閑話16 活動経過、周りの視点

 その商店街は、買い物客の減少で寂れる一方だった。商売が成り立たなくなって閉店した店がシャッターを下ろして、全体的に暗く近寄りがたい雰囲気が漂っていた。

 悲惨なのは、そんな未来のない商店街の各店を継がされた人達だ。彼女達は、何とか現状を打破しようと、劇的な変化を起こすような策が無いか、日々話し合いを続けていた。しかしながら、今更何をやっても無駄だろう、という諦めの気持ちも次第に大きくなっていた。

 そんな時期に、思わぬところから大きな変化が起きようとする出来事があった。それは、佐藤優という男性が寂れて何も無いような商店街で職業体験を行いたい、という要望を出してきた事。

 佐藤優の話を聞いた商店街の人達は半信半疑で、こんな場所に男性が来るという事実に、嬉しい気持ちが大半を占めている一方で、厄介な性格の人が来たら迷惑だという否定的な考えもあった。人口が数少ない男性というのは、居るだけで価値があり、女性に対して無条件に大きな影響力を持っていた。万が一、男性からわがままを言われても、女性は可能な限り叶えてあげないといけない、というような考えが一般的だった。

 佐藤優が職業体験を希望し、受け入れることになったクローリス洋菓子店の店長である神谷志織は、羨ましいという感情と、大変だろうなという労る視線を他の商店街の人達から向けられていた。
 そして、そんな視線を送る彼女達は極力関わり合いにはならないように、遠目から佐藤優を眺めて楽しもうと傍観者を決め込んだのだった。

 そうした状況が一変したのは、神谷志織と佐藤優が顔合わせをした後の事だった。佐藤優は世間一般の男性とはかけ離れた優しい性格で、女性に対して無闇に高圧的な態度を取らない事を知った神谷が、彼との出会いを自慢げに語ったのだ。

 その話を聞いて、最初は傍観者として振る舞おうとしていた人達が一転、何とか彼とお近づきになりたい、と思うようになった。

 男性と交流を持つことなんて、人生で数えるほどしか無い。しかも、無害な男性との接触。そんな貴重なチャンスを活かそうと考えて、彼女達は商店街の現状という問題を利用することにした。

 つまりは、商店街の寂れた現状という問題を共有しつつ、色々と解決しようとする自分たちの姿を見せつけて、格好をつけようと考えたのだ。

 けれど、そんな思惑は上手くは行かなかった。商店街に対する周辺市民の持つ暗いイメージや、排他的な雰囲気で利用しづらいという印象は根深く、商店街を復興をしようとする活動は予想以上に困難だった。

 更には、傍目から見れば突然始まった、商店街を盛り上げようとする飾り付けやイベント、セールの頻発するという動きは、周辺市民からはあまりにも急なことで不気味がられ、敬遠されるようになった。そして、客足が遠のく結果となってしまった。

 だがしかし、またしても佐藤優という存在によって商店街に劇的な変化が起こった。

 最初は、自分たちだけで解決して佐藤優に対してカッコよく見せようと始めた商店街の問題だったが、想像以上の衰退と寂れ具合、何をしても効果が得られない現状を目の当たりにして、佐藤優の助けが必要だと感じていた。

 佐藤優に助けてもらえる今回の機会を逃せば、永遠に商店街に活気を取り戻すことは出来ないだろう、と思い至ったのだった。

 佐藤優を利用した、商店街の各店が一丸となっての大海たかみの企画は大成功した。

 今までは、行く目的も無かった商店街だったけれど、佐藤優という男性を一目見る、という大きな目的が出来ると、商店街を訪れる人が多くなった。しかも、日ごとに接客する店が変わり、店ごとに着ている服装も変わって、色々な佐藤優という男性の姿を見られるという。連日、商店街を通う人が続出したのだった。

 加えて、佐藤優が職業体験として設定されてる時間以外にも自主的に商店街の手伝いをするようになり、今までは時間外で佐藤優が居なかった夕方ごろ仕事終わりのサラリーマン達でも、佐藤優との交流を持てるようになったら、夕方以降に来るお客さんも増えていった。

 仕事終わりにクタクタで疲れた彼女達は、佐藤優という癒やしを求めて商店街へとやって来て、言葉を交わし、そして翌日頑張るぞという活力を得ていた。新しいサラリーマンの日常が生まれていたのだった。

 佐藤優は商店街の看板息子として、一気に認知されるようになっていった。

 このようにして、今の商店街は少し前までの状況からは考えられない賑わいを見せていた。だがしかし、商店街が盛んになる一方で割りを食っている存在もあった。地元スーパーである。

 そこの地元スーパーを任されていた店長は、とても焦っていた。彼女は大きな失敗もせず、店長としての仕事を無難にこなしていたけれど、ある時から来店者数が減っていっている事に気づき、地元の商店街の活動について知った。そして、まずい状況を認知した時には、売上の減少が無視出来ないほどの大きな影響をスーパーにもたらしていた。

 何とかしなければ! そんな気持ちを持ちつつ、良い対策は思い浮かばない。しばらく前の、商店街の人達と同じような絶望的な気持ちを味わっていた。

 そんな焦る日々を過ごす彼女は、後に大きな事件を起こすことになる。

 

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