第42話 仲裁の結果

 僕の用意したおやつと飲み物によって、何とか落ち着いた2人。けれど、どちらも互いに視線を合わせずに僕を見ているので、僕の方から話を振ってみることにした。

「沙紀姉さんと紗綾姉さんの2人は、仲良く出来ない?」
「だって、コイツのほうから邪険に扱って! 嫌ってる奴と仲良くなんかできるか?」
 僕の一言を聞いて一気に沸騰する沙紀姉さん。その様子を冷ややかに見ている紗綾姉さん。

「沙紀姉さんは、紗綾姉さんが嫌っていて仲良くしないと言ってるけれど何故そう思うの? 話し合っていないのに何故決めつけるの?」
「だ、だって……」
 不満気につぶやく沙紀姉さん。僕は次に紗綾姉さんの方にも質問してみる。

「紗綾姉さんも、何でいっつも黙っているの? 話し合うつもりはないの?」
「話したって無駄だわ」
「何で話したって無駄って思うの? 誰だって言ってくれないと何を考えているのか、何を感じているのかわからないよ。話し合おうとしないのは面倒だとか理解し合えないって、話す前から諦めてるから?」
「……」
 黙りこんでしまった紗綾姉さん。なるべく2人の中立に居ようと、二人共に思ったことを聞いてみたが、どちらも答えず黙ってしまった。自分でもかなり説教臭いと思うのだが、僕は話を続ける。

「それで、今回の喧嘩の原因だけど」
 僕はそう言って、沙紀姉さんが誤って僕に手を当ててしまったことについて振り返った。で、これについての問題点を挙げた。
 ひとつは、沙紀姉さんがむやみに暴力で訴えようとした事。簡単に手を出してしまうことの愚かしさ。そして、もうひとつは起こった問題についてすぐに話し合わなかったこと。
紗綾姉さんが僕を直ぐに引っ込めてしまったこと。

「沙紀姉さんは、家族に対してすぐにに手を挙げるけれど家族に対しても手を出したら絶対にダメだ。それに、あの時は僕に当たってしまったけれど、元々紗綾姉さんを狙った事だから、その事についても謝らないと」
「……」
 複雑な顔で悩み始める沙紀姉さん。彼女も人に手を挙げる事は悪いと理解しているのだろうけれど、僕に手を当ててしまったことは謝ってもらったが、相手がいがみ合っている紗綾姉さんだと謝ることに大きな抵抗があるようで、彼女に対してはなかなか謝ろうとはしない。

「沙紀姉さん!」
「う、うん。……ごめんなさい、紗綾」
「え、……えぇ」
 僕が少しだけ怒気を込めて、沙紀姉さんの背中を押す。僕の無理矢理で、声は少しだけ小さくなったけれど、沙紀姉さんは紗綾姉さんにシッカリと謝った。
 紗綾姉さんは、まさか本当に沙紀姉さんが謝るとは思っていなかったようで、かなり動揺しながらも返事をする。

「コレで、喧嘩の原因は無くなったでしょ? もう仲直りだね」
 少々強引に、そして努めて明るく振る舞う僕。コレで、多少はわだかまりも消えてお互いに話し始めたら、以前の関係には戻れるだろうと思う。少しだけ楽しい将来に思いを馳せていると、紗綾姉さんが待ったをかける。

「ちょっと待って、さっき2階で優を泣かせた件は?」
「ちげぇよ、俺のせいじゃねぇ!」
「じゃぁ、誰のせい? 優と一緒に向かい合って涙を泣かせてオロオロしていたのは貴方でしょう?」
「だ、だからあれは」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
 先ほどの事を思い出して、紗綾姉さんは再びヒートアップし始めた。それに突っかかっていく沙紀姉さん。僕が慌てて止めるが、再び亀裂。この件は僕のせいなので僕が詳しく説明する。

「紗綾姉さん、あれは本当に沙紀姉さんが原因じゃなくて僕が原因なんです」
「どういうこと?」
 視線を沙紀姉さんに向けながら、聞き返してくる紗綾姉さん。僕は、あの時考えていたことや、涙を流すようになってしまった自分の幼い精神について話すのは恥ずかしく思ってしまうが、この部分を曖昧にすると話がこじれそうなので、あの時に思っていた事を詳細に話す。

「あの時僕は、2人がこのまま一生お互いが嫌い合って、家族なのにいがみ合って生きて行くって考えた時に悲しい気持ちになって、そんなのは絶対嫌だって思ったのに、沙紀姉さんを説得しきれなくて涙が出てしまったんです」
「それじゃあ、沙紀が優のお願いを断ったから泣いてしまったんでしょ? それなら沙紀のせい」
 まだ納得のいかない紗綾姉さんに説明を重ねる。
「いいえ、僕が勝手に悪い想像をして、勝手に弱気になったから悪いんです」
 この件に関しては、僕が本当に悪いと思うので沙紀姉さんを必死に庇うようにして説明する。

「なるほど、そういう事だったのね……」
 僕が、必死に説明するとヒートアップしていた紗綾姉さんが落ち着いて状況を理解してくれた。
 ココに来て、喧嘩へと発展してしまっていた問題は全て片付いた。後は、2人で話し合うしか仲の良さを取り戻す方法は無いだろうと考えた。

「とにかく、2人でいがみ合う問題は無くなりました。後は2人でお互いを知り合うために会話して下さい」
「待ってくれ、優」「ちょ、待って優」
 慌てる2人を残して、僕はキッチンに移動して夕飯の支度を始める。キッチンから2人の座っているテーブルは見える位置にある。何か言い合いになったら直ぐに向かって行ける、少しだけ離れた位置で沙紀姉さんと紗綾姉さんを二人きりにする。

 僕は、彼女2人の動向を気にしつつ夕飯の支度を進めた。多少の言い合いになっていたみたいだが、話し合って入るようで大声は出さずにお互い座ったままで手も出なかった。見ている途中で2人が笑顔になったりして、僕は安心した。
 僕が夕飯を作り終える頃には、2人が普通に会話しているのでいがみ合いも無くなっていたようでホッとした。

 こうして、2人は一応の和解をした。たまにに言い合うことはあっても嫌い合うことは無くなった。
 だけど、それでもお互いが唯一譲れない事があって……。


「紗綾、優から離れろ」
 僕の腕に巻き付いて離れない紗綾姉さんに向かって、沙紀姉さんが注意する。
「あら? 優は嫌がってはいないけれど」
「とにかく離れるんだよ」
 そう言って、沙紀姉さんは紗綾姉さんの抱きついている腕と反対側の方を取って引っ張る。少し痛いと思っていると、顔に出てしまったのか紗綾姉さんが沙紀姉さんに苦言を呈する。
「沙紀、優が痛がっているわ」
「あ、わりぃ優。紗綾が離さないからだぞ!」
 僕に向かってすぐに謝り、紗綾姉さんに文句を言う。

 と、この様に僕に関する事で言い合いになる事が多くなった。沙紀姉さんは暴力を振るわない様になったけれど、その分口に出るようになった。

 

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