第37話 温泉街観光

 午前は、部屋でゆっくりした後、宿のチェックアウトを済ませた。
 チェックアウト後は、家族で温泉街をゆっくりと歩くことになった。

 温泉街にはおみやげ屋がそこかしこにあり、軒先には呼び込みをしている男の人が居た。皆、真っ赤な色の浴衣を着ていて、どうも服装が女っぽい。しかし、この男女の価値観が反対の世界では、それが普通なのだろうと僕は考える。

 温泉街の通りの中で、建物が一番大きそうな店へと家族皆で入る。売り場へ入った後は、家族皆が散り散りになっておみやげを見始めた。僕は、商品を眺めながら、家族の様子を探ってみた。

 最初に、春姉さんの近くに寄る。
「やっぱり、温泉に来たなら、おみやげは温泉まんじゅうかな」
 春姉さんは、温泉まんじゅうが取り揃えられている棚を物色していた。僕が近づいてきたのに、気づいたのか春姉さんは僕になんとなしに聞いてくる。
「誰かにおみやげ買っていくの?」
 僕が聞くと、春姉さんはすぐに答えてくれた。
「バイト仲間に買っていこうと思ってね。しかし、どれがいいかな。安いのでいいかな」
 春姉さんは、安いのでいいかななんて言葉の割に真剣に選んでいた。種類が豊富なので、選び甲斐がありそうだ。
「これなんか良いんじゃない?」
 僕は、温泉街のマスコットがプリントされた、まんじゅう18個入りのものを指さして勧める。見た目も美味しそうで、18個入りの値段もリーズナブルなので、店の商品の中で一番に見えた。
「おぉ、良さそうだね。これにしようかな。いいのを見つけてくれて、ありがとう、ユウ」
 香織さんは2箱手にとってレジへと向かっていった。

 次に、香織さんに近づいてみた。
「ユウ君には、お酒はちょっと少し早いかな」
 香織さんは、地酒が並んだ棚の前で、お酒を選んでいた。近くにあるらしい酒蔵の酒が、色とりどり取り揃えられている。僕も、この世界へ来る前は少々お酒を嗜んでいたので、こういう温泉街にあるような地酒については興味があった。ただ、今の身体は学生なので、もちろん飲酒は出来ない。
「僕が二十歳になったら、一緒にお酒を飲もう」
 僕は、今思いついたいい考えを香織さんに話してみた。
「それは、とても待ち遠しい約束事が出来たわね」
 香織さんは、いつもの倍以上の笑顔になって、更にお酒選びを続けた。

 次に、僕は紗綾姉さんと葵が居る場所へと近づいた。
「何を見ているの?」
 近づきながら、二人に聞くと葵が棚を指さした。
「……ストラップ」
 葵の言葉の通り、携帯につけるようなストラップが一杯飾ってあった。温泉に関係あるマスコットがついたものや、勾玉や小さい水晶がついたもの、何をモチーフにしているかわからないものなど、様々だ。
 紗綾姉さんと葵は、真剣に吟味しているようで、目が鋭く動いている。手元には何個かの戦利品が既に手に入れられていた。
 僕は、二人をそっとしておいて、次の売り場に移動した。

 ご当地お菓子のコーナーには、沙希姉さんが居た。
「ユウ、見てみろ。温泉地限定だってさ」
「うん、限定みたいだね」
 芋をチップスにした有名なお菓子には、でかでかと温泉地限定とプリントされていた。沙希姉さんは、こういう限定という響きに弱そうな感じなので、まさに、このお菓子には目がないだろう。
「帰りの車の中で食べよう!」
 それぞれ違う種類のものを4つも棚から取り、レジへと向かう。あれ全部、車の中で食べるきだろうか。

 皆の様子を探った後、僕は自分が気になるおみやげを調べてみた。それは、温泉旅館で出されている料理に使われているという調味料が置かれた棚だ。昨日の夜、そして今朝の宿の料理は中々に美味しかったので、家でも再現してみようと、僕は密かな試みを考えていた。
 いくつか、見繕って調味料を手に取る。レジへと持って行くと、ちょうど香織さんがお酒を選び終えて、購入したところだった。
「あら、ユウ君は何を買うの?」
 香織さんが興味深そうに僕の手元を覗きこむ。
「調味料を買うのね。料理に使うの?」
「うん、今朝や昨日の夜の料理を家で再現してみようと思って」
「それは、楽しみね」
 香織さんは、本当に楽しみにしている風に返してくれた。
いくつかの調味料をレジの台に置き、財布を取り出そうとすると、香織さんが後ろからスッと1万円札を差し出した。
「これは、楽しみにしている分だから買ってあげるわ」
「でも、小遣い貰っているのに……」
「いいのいいの、他の子たちには内緒ね」
 他の姉妹たちは、小遣いやバイト代で支払っているようだった。香織さんは強引に支払ってしまったので、僕はなすがままになった。

 売店を見終えた僕たちは、温泉街を後にして駐車場へと到着。直ぐに、香織さんが車を発進させて、家へと帰ったのだった。

 帰りの車は、姉妹達全員が眠るという状態になった。なので、僕は久しぶりにじっくりと香織さんと二人きりでゆっくり話をしながらの帰宅となった。

 

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