第07話 大地の活躍

 小太刀大地は、色々な方面へと手を出して活動していた。学業はもちろん、部活動にアルバイト、そしてその合間に妹である香穂里の面倒も見ていた。

 最近は、生活に慣れてきたのか小学生である香穂里は精神的にも落ち着いて夜起き出して泣くことも無くなった。そして家事手伝いを積極的に、家電の使い方も覚えはじめていた。

「きりかた、こう?」
「そう。包丁を使う時は、指をこうして切らないように注意して」

 食材を切るために手を怪我しないよう、猫の手を作って左手を添えるやり方を教えながら包丁の使い方について指導する大地。楽しそうに手を動かす香穂里に、しっかり危ないことを注意しながら。

「コンロのつけ方は、こう?」
「そうそう上手だ。火をつけたら、手や服を火に近づけないよう注意して」

 台所にあるガスコンロのつけ方から、火をつけた後はその場を離れないようにする事、コンロの上や周辺に可燃物を置いたりして使わない事など、いろいろな注意点を香穂里に教えていく。

 大地が香穂里に料理のコーチをしながら刃物の扱いを教えて、ガスコンロで火を使う特訓を日々行っていた。徐々に香穂里の手付きは上達していって、彼女が1人で料理を作っても大丈夫だと許可を出せる日も近そうだった。

 こんな風に、小太刀兄妹は大人が面倒を見なくても無事に何事もなく、普通に生活を続ける事が出来ていた。


***


 妹の面倒を見ている他にも大地は、アルバイト先での仕事で大活躍していた。

「お待たせしました、アメリカン珈琲とミックスサンドウィッチです」
「お、早かったね。ありがとう」
「ごゆっくり、どうぞ」

 習った通りに緊張もなくスムーズに、大地は接客をそつなく行いアルバイトとして立ち回っていた。やって来る常連客とも、コミュニケーションが抜群によく出来ている。小太刀大地は、いつも平然としていて表情豊かという訳ではなかったが態度が悪い訳ではなく、話をしてみると人当たりがいい性格をしていたから、接客を受けたお客から気に入られていた。

 しかも、不憫な境遇にあるにも関わらず仕事中の表情には一切出さず、普通に接客をしている。その後で、本人とは別の人から伝え聞いた交通事故に遭って両親を亡くしている、という話を知ると、小太刀大地についてを知った常連客は誰もが驚いた。

 本人が一切、その素振りを見せないから。そして、同情して気の毒に思って大地の味方になってくれようとする常連客が増えていく、という状況だった。

 大地本人は既に死んだつもりで、次の人生について神様から告げられ確定している事が判明しているので、今の自分が生きている理由は妹の香穂里を幸せに生活させる為、という明確な生きる目的を持って過ごしていた。

 だからこそ、何事にも迷いなく突き進んでいけた。その精神が、アルバイト中の仕事をしている最中にも現れて、淡々と仕事を処理していく姿が潔くプロフェッショナルとして、お客様には好意的に見られていた。


***


 アルバイト先でも順調でありながら、先日入部したバスケットボール部の活動でも実は大活躍していた小太刀大地。

 部活動に入部した、その日から早速練習に入ってバスケットボールについてを学んだ大地。初心者の彼にバスケットボールについてを教えてくれる先生として、江西直人(えにしなおと)という人物が付いてくれた。

 その人物は、栗間先輩が”上手い選手”と言っていた、その人であった。子供の頃から、ストリートバスケで鍛えられた能力によって、高校生としては驚異的だと言えるような技術を持っているバスケが上手い男子高校生だった。

 そんな人物に教わった大地は、驚くべきスピードでバスケットボールについてを吸収していった。数日習った結果、始めたばかりだと言っても誰もが信じないだろうと思うぐらいの成長速度。

「そろそろ俺も、先生に追いつけるかな」
「ばーか、まだまだ全然未熟だわ」

 高校一年生でバスケを始めたばかりの大地が生意気そうな口調でふざけながらの挑発をすると、バスケについて教えてくれている先生をしてくれた、1個上の先輩である高校二年生の直人がまだ早いと、華麗な動きを交えて答える。

 ワン・オン・ワン、一対一で対決練習をしている大地と直人の2人。直人がオフェンスとしてボールを持ちながら攻めている。そして、相手にシュートを決めさせないようにディフェンスをしている大地。

 ディフェンスの大地は俊敏に動いて、ドリブルしている直人のボールに手を伸ばして奪おうとする。だが、動きを直前に察知した直人はドリブルのスピードを変化させて、伸びてきた手をタイミングをズラして避ける。そして、ボールは奪えず直人に突破を許すとショートを打たれていた。直後、ゴールネットを揺らす気持ちの良くなる音が聞こえてきた。

「今ちょっとボールに触ったから、次は奪えるよ」
「指がちょっと触れたぐらいで勝ち誇るとは、未熟だね」

 まだまだバスケの技術では勝てないが、迫っていっている実感を持つ大地。そして、見た目には余裕綽々という感じの姿を見せている直人は、内心では少し大地を脅威に感じていた。もっと練習せねばと、自分を警めている。

「ほい、シュート」
「そのオフェンスからの奪い方、まだ習ってないんだけど」
「たまには自分で考えて動くんだな。これから、どんどん知らない動きを混ぜていくからよろしく」

 続けて対決すると、やはりボールを奪えないでいる大地。小学生の頃から鍛え続けてきた意地を見せるために負ける訳にはいかないと、直人も大人気なく大地には勝たせなかった。そしてボールを器用に指の先に載せてくるくる回し、余裕綽々で答える直人。

 バスケットボールを習い始めてまだ数週間も経っていないのに、もう既にそのバスケットボール部でエースを務めている直人に少し迫りつつある程に上達していた大地。

 他の部員からは、江西は元から凄い技術があるのを知られていて、そんな彼に数週間前に入ってきたばかりの大地が迫っていくなんて信じられないような出来事、次元が違うような能力を見せつけられて、部員たちは驚いていた。

 こうして、バスケットボールの能力が急成長した小太刀大地は、未経験で入部してからわずかも経たないうちにレギュラーの1人となっていた。

 レギュラーとなった大地は次に行われる試合に出れることになった。しかも、次の試合というのが、冬のインターハイに出場できるかどうか、という地方大会での試合だった。