07 異世界探査任務報告

 半年間、魔王討伐を果たすためにと異世界で旅をしながら魔物と戦う日々を過ごした俺だったが、無事に現代へと戻ってきてからは以前と変わらず、再び元の学生生活を過ごしていた。
 異世界と現代とでは時間の進み方が違うのか、俺が召喚されてから元の世界に帰ってくる間の期間は向こうでは半年ぐらい経っていた筈だが、コチラでは3日しか経過していなかった。というわけで、家族以外の誰にも異世界召喚で姿を消していた事なんて知られることは無く、もちろん学生生活にも支障が出ることもなく本当に普通な日常生活へと戻れていた。

 ただ向こうの世界で授かった能力は幸いにも失われることはなく、変わらずコチラの世界でも発揮できていた。この能力を全力で発揮して見せれば野球選手にでもサッカー選手にでも歴史に名を残すほどの選手になれるだろうし、オリンピックへ出場するのも優勝で金メダルを獲得する事も軽々に果たせるほどだろう。それほどまでに人類を大きく引き離した人間離れの能力を身に着けていた。
 けれど俺はそうせずに、以前と変わらず父さんの助手として働いていた。そして今後も変わらず続けることだろう。なんせ、父さんからは世間に注目されるという苦しみを嫌というほど教え込まれたから。

「父さん、向こうで起こった出来事をまとめたデータが出来たよ。いつもの作業フォルダに入れといたから確認しておいて」
 手元のパソコンを操作しながら父さんに報告する。向こうの世界に持ち込んだ機材で記録したデータを纏めた報告書が出来上がっていた。写真に映像、そして記録しておいた文書をまとめた物。なかなか自分でも納得の行く出来栄えのモノだった。

「おう、分かった。おつかれさん」
 今ではすっかり鳴りを潜めてあっさりとした反応で返事をする父さんだったが、初めて異世界の情報というお宝を目にした父さんは、目を輝かせて小躍りするという今までに見たこともないような喜び方をしていた。それほどに、未知のデータというものに興奮を感じていたのだろう。

「そういえば、異世界には魔法が有ったんだって?」
「うん、こんなの」

 そう言って父さんの疑問に答えるために、俺は手元にボウッと空気が燃焼される音が鳴る火系魔法を発現させた。向こうの世界で学んだ魔法使いとしての能力も、現代に戻ってから問題なく使うことができていた。

「ほうほうほう、なるほど火種もなく意志だけで発火させて、しかも炎を安定させて空中に燃やし続けるなんて。本当に魔法が存在しているなんてな。これは新たな研究材料になる」

 様々なことを知っている父さんだったが、流石に魔法という空想の知識については無かったようで驚いている。父さんの知らないことを知っている自分という存在に、俺は少し得意気になる。ただ、魔法についての理論を知った父さんはあっという間に習得してしまうのだったが。

 向こうの世界での出来事、召喚された目的、勇者という能力、そして魔王という存在。俺はそれらの情報を父さんへと伝えて、無事に異世界探査という任務を果たすのに成功したのだった。

「そうそう、今度は有人宇宙船の試作機が出来たんだが、ちょっとテストパイロットをお願いできないか? 人を超えた身体を持ったお前なら、多少の無茶をしても大丈夫だろう」
「えっ、宇宙!? うーん、それは、えーっと」

 今度は一体何処へと向かわされるのか、俺は心配が止まらなかった。

 

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