第06話 生活安定を目指して

 自分の身を、そして妹の身を守るためにどうすれは良いのか大地は考えて、出した結論は有名人になればいい、というアイデアだった。世間の目が自分たちの方に注目して向いていれば、少しは自分たちの境遇を知ってもらえるのではないか、と考えて出した結論であった。

 両親が亡くなってすぐに家から追い出された境遇、親戚から引き取ってもらったのに面倒も見ずに放って置かれている境遇、その他にも色々と今の雑な扱いを知ってもらえれば、自分たちの状況がどうなのか判断してもらえる。それが香穂里の幸せな生活に繋がると、大地は信じて疑わなかった。

 次に考えるのは、どうやれば学生の身で有名人になれるのか。考えた結果、学校での部活動で全国大会に出場して活躍すれば、メディアからも注目されるのではないかと思い至った。学生の身で一番身近にあるイベントであり、能力を競い合える場所にたどり着ければ。

 大地は他の人には無い、神様から授けられたという特殊な能力を持っていた。ステータスという自分の能力を数値化して確認できるという、他人にはない特別の能力。最近では、どうやら他人のステータスも確認できることが発覚して、更に更に他の人に比べると成長が早い事に気が付いていた大地。他の人に比べて、ステータスに表示される数値の上昇スピードが何倍も早く、つまり小太刀大地は成長速度が人よりも早いということが発覚していた。

 その能力を駆使することが出来れば、他人と比べて効率よく必要な能力を確認しながら高めていくことで、頭一つ抜きん出た選手として部活動の大会でも活躍出来るだろうと考えていた。

 それじゃあ次に、どの部活動に入って活躍すればいいかを大地は考える。

 最初に思い浮かんだ部活動は、やはり野球部だった。春と夏にテレビで中継されている甲子園大会に出場できれば、メディアにも取り上げられるような状況になるのではないかと考える大地。だがしかし、その案はすぐに却下した。

 というのも野球は子供の頃から大人気のスポーツで、将来の夢が野球選手だと語る小さな子が沢山いる。だから競う相手となるのは、小学校からクラブチームに入って、とんでもない量の練習を重ねてきた、というような選手が沢山居るだろうから選手としてのレベルも高い。

 高校生になった今から入部して、勝てるかどうか。最終的にはレギュラーを奪い取る自信は有ったけれど、考えれば時間が掛かりそうだし、その後で一選手としてメディアに注目されるほどの抜きん出た選手になれるかどうかについては、自信が無かったから。

 次に思い浮かべたのは、サッカー部だった。けれど、それも却下せざるを得なかった。野球に比べると人気は少し落ちるかもしれないが、それでも日本での王道二大スポーツと言われるぐらいに人気があり、子供の頃からプロ選手を目指して練習している子たちが沢山居るだろうから。

 そして色々と考えてみた結果、良さそうだと思えたのがバスケットボール部だった。世間にも知られているスポーツだったけれど、高校生大会については野球やサッカー程に今のところ注目はされていない。

 けれども、競技人口で言えば実は世界一でもあるスポーツがバスケットボールだった。だからメディアからの注目を浴びる事が出来れば、一気に人気が出て世間に知られるような人物になれるのではないかと考えた。

 有名人になるという大地の目的に合致しているのが、バスケットボール部であると言えた。

 考えた上でたどり着いた結論。次は行動に移すために早速、大地は高校にあるバスケットボール部を訪ねて、入部したいと告げに行ってみた。

「え? 君って、あの小太刀君、だよね」
「はい、そうです」

 入部を申し込みに来た大地を対応したのは、バスケットボール部で部長を務めている冨上(とかみ)先輩という人だった。彼も大地が交通事故に遭って両親を亡くしたことを、学校で流れている噂を聞いて知っていたので、急にやって来た噂の当事者である大地に対して、どう対応すればいいのか困ると言った表情を浮かべていた。

「今日から、バスケットボール部に入部したいと思ってやって来ました。よろしくおねがいします」

 困惑している冨上先輩には、特に配慮することも無く大地は自分の目的をハッキリと伝えて、頭を下げてお願いする。バスケットボール部に入部する、という意志を示すだけだった。

「この時期に入部したい、って言うの?」
「はい、よろしくおねがいします」

 大地は高校一年生だったが、今はもう夏休みも過ぎて冬休みに近いぐらいの時期だった。本来ならば高校へ入学した春から入部して、遅くてもゴールデンウィーク前までに入部する部活を決めて、入部届を出して参加するのが普通だと思っていた冨上先輩。それが突然やって来て、入部したいですと急に言ってきた大地に驚き戸惑っている。

「本気か?」
「はい、もちろん冗談じゃないです。本気です」

 入部する意志は本気なのかどうか、冨上が本人に直接問いただしてみれば、キラキラとした目で肯定される。そんな態度をする大地を見て本当に部活動への入部希望者であるらしい、という事を認識した冨上だった。

 バスケットボール部への入部を許可した冨上は、大地という人物について知ろうと質問を始めた。

「大地くんは、バスケ経験の歴はどれくらい?」
「体育の時間に、ちょっとやったぐらいです」
「え?」

 冨上にとっては、まさかとも思える答え。中途半端な時期にやって来て真っ向から入部を申し込みに来た大地を、てっきり経験者なのだと思っいたが、実のところバスケットボールについてほぼ未経験者だと正直に申告してきたのだった。

「ま、まぁ、入部するって言うんだったら歓迎するよ。これから練習して技術を学び、磨いていけばいいから」

 未経験であってもやる気は見せている大地の姿を見て、フォローを入れる冨上だった。これから一緒に成長していこうと、積極的に仲間に迎え入れる。というのもバスケットボール部にも、大地を快く受け入れる状況があった。

「今、ウチは部員の人数が全然揃ってないからね。大会に出場できる選手数ギリギリ足りてないんだよ」
「そうなんですか」

 小太刀大地が入部したことによって、ようやく部員数が10名に達したバスケットボール部。バスケットボールのインターハイでは、登録できる選手人数が12名なので少し足りない。

「まぁ、実はウチにも上手い選手が居るから皆で頑張れば、全国大会に行けるかも知れないんだ。一緒に頑張っていこう」
「よろしくおねがいします」

 冨上部長は、純粋に大会に出場して優勝することを目標にして頑張ろうと大地を誘う。そして、入部した大地は別の目的を持って、メディアに取り上げられる注目される選手となる事を目標にして、有名人になろうと思って頑張りながら部活動に参加することになった。