第05話 アルバイト

 お金は、アパートに放り込まれる時に銀行通帳を渡されて、それに振り込まれている分を使えと叔母から指示されていた。

 後で確認してみたところ,どうやら月に2万円というお金が口座に振り込まれているらしい事が分かった。子供が2人で食べていくだけなら工夫をして何とか問題無いぐらいの金額だけれど、他に緊急でお金が必要になった時には困ってしまうようなぐらいの振込金額だった。

 それに、このお金がいつまで振り込まれ続けるのかが分からない。叔母に問い合わせようにも連絡先が分からず、もしかしたら次の月には突然になって振込が止まって、お金を受け取ることが出来ない状況となるかも知れない。

 将来の見通しが立たない、不安定で少し恐怖を感じるような状況だった。何が起こるかが分からないので、いつも備えておかないといけない。月に振り込まれる2万円というお金は節約しつつ貯金をして、更に大地はアルバイトをして自分の力でお金を稼ぐ手段を確立しておこうと仕事を探し始めた。

 高校に通いながら、妹の面倒も見つつ、空いた時間を使って仕事をするつもりの大地。なので、限られた時間でしか働けないので探し出すアルバイトも限られた物の中から条件に合う物を選んで面接を受けに行く。

 だがしかし両親が居ない、引き取った親戚とも関係が薄いという状況を説明するとアルバイトの面接では悪いようにしか受け取られず色々と危惧されて、結果的に2件の面接を受けたが採用を断られてしまった。

 面接を受けに行けば、よっぽどの事が無ければ採用されると言われていた簡単なアルバイトの面接ですら、2件続けて断られるとは思っていなかった大地。

「なるほど、ご両親が交通事故で亡くなっているのか。……申し訳ないけれど、うちでは普通の高校生のアルバイトを雇いたいから、今回は申し訳ないけれど」
「そうですか、分かりました」

 そう言って、2件ともアルバイトの面接を落とされてしまっていた。普通の高校生じゃないらしい自分は面接に受からないと、ネガティブになり始めた大地だったがアルバイトの仕事を取ることは諦めずに、次の面接を受けに向かった。

 すると、今度の面接官は先の2件の面接とは違ってすごく親身になって、大地に応対してくれていた。そして、大地の置かれている状況を理解して受け入れつつ、アルバイトとしても採用してくれるようだった。

「力になるから! 迷惑だなんて思わなくていいから、何でも本当に遠慮しないで言いなよ! 俺も相談を受けたら、力になるから諦めずに頑張るんだよ!」
「え、ええ。ありがとうございます」

 アルバイトの面接を担当したのは、その店で店長をしているという栗間(くりま)さんという方だった。

 大地が自分の置かれている状況を履歴書を交えて説明してみると、説明をした大地の方が困惑するほどに慰められて、熱い気持ちをぶつけられたのだった。表面だけの心配ではなく、心の底から想っている感じで栗間さんの態度から、見て分かるぐらいの心配をしてくれていると大地は感じていた。

 既に両親の死について、大地は心の整理がついていたので、誰かを頼りにするという気持ちは既に無かった。だがしかし、大人が協力してくれるという言葉を聞くと心強く思えて安心することが出来ていた。

 交通事故以来、小太刀大地にとっては初めての頼れる大人だと思えるような人が現れた。そんな心が温かい人のもとで、アルバイトが出来ているという状況は、大地にとって非常にありがたくて、雇ってくれた店長に少しでも報いるために、貢献しようと仕事を頑張る決意を新たにしていた。

 大地が採用されて、アルバイトとして入るようになったのは個人で経営している飲食店。コーヒーを飲んだり、軽食をとるような喫茶店という感じのお店だった。

 お客はじゃんじゃん入って大流行している、という訳ではないけれど地元民に贔屓にされているお蔭で、経営が安定しているようなお店だった。そこでウェイターとして接客をしたり、厨房でコックとして料理を作ったりしてスキルを磨いていった。

 大地の境遇を一番に理解してくれている、という大人である店長からは仕事の合間に、生活は大丈夫かと心配して気遣ってくれる優しさを感じていた。そして、そんな店長に報いるためにも、アルバイトは一度も遅刻せず仕事も時間いっぱいまで、出来る限り頑張って作業をしていた。

 大地の他に、もう一人男子高校生のスタッフが居て、その他に2人の大学生がアルバイトとして働いていた。それから、店長の奥さんである人も時折シストに入って働いたりしていて、スタッフを全員合わせると5人、それから店長が1人加わって仕事をまわしていた。

 アルバイトをしている時に顔を合わせる、アルバイト仲間とのコミュニケーションも上手く行っていて、学校で過ごしているよりもアルバイト先で仕事をしている時の方が居心地が良い、と思えるような場所になってしまった。

 アルバイトの給料について、店長からだいぶ良い感じで給料と言ってお金を頂けていたので、兄妹で生活を続けていく為の不足を補う準備として、どんどんと万全になっていた。 
 妹の面倒を見るためにシフト時間も交渉によって配慮もしてくれるので、大地にとっては非常に助かると言えるアルバイト先だった。

 こうして、小太刀大地はアルバイトによって生活の安定を手に入れたので、次に行おうと決めていたある計画を始める事にした。