第36話 朝風呂、そして朝食

 目を開くと、いつもの違う天井が飛び込んできた。
「そうか、旅館だったっけ」
 一瞬、自分がどこに居るのか分からなかったが、直ぐに温泉宿に旅行に来ていたことを思い出す。布団をどけて、立ち上がる。少しはだけていた、浴衣を着直して、窓から外が見える窓際まで近づく。
 昨日は、温泉に入った後、フルーツ牛乳を腰に手を当てて飲み干し、部屋に帰った。部屋に帰った後は、することもなく、早々に布団に入り眠ったのだった。

「うぅーん」
 昨日の事を思い出しながら、立ち上がり、伸びをする。時間は5時40分。何時も家で朝食の準備をする時間だ。今日は休みの日だけれど、身体が自然に目を覚まさせたのだ。
 さてどうしようか、朝食は7時に香織さん達が居る部屋で取る予定になっている。しかし、その時間まであと1時間ちょっとある。それまで何をどうやって過ごそうか。

「風呂にでも行こうかな」
 朝にひとっ風呂浴びるのもいいものだと思いつき、風呂が空いている事を旅館のパンフレットを確認して、風呂は5時から入れることを確認する。そして、行こうと思いついてからの行動は早く、直ぐに着替えを手に温泉に向かう。

 部屋を出ると、昨日歩いた、温泉がある建物へ続く道を進む。朝早いのが原因か、誰一人として廊下を歩いていない。
 渡り廊下まで来ると、昨日は、暗くて周りがよく見えなかったが、朝になって明るくなり、大きな杉の木が一本、山の方にあるのが見える。他にも木々が生い茂っており、秋に来れば紅葉がキレイだろうなと思わせる風景だった。

 渡り廊下を通り、風呂のある建物へと入る。売店は今の時間開いてないのか、シャッターが閉まっている。シャッターに書かれた表記によると、営業は7時からのようだ。

 男湯ののれんをくぐると、脱衣所に到着する。昨日と同じく、誰も男性客が居ない。やはり、男性の客は自分一人なのかなぁ、と考えながら服を脱ぎ、脱いだ服をカゴへ放り込み、風呂へと続くガラス扉を開く。
 中にも、もちろん誰もいなかった。シャワーで簡単に身体を洗い流して、すぐ風呂へと浸かる。朝のひんやりとした空気が顔にあたり、お湯がちょうどいい湯加減で、気持ちいい。

 存分に温泉を楽しんだ後、風呂を上がる。身体を拭いて、浴衣を身につける。洗面台で歯磨きを済ませてすっきりする。時間は6時40分、そろそろいい時間だが、家族の皆はどうしているだろうか、と考える。7時から朝食だが、皆起きているだろうか。一旦自分の部屋に戻り、着替えを置いた後、香織さんたちが居る部屋へと向かう。

 扉にノックを3回。中から香織さんの声が帰ってくる。僕は扉を開けて、香織さん達の居る部屋へと入った。

「おはよう、優くん。ちゃんと起きれた?」
 香織さんが、僕を見て朝の挨拶をする。6時50分過ぎと、朝食までもう少ししか無い時間に来たから、ギリギリまで寝ていたんだろうと考えたのか、僕にちゃんと起きることが出来たか聞いてくる。
「おはよう。朝早くに目が覚めたんで、お風呂に行っていました」
 僕は、挨拶を返し、朝早くにお風呂に入っていたことを報告する。
「朝風呂か、そりゃいいな」
 春姉さんが、歯磨きをしながら部屋の洗面所から出てくる。沙希姉さん、紗綾姉さん、そして葵の3人は、まだ眠っているようで、奥の布団3つが膨らんだ状態のままだ。

 扉がノックされて、朝食の時間と告げる宿の人達がやってきた。朝も、部屋で取ると昨日のうちに伝えてあったので、時間通りに朝ごはんが運ばれてくる。白いご飯に焼き魚、刺し身がちょっとあって、玉子焼きと海苔が添えられてある。ほうれん草のおひたしや梅干しもあって、朝から、ちょっと豪華な朝食になっている。

 食事が運ばれている間に、香織さんが眠っている3人をたたき起こす。3人共、朝を苦手としているので、ボサボサ頭のまま、寝起きが少し酷い。
「ふぁ、ごはん?」
 沙希姉さんが、起き抜けに並べられた朝食を見て言う。そして、這うようにして朝食が並べられた場所まで行く。
「「……」」
 紗綾姉さんと葵の二人は起こされた後、無言で自分の朝食が置かれた場所まで来て座る。2人は朝が、極端に弱いわけではないが、今日に限って、あくびをしたりして眠そうだ。

 全員揃って頂きますの声。昨日の夕食と違って、朝は黙々とご飯を食べる。誰も喋らないので、食器と箸とがカチカチと音を鳴らしている。特に、食事の時によく喋る沙希姉さんが、寝起きの状態で喋らないから静かなのだろうと考察しながら、食事を進める。旅館の飯は、一味違って、すごく美味しく頂くことが出来た。

 朝食を食べ終わった後、やっと目が覚め出したのか、沙希姉さんが話しだす。
「優は風呂に入ったのか?」
「うん、昨日の夜、夕ごはんの後にと、朝にも入ったよ」
 合計2回入ったことを沙希姉さんに話す。
「そうか、うーん。これから風呂に入る時間ある?」
 沙希姉さんが香織さんに聞く。1泊2日の旅だから、今日帰る予定だ。なので、昼ぐらいには旅館を出る予定である。香織さんは少し考えると、答えた。
「チェックアウトまで、まだ時間があるから急いで入ったら、入れるわよ」
「分かった、急いで入ってくるよ」

 沙希姉さんがそう言うと、立ち上がり風呂へ行く準備をしだす。着替えとタオルだけを持って、そのまま部屋を出て行く。

 残った、僕たちはゆっくりとお茶を飲み、のんびりとしていた。

 

スポンサーリンク

 

backindexnext