第04話 学校生活

 親戚から引き取ってもらって面倒を見てもらえると思っていた小太刀大地は、叔母から案内された先にあったボロアパートの部屋に放り込まれて以後は、兄妹2人きりでの生活となっていた。

 しかし、親戚から放り出されて勝手に出来ることが良かった部分もある。他人に遠慮せずに生活することが出来る、という事。ただ、それ以外は家事に料理に洗濯という生活に関する仕事を全て自分達でしないといけないので、普通に過ごすだけでも兄妹には大変な事だった。

 家事は、一緒に暮らしている大地と香穂里の2人で分担して行っていた。だが、配分については大半を年上である大地が行うようにしていた。

 妹の香穂里はまだ小学生3年生であり、刃物を扱うのは危険だという判断で料理は任せられず。洗濯機や掃除機の使い方は、いま学んでいる途中だった。なので残った仕事である、部屋の掃き掃除や、洗濯物を取り込み畳む仕事などを香穂里が担当するようになっていた。小さくても出来る事から、任せていこうというのが大地が決めた香穂里を育てる方針だった。

 そして2人はまだ高校生と小学生という学生だったので当然、平日の日は学校に通う必要があった。幸いと言うべきか、引っ越してきたアパートがある場所は、以前住んでいた家から近くにあってので、学区は変わらず別の学校に転校する必要はなかった。なので、学校に通えば友達にも会える。

 けれども、大地と香穂里が交通事故に遭ったという出来事について既に知れ渡っていて、両親が亡くなった事に関しても知られていた為に、大地はクラスメートから必要以上に気遣われる光景があった。

「おはよう」
「えっと、……小太刀君。おはよう」

 大地が挨拶すると、気まずい空気を醸し出して返事をする男子学生。事故後に退院して初めて通学した時には、そんな風に挨拶をすると明らかに気遣っているという表情を浮かべて返事をしてくるクラスメート達。

 大地に対して、どう接していいか分からない、という感じだった。接し方が分からないので、遠目で伺うように見てくるだけで、その後は声を掛けられる事はなかった。

 今まで通り普通に接してくれたら楽なのにと大地は思っていたが、コチラから言ってしまうと更に気遣われるような気がして、何も言わないことにした。時間が解決するだろうと考えて。

 こんな風に、学校での居場所に関して少し居心地が悪い感じを受けるようになったが、大地は登校を止めていなかった。

 事件後の初登校では、普通に授業を受けて、普通に昼食を食べて、普通に放課後を迎えたので家に帰った。

 妹の香穂里はどうだったのか、放課後に帰ってきた後で聞いてみれば彼女の方は友達がいつものように普通に接してくれたらしい。

「友達とは、どうだった?」
「あそんできたよ」
「そうか、それは良かったな」
「うん!」

 香穂里の方は大地と違って、交通事故や入院中の事について聞かれたらしいけれど、友達としての態度には特に変化はなく普通に接してくれたらしい。そして、いつものように遊んできたという彼女の言葉を聞いて一安心する大地だった。今は、自分の事情よりも妹の方が幸せに生活できていれば良い、と考えていたから。

 香穂里が学校での生活を普通に過ごせている事に一安心していたけれど、まだ全ての心配事が取り除かられたと言う訳では無かった。

 時々、交通事故の影響だろう突然夜中に覚まして、声を上げて赤ん坊のように泣きじゃくる香穂里が居た。不安がって泣いている妹を落ち着かせるために、大地が抱きついてくる彼女の背中を優しくトントンとしリズムを取ってやると、落ちついて再び眠る。そんな日々が続いていた。

 この子を1人置いて、転生しないで良かったと大地は心の底からホッとしていた。もしも自分が居なければ、今頃どうしていただろうか。親戚は今とは違うような形でしっかりと引き取って保護してくれただろうか。それとも、1人きりであってもアパートに放り込んで適当に対処しただろうか。

 香穂里は女の子で、まだ幼い小学生だから今とは違って引き取り手が居たかも知れない。引き取る時に付いてくる高校生である大地の存在が無ければ、今と違う結果が待っていたかも。

 仮定の話だが、ありえたかもしれないと考える。すると自分の存在が邪魔だったかも知れない、と大地はネガティブに考えてしまう。

 けれども、今の状況と同じ様に香穂里が1人にされ放置されたかも知れないと考えると、一緒に居てよかったとも思える。引き取った相手が良い人とも限らない、今のように関係を断ち切った様な感じで放置されるのも悪いことではないかも。

 ぐるぐると、考えても詮無いことだけれど、考えずにはいられない。あの神様にお願いした時の選択が果たして正解なのか間違いなのか、今でも分からない大地だった。