店舗販売を行っているという区域に来てみると、買い物を楽しんでいる多くの人を見ることが出来た。

 商品受け取りを行った倉庫から、ミラさんが道を知っているという事で先を歩いて進む。すると、四車線ぐらいの幅の広さがある道に出てきた。

 そして、その道の左右に店が並んで開かれており、各々の店先で商品が飾られていて商売が行われているのが見える。店先には看板や商品等が出されておらず、観葉植物のような物が道に配置されているので雑多な感じが一切無い綺麗な通りだった。そして、店の中に置かれた商品の様子を、道を歩きながら見ている人達。いわゆる、ウィンドウショッピングという事だろう。

 行き来する人を観察してみると、やはり皆が女性であるようだった。どの人に目を向けても、胸に膨らみがあるので女性だと分かり、その胸の膨らみが小さな人でも顔を見てみると、明らかに女性の顔をしている。時々、俺と同じように頭に何かを被ったりして顔が見えない人も居たので、その中にもしかしたら俺と同様に女性として変装しているかもしれないけれど、そんな人達はごくごく少数だった。

 通りを見回しても、男性だろうという人を探してみても一切見つからず、やはり聞いていた通り男性の総数が少ないという事は、本当なのだろうと改めて実感した。



***



「本当は、上の自然区域の方に見学が行ければ良かったんですが、補給がメインの目的なので今度の機会にですね」

 大きな道に出てしばらく観察を続けていた俺に向けて、申し訳無さそうにミラさんが謝るように言ってくれた。

「いえ、星に降りて通りを見れただけでも来た甲斐が有りましたよ。連れて来てくれてありがとうございます」

 地球とは別の星に来たという実感、そして店が立ち並んでいる道には、女性しか居ないという事を自分の目で見れたこと。

 既に色々と知ることが出来て、本心から嬉しかったので嘘偽り無くお礼を言う。

「それじゃあ、これから行く所を決めたいのですが見てみたい品とか有りますか?」

「そうですね……」

 これからの目的地を決めようと言うミラさんの問いに対して、俺は答えに窮する。

 手持ちのお金もないし、今すぐ見たいという物も挙げろと言われても思いつかない。それに、既に色々とお世話になっているのに、さらにお願いして買ってもらうというのは申し訳ない。

 いつかは、彼女たちに助けてもらった時に掛かった費用や恩などは全て返済するつもりでいる。だから正直に言うと、これ以上は借金になるような買い物は控えておきたいとも考えていた。

 かと言って、来たばかりなのにもう宇宙船に帰ろうと言ってしまうと、わざわざ連れて来てもらったミラさん達に、更に申し訳ない気持ちがあった。

「じゃあ、気になる店が有るんだけど今からソコへ行っても良い? 機械の部品を扱っている店だから、勉強中のユウにも興味ある店だと思うんだけど」

 ライラさんが、会話に遮って提案してくれる。俺が答えを出せずに居るのを見かねて、代わりに答えてくれたみたいだ。

「ライラさん、少し興味があります。その店に行ってみたいです」

「そう、じゃあ決まりね。ライラ、案内してくれる?」

 今のところ、興味があるものが思いつかなかったのでライラさんの提案に賛成する。それに、ライラさんの興味がある店というのも見てみたいと思ったからだ。

「了解しました、じゃあ後に着いて来て」

 すぐに目的地が決まり、今度はライラさんが先頭を歩いてみんなが着いて歩く。



***



「オイッ! 手ぇ、離せよ!」

 店頭に飾られている色々な物を見ながら歩いていると、女性の鋭い声がすぐ近くで響き渡る。その声の大きさに、俺は思わずビクッと身体を震わせてしまい、声がした方に向くと、至近距離にいつの間にかドミナさんが居た。そのドミナさんが、見知らぬ女性の左手首を掴んでいた。

 女性は喚いて腕を外そうと暴れるが、ドミナさんが掴んでいる手はビクともせず。

「それ以上関わると、対処する。すぐに失せろ」

 ドミナさんの冷たい声色を聞いて、その見知らぬ女性の顔は真っ青になってしまう。そして、掴まれていた手首をパッと離されると、一目散に逃げ出していって、すぐに見えなくなってしまった。

「泥棒だった、気をつけて」

 ドミナさんが、先ほどの状況を説明してくれた。どうやら、俺の身体にぶつかって持ち物を盗もうとしている人が居たらしい。

 俺は歩きながら通りにある店を見るのに集中していて、しかも金目の物なんて持っていなかったし、警戒心が非常に薄くなっていた。

「少し、まわりに気を取られ過ぎだったようだね」

 困った奴だという風な目で俺を見てくるライラさん。

「この辺りで盗みなんて聞いたことは無かったけれど、まだ居るんですね。災難でした」

 ミラさんは、運が悪かったとフォローしてくれる。

 そして、助けてくれたドミナさんに目を向けると、黙って俺の方に目を向けていた。

 身体に接触されていたら、万が一にも男性だとバレていたかもしれない。そして、騒動を起こしていたかもしれないと考えると、ドミナさんには本当に助けられた。

「危ない所を助けて頂き、ありがとうございます」

 今日は皆にお世話になりっぱなしだと思いながら、全力でお礼を言う。ドミナさんは、小さく頷いて、特に何も言わなかった。ただ、その後から俺に船長のミラさんの近くにいるように言って、その通りにすると俺とミラさんの二人をまとめて全力で守ってくれるようになった。

 

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