閑話13 姉妹喧嘩について(佐藤香織視点)

 私は娘の春と一緒に、ユウくんから沙希と紗綾の2人の姉妹についての相談を受けていた。どうやら、少し前から2人は大喧嘩をしているらしくて、喧嘩の経緯についてをユウくんから説明された話を聞いた後、どうするべきかを相談したいとのこと。

 昔から、沙希と紗綾の2人は言い合いなどの喧嘩を繰り返していて仲が良くなかった。けれど最近は喧嘩している姿を見ていないと思ったら、お互いを無視しあって2人は接触しないようにしているらしい。

 そして、その大喧嘩の原因となったのが紗綾を庇ったユウくんに、沙紀が手を出して殴りつけてしまったという出来事。幸い、ユウくんには大きな怪我はなかったらしくて殴られた本人は問題にしていないけれど、一歩間違えれば大変なことになっていたことだろう。
 家族と言っても、女が男に手を挙げるとなると暴力事件として取り扱われてしまう恐れがある。沙紀には後で厳重に注意しておかないと、と思いつつユウくんの話を思い出す。

 ユウくんは、喧嘩ばかりしている2人の仲を取り持とうとしている。2人が喧嘩ばかりしているのは私にも問題があった。それは、2人が生まれた時に一番仕事が忙しい時期で、沙希と紗綾の2人に付きっ切りで育児をしてあげることが出来なかった。その時に寂しい思いをさせた事で、一番身近な家族である姉妹同士が寂しさを紛らわせるために喧嘩することが日常になってしまったのだろうと考えている。そして、気づいたら2人の姉妹の関係は今までそのまま続いたままになってしまっていた。


 ユウくんが相談を終えて部屋に戻って行き、私と春の二人になってからも沙希と紗綾2人の娘についての話は続いていた。

「母さんはああ言ったけれど本当に仲が戻ると思っているのかい?」
 春の言葉に、先ほどのアドバイスを思い出す。ユウくんにアドバイスを求められて、一応思いついた方法として2人で話し合いをするように仕向けてはどうかと言ってみたけれど、私はそれで仲が元に戻る可能性は低いと思っていた。

「う~ん、やっぱり難しいと思うわ。あの子達が仲が良くないのは、ずっと昔からだもの」
 私の言葉で渋い顔になる春。春も同じように難しいと思っているのだろう。

「優の言っていた出来事がなければ、あるいは、まだ仲の良さを改善できたかもしれないが」
 今回の大喧嘩は今までにないくらい、険悪な状況に発展しているらしい。

「沙希がユウに手を上げたのは不味いし、紗綾が批難するのも間違っていないだろう。沙希は優にもう謝ったと言っていた。だから後は、沙希が紗綾に暴力を振るおうとしたことを素直に謝って、紗綾は言い過ぎた事について謝る。お互いに謝ることが出来れば、仲の良さは改善するだろうが……」
「二人とも、ずっと喧嘩してきて謝ってこなかったから難しいかもしれないわ」
 2人の姉妹の仲の良さを改善するにはという問題の困難さを再確認して、ため息が出てしまう。

「だけど、いつか2人は大喧嘩をすると予想をしていたわ」
 ユウくんが昏睡から目を覚まし変わってから、私達家族の関係もユウくんを中心にして大きく変わっていった。

 ユウくんが入院する以前までは、家族全員が腫れ物を扱うようにユウくんと接触は最小限だけど注意深く遠くから観察するような関係だった。家族ではあるけれど女性と男性でまったく違っていて、扱いも方も戸惑い、失敗ばかりしていた。

 それが一変して、ユウくんが歩み寄ってくれるようになった。今までにない男性像としてのユウくん。初めてのような方法による男性との接触の仕方、だけど非常に心地よい関係。
 家族皆がユウくんを中心とするようになった。そして、少し前までは冷戦状態だった沙希と紗綾の関係も、ユウくんの影響で大きく変わっていった。

「だから、落ち着いていた状態が揺り動かされて、なにか起きるだろうって心配していたの」
「なるほど。確かに優が退院して変わってから、家族の関係、姉妹の関係も違って来ていたな」

 ユウくんが変わったおかげで、家族も大きく変わっていった。しかし、中には悪い変化もあって、その影響によって、キッカケはユウくんだけれど沙希と紗綾の大喧嘩へと発展していった。

 ユウくんは二人の仲をどうにかして戻そうとやる気になっていたけれど、私には残念ながら2人が仲良くしている光景が思い浮かべなかった。

「とりあえず、ユウくんが2人の姉妹にやりたいよにやらせてみて状況を見るしかないわ」
「何かあったら、私と母さんがフォローしよう」
 沙希と紗綾の姉妹喧嘩については、そう結論づいて私と春の2人での会話は終わった。

 

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