第03話 少しずつ起こる変化

 相変わらず、空いた時間にコツコツとスマホを片手に持ってゲームをプレイし続けている僕は、そのゲームに登場する主人公のステータスをどんどんと育成し上げていく、レベリングを行っていた。

 自分はテストプレイヤーとして選ばれたことによって、このゲームをプレイできているけれど、世間にはまだ制作発表すらされていない様子で、情報が全然出回っていない。なのでネット上には、攻略に関する情報ももちろん出回っていないので、自力で攻略していく方法を見つけて考える必要があった。

「こんなに手探りでゲームをプレイするのは、久しぶりだなぁ」
 ゲームをプレイしながら僕は、そう呟いた。

 基本的には、ゲームをプレイするにあたって序盤は攻略情報を極力見ないようにする僕だったが、ある程度ストーリーを進めていくと効率や隠し要素が気になってネットで調べてしまう。そして、集めたネット上で集めた情報を頼りに最短のエンディングルートを辿って最速でクリアしてしまう。

 つまらないと感じるようなゲームだったら、時間を掛けずにサクッとクリアできるので良いけれど、じっくりプレイして世界観に浸れるような良ゲーでも僕は同じようにプレイしてしまうのが難点だった。

 けれど、今プレイしているスマホゲームはネット上をいくら探しても攻略情報は手に入らなかったので、強制的に自力で攻略していく方法が強いられている。久々の手探り感覚に、なかなか楽しんでプレイできていた。

 今まで人生の中でプレイしてきたゲームのノウハウを頼りに、まずはメインストーリーを進めるよりも先に、主人公の育成を最優先に進める。生存率を上げるために、生命力と防御力の2つに焦点を絞ってステータスを上げる育成プレイをメインとしていた。

 それから、一気にレベルを上げることが出来る、装備すると経験値アップする武器がガチャで運良く手に入ったので、それも活用して一気に高レベルを目指して頑張る。
 ガチャによるレア武器の入手確率については分かっていないので、この手に入れた経験値アップ武器がどれだけレアなのかは見当がつかないけれど、かなり主人公のレベルアップに役立っていて育成も楽になっているので、自分的には当たりだと感じていた。

 こんな風にして、僕はスマホゲームに夢中になって連日続けてプレイを繰り返していた。

 

***
 

 スマホゲームに熱中していた僕は、実のところスマホゲームだけをプレイするのではなく、実際は他のゲームも日頃から楽しんでプレイしていた。

 ゲーマーとして数々のゲームソフトをプレイし消費して、自分なりの価値観を持ってソフト選びから楽しんでいたのだ。中には、プレイしたのを後悔するほどの外れだと感じるゲームソフトに当たった事もあったけれど、それ以上にプレイして楽しめるゲームに出会うことが出来ていたので、今も相当数のゲームを毎日のようにプレイし続けているのだ。

 食事の時間と睡眠時間、そして学校に行っている時間以外は全てゲームをプレイしていた。時間にすると、平日は8時間ほど。休日には、12時間以上もプレイしている事がある。

 世間では空前のオンラインFPSゲームのブームが起こっていて、対人戦が非常に盛んだった。そのブームに僕も乗っかって、幾つかFPSゲームを購入してプレイしていた。

 新作のゲームを買うのには、毎月親から貰っているお小遣いだけでは足りない。なので、今年の正月に貰って貯金しておいたお年玉と、既にプレイし終わったゲームをまとめて中古で売って、お金を用意してから新しいソフトを買う。

 このようにして集めた僕が使えるお金には限度があるので、つまらないゲームを掴まないように購入前は情報収集を怠らずに選んでいる。その結果、今回はかなり満足の行く一品をゲットできたので、購入ししてから一ヶ月経った今もプレイを楽しめている。

「徐々に勝率が上がってきた。お、新しい実績を解除」

 マルチプレイで進行していく、オンラインのFPSゲーム。普段はあまりプレイしていなかったジャンルであり、FPSゲームに慣れるまでのプレイし始めの頃は、僕は毎日のように連敗を繰り返していた。

 けれど、それからしばらくしてゲームの操作を覚えてシステムに慣れ始めたら、ぽつぽつと勝てるようになって、今では勝ち越せる程に勝率が上がってきていた。

 今日は、なんと5連勝してゲームの新しい実績も解除できた事もあって、僕の気分は非常に良くなっていた。夕食の時間を挟んで、その後もゲームをプレイして連勝が続いた。最終的には、10連勝という結果を得ることが出来た。

 今までの僕では、出来ても3連勝が限界だったのに、ゲームに慣れたおかげか、それとも調子か運が良かったおかげか、今日は10連勝することが出来た。これが実力ならば、自分でも信じられない成長ぶりだった。

 その夜は、ゲームで勝てたことで非常に気分を良くしたまま僕は寝床へと入り、静かに就寝した。

 

***

 

「おはよう、りゅう。朝ごはんできてるわよ」
「うん。おはよう、母さん。いただきます」

 僕はいつものように、目を覚ますとパジャマ姿で部屋を降りてきて洗面所へと向かい顔を洗って、それからダイニングルームヘ来て朝食を済ませる。

 すると、パンを食べている途中に母親が家事をする手を止めて、それから僕をじっと見つめていることに気づいた。

「? どうかしたの、母さん」
「うん、そうねぇ。りゅう、ちょっと立ってみて。背が伸びた?」

 気になって僕が問いかけると、母さんは何かに納得したように首を縦に振って、そう言いながら食事中の僕に近づいてきて、パンを食べている途中なのに席から立たされてしまった。

「確かに、ちょっと背が大っきくなったかな」
 母親に言われて立ち上がってみると、初めて自分の目線の位置が高くなっていることに気がついた。そう言われれば、ちょっと背が高くなっているような気がする。

「りゅうは、成長期ね。それより、このまま大きくなったら買ったばかりの制服がすぐに着れなくなるかも」

 僕と背比べをしていた母親は、そんな心配事をしていた。まだまだ、制服を着た心地には余裕があるので大丈夫だろう、と考えていた僕の予想は、すぐ1ヶ月後には間違いだと感じさせられるほど、僕はぐんぐんと成長していった。

 偶然にも、僕の背が伸びだしたのはスマホゲームをプレイし始めてからだと気づいたのは、身長が180センチメートルを超えた後の事だった。

 

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