第07話 妹

 ガツガツガツと皿とスプーンがぶつかる音を立てながら、一気に掻きこむ沙希さん。一口食べては、ウンウンと首を振る春お姉ちゃん。

 静かに、口にスプーンを運ぶ、香織さんと紗綾お姉ちゃん。

 いつの間にか席につき、恐る恐るチャーハンを食べている女の子。多分あの子が葵って子なんだろう。

「おかわり!」
 食べ終わって綺麗になった皿を僕に向けて言う沙希さん。
「ごめんなさい、もう材料が無くって」

「そっか、それにしても美味かった。こんなに美味いもん食ったのは初めてだ」
 大げさすぎる評価に恥ずかしくなる僕。
「そ、そんな大したものじゃないです」
 すると、春お姉ちゃんが言葉を挟む。
「いや、とても美味しいよ優。いつもは、スーパーの弁当か惣菜だからな。やはり手作りは良い」

 紗綾お姉ちゃんが言う。
「みんな、お料理できないものね」
「そ、そんなことないわ。私は、料理できるわよ。カレーが作れるわ」

「母さん、カレーしか作れないじゃない。あとは、焼いたりするだけ」
 香織さんが意見するが、すぐ紗綾お姉ちゃんに反論され、ううっとテーブルに項垂れる。

「……ごちそうさま」
 黙々と食べていた女の子が言った。注意していなければ、聞こえないぐらい小さな声だった。席を立ち、お皿を持って台所に向かう。流しに放り込んだあと、すぐダイニングルームを出て行った。

 僕は聞く。
「今の女の子が、妹の葵ちゃんですか?」

 香織さんが顔を上げ女の子が出て行った扉を見つめながら、答えてくれた。
「えぇ、そうよ。いつもはもっとお話するんだけれど」

「葵は、優のことあんまり好きじゃないからな」
 席から立ちながら沙希さんが言う。そのまま、皿を持って台所の流し台に行く。

「それよりも優、お風呂あがったらすぐ教えてくれ。俺、明日も部活で早いから早めに頼む」
「僕は、後でいいですよ」

「んなアホなこと言ってないで、早く風呂に入れよ。優の前に入るわけにはいかないだろ。んじゃ呼んでくれ、そこの部屋で待ってるから」
 そう言うと、ガラス戸を開けてすぐ隣の部屋に行った。隣の部屋にはテレビがあるようで、プロ野球中継の音がする。

「あの、先に入ったほうが良い?」
 沙希さんの、僕のほうが先に入る事が当たり前のような言い方。一応確認するため、香織さんに聞いてみた。
「ん~、そうね。サキちゃんの言うように、女性が男性の先にお風呂に入るのは、よろしくないわ。だから、先に入っちゃって」
 それが当たり前なのか、先に入るように言われる。一番風呂になんだか申し訳ない感じがするが、ありがたく入らせてもらう。
「ん、わかった」

「ごちそうさまでした」
 残りのチャーハンを食べた後、お皿を流し台へ。
(お皿洗わないといけないけど待たせてるから、先にお風呂かな)
「先にお風呂入らせてもらうね」
 食べ終わった後、お茶を飲みながらぼーつとしている、香織さん、春お姉ちゃん、沙綾お姉ちゃんの三人に声を掛けてる。

「お風呂は、扉を出て右手の奥にあるから」
 香織さんがお風呂の場所を教えてくれる。部屋を出て、お風呂に向かう。
 向かう途中の階段のところに、葵ちゃんが立っていた。部屋に戻ったんじゃなかったのか。

「葵ちゃんだよね」
 思い切って声を掛けてみるがじっと、こちらを見つめてくるが黙ったままで何も返事がない。
「えーっと……」

「……返して」
「えっ?」
 ほとんど、聞こえない小さな声。
「私の、取った。……返して」
「えっと?何を返してって?」
 今度は、先程よりも少し大きな、それでも聴き逃してしまいそうな声。返してと言われたが、全く何のことか分からない。

「ゲーム……、私の」
(ゲーム?取ったって僕が?もしかして)
 部屋を捜索している時に見つけて、夢中でやっていたゲーム機を思い出す。


「もしかして、ゲームポケットの事?」
 コクンと頷く。あれは葵ちゃんの物だったらしい。
「わ、分かったすぐ返すよ。部屋にあるから取ってくる」
 階段を上がり、部屋に戻る。後ろを黙ってついてくる葵ちゃん。

 部屋に入り、机の引き出しにしまってあるさっきまでやっていたゲーム機をとって戻る。
「はい、これでよかった?」
 ゲーム機を渡すと、ゲームの画面を数秒見て、ゲームのカートリッジを確認。最後に僕を一瞬見ると、そのまま何も言わずに、向かいの部屋に入っていった。

「ん~?彼女が言った”取った”って言う事は、前の僕が無理やり奪ったのかなぁ?」
 先ほど、沙希さんが言った葵ちゃんが僕を嫌いだと言っていたのを思い出す。もしかしたら、妹をいじめていたから嫌われていたのか。
 記憶に無いことだが、自分が行ったかもしれないことに罪悪感に苛まれる。

(とにかくお風呂に入るか)
 階段を降り一階へ、風呂へと向かう。

 

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