第39話 ケンカの行方

 沙希姉さんが僕を誤って殴ってから、しばらく日にちが経った。僕は、沙希姉さんに殴られたことをそんなに気にしていなかったが、沙希姉さんはかなり深刻になっていて、僕に対して何度も謝った。

 何度も僕の許すという言葉に、やっと沙希姉さんはホッとしたように落ち着いて、許していることを理解してくれた。しかし、次の問題に紗綾姉さんと沙希姉さんの関係がかなり悪化した。お互いに会話することもなければ、目を合わすこともせず、さらに一緒にご飯を食べようとしなくなってしまった。

 以前は、できるだけ集まって夕食を食べていたのに、あの日以来家族が揃うことがなくなった。沙希姉さんが必ず時間をずらして皆を避けて、後で食べるようになったのだ。


 僕は、香織さんと春姉さんに姉たちの事を相談してみた。あの日沙希姉さんに誤って殴られたこと、紗綾姉さんがそれに怒ったことなどを詳しく説明した。

「そう、私が居ない間にそんなことがあったの」
 香織さんが僕の話を聞いて、そう言った。香織さんは、紗綾姉さんと沙希姉さんの悪化した関係に気づいていたが、何故そうなったのかを聞いて、難しそうな顔をして考えだした。

「しかし、沙希が優を殴ったのは問題だな」
 春姉さんが、問題点を挙げる。僕の感覚だと、女が男に殴られるくらいなら大した問題じゃないと感じているが、春姉さんや香織さんから見ると、女が男に手を上げるのは結構な問題であるということだった。

「それは、僕がもう許したので良いんですけれど」
 僕がそう言うと、さらに難しそうな顔で香織さんと春姉さんが顔を見合わせていた。そして、香織さんが僕を諭すように言った。
「ユウくんが気にしないと言っても、女性が男性に手をあげたという事がかなり問題なのよ」
 春姉さんが付け加える。
「紗綾が怒っているのは、そこだろうな」

「どうにかして、二人を仲直りさせることは出来ないかな?」
「うーん、どうだろう。ユウくんが許していることは紗綾に言ってみた?」
 香織さんが僕に尋ねてくる。僕は、殴られた後の事を話した。

「言ってみました。でも僕が、いくら許しているといっても聞いてくれないんです」

「そうねぇ、元々二人は喧嘩ばかりしていたけれど、本気で互いを嫌っていたワケじゃないのよ。二人がじっくり話しあえば、もしかしたら仲直りのきっかけにはなるかもしれないけれど」
 香織さんが提案してみるが、その顔には、成功は難しいだろうという風だった。

「まず、話し合いの場を設けるのが難しいなぁ」
 春姉さんが、紗綾姉さんと沙希姉さん話し合わせるにはどうしたものかと考えを言う。

「僕がケンカのキッカケだから、僕が何とか二人を話し合う場につかせようと思います」

 僕は、紗綾姉さんと沙希姉さんにそれぞれに話をするように言って、席につかせることにした。

 

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