第01話 接触

「多分、この辺りだと思うのですが……」
 右手に持つ端末機に表示させたマップを確認・操作しながら、あたりを見回す身長140cm程の小柄な女性がつぶやいた。
 小さな女性の近くには、もう一人女性が立っている。身長190cm程もある、先ほどの小さな女性とは対照的な身長。その背の大きな女性が、先端に刃のついた槍のような細長い武器を手に持って、すぐ側で周辺を警戒しながらぐるりと見回していた。
 そして二人とも金魚鉢のような丸いガラスを頭に被り、首から下の肌を晒さないように全身を覆うピッチリとしたタイツのような衣服を身に着けている。そのため、身体のラインがしっかりと出てしまうような色っぽい恰好なのだけれど、どちらも気にした様子は無かった。

「近くに生物反応はありませんが、建物が古すぎて危ないかもしれません」
 長身の女性は右手に持ったライトで視線の先を照らしながら、左手の槍を何時でも振れるようにして、辺りの様子を逐次観察して自分たちに危険が迫っていないか用心していた。
 今のところ生物が居る気配は一切感じないようで、今すぐ危険にさらされるような事はないだろうと予測していたけれど、自分たちが今居る建物に関しては心配があるようだった。

 ライトで照らされた辺りは、人工的に造られた材質不明の壁が作られていた。そして、その壁には植物が成長して絡み付き、壁の大部分を覆い尽くしていた。その様子から、この建物は何十年も人が来なくて、放置されていたのだろうと予想できる。
 そうすると、経年により老朽化した壁が崩れたり、床が抜け落ちたりする危険性があるだろうと長身の女性は考えて、短身の女性に向かって忠告をしたのだった。

「この建物の危険については、ココに来る前に宇宙船でスキャンを済ませているので問題は無いと思いますが、一応注意して進みましょう」
 小さな女性が手に持った端末機に示されるデータには、自分たちが居る建物が今すぐ崩れ落ちる可能性は0.002%と表示されていて今すぐに危惧するような危険性はないけれど、長身の女性の意見を素直に聞き入れて、自分たちの目的をすぐに済ませようと注意しながら進むことにした。


***


 一時間程、黙々と建物の探索を進めていた所。ようやく、目的の物が見つかって短身の女性が声を上げた。

「ありました! どうやら、この装置のようです」

 女性2人がいる場所は、建物にある一室。広さは、30m×20mの中くらいの広さの部屋だった。その部屋の中には、大きさ2mもある卵のような形をした機械と思われるものが幾つも並べて置かれていた。
 その中の1基だけ何故か稼働しているのか、真っ暗な部屋の中にあって淡く光っていた。

「どうやら、この装置から出ている電波を私達の宇宙船が拾ったようです。無人惑星だと思っていた所から電波を拾ったので、政府に報告なく設置された基地を見つけてしまったとか、宇宙海賊の隠れ家にされている場所を見つけたとか予想してましたけれど、真実は案外あっけないですね」

 小さな女性は、見つけた機械を眺めながら、そう結論付ける。女性達が見つけたモノは、いつ建造されたのか分からない建物の中でかろうじて稼働していた機械だった。この機械が発している電波を、偶然宇宙船のレーダーでキャッチしてしまったために調べてみたが、ほとんど無駄足だったようだ。

 発見したものに関して考古学的な資料としての価値が有るかもしれないけれど、自分たちが今すぐに宇宙船を惑星に降ろして調査に時間を割くほどの価値を感じられず、記録だけして後で政府に報告することにした。

「機械を停止して、戻りましょう」
 苦労して発見した機械を、もう二度と電波を勝手に飛ばさないように停止させてしまおうと考え行動する。
 短身の女性は手に持つ端末機からコードを一本伸ばして、目の前の機械の表面にピタッと装着する。このコードを機械に取り付けてから、半ば無理矢理に正体不明の機械とコンタクトして停止させる方法を探るためである。

 端末機を作動させようとした瞬間だった。カチッ、とプラスチック製のボタンが押された音が真っ暗な部屋に響きわたった。そして次に卵型の機械が勝手に動き出してしまったようで、部屋のなかが機械の光によってぼんやりと明るくなり、機械の中から何かが擦るような大きな音を出し始めた。

「な、何をしたんですか?」
「え? キャッ!」
 驚きつつも動き出した機械に危険性を感じた長身の女性が、短身の女性に問いながらも脇に抱えて卵型の機械から急いで飛び離れる。
 短身の女性は、卵型の思わぬ動作に焦り唖然としていると、突然に脇に抱えられてしまい思わず目を閉じてしまった。

 プシューと音がして、薄く光る部屋の中に卵型の機械から煙が漏れ出たと思ったら、上下半分に分かれてガシャンと機械的な音を立てて開いた。二人の女性の目線が、卵型が上下に割れて開かれた機械に向けられる。

「「え?」」

 真っ二つに別れた卵型の機械の中身を見て、二人の女性から呆気にとられたような声が漏れた。

 機械の中には、一人の人間が入っていた。

 

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