第32話 温泉に行こう

 待ちに待った、温泉へ行こうと計画していた休日の朝。

 僕はいつものように、朝食の準備のために早くから起きて準備をしていた。と、一番に起きだしてきたのは、なんと次女の沙希姉さんだった。

 いつもは、ギリギリまで寝ていて、起きるのが遅くなった時は、朝練が遅れるということで、朝ごはんも抜く時があるぐらい、いつも遅いのだが今日は早かった。

「おはよう、沙希姉さん」
「おーはーよう、優。朝ごはんは?」
 目を擦りながら、聞いてくる沙希姉さん。格好は起き抜けのままなのか、上はタンクトップ、下は下着だ。恥ずかしすぎて最初は注意していたのだが、最近では注意しても直してくれないので、そのままにしている。

「もう少し掛かるかな。ちょっと待っていてね」
 玉子焼きを作りながら僕は、もう少し掛かる事を沙希姉さんに伝えた。
「わかった」
 僕の返事を聞いてそう言うと、ソファーに体を投げ出して横になる。

 たぶん、遠足の前に眠れない子供と同じ精神をしているような沙希姉さんは、昨日眠れなかったのだろう。だから、今も眠そうなのに起きてきたという、沙希姉さんに対してちょっと失礼な推測をする。

 次に、母の香織さんと長女の春姉さんがキッチンへと降りてくる。
「おはよう、香織さん。春姉さん」
「おはよう、優」
「おはよう、優君」

 二人とも着替え済みで、香織さんはスーツでキッチリと、春姉さんはいつものTシャツとジーパンでラフな格好。キッチリとラフで対照的な二人だ。

「朝ごはん出来るまで、もう少し待っていて」
 僕は、焼き魚を用意しながら二人に言う。

「いつもありがとうね、優君」
 香織さんは、朝ごはんを作るととても喜んでくれるので、僕としても作りがいがあるので、嬉しく思う。

「おや、沙希もう起きてきたのか。早いな」
「おい、やめろよぉ」
 春姉さんが、早く目覚めていた沙希姉さんにちょっかいを出している。結構この二人は仲が良い。

 朝ごはんが完成間近になる。三女の紗綾姉さんと一番下の妹である葵が静かに、降りてくる。
「おはよう、紗綾姉さん、葵」

「えぇ、おはよう。優」
 紗綾姉さんは、僕の頭を撫でる。最初は、キスやハグを要求されていたが、僕が恥ずかしがって抗議した結果で、なんとか頭ひと撫でに収まった。

「……おはよう」
 葵は、最近やっと返事を返してくれるようになったが、目覚めた当初は返事を返してくれなくて僕はショックを受けていたのを思い出す。そして、全員が揃ったところで、ちょうどよく朝ごはんが完成した。

 メニューは、豚汁、きのこごはん、玉子焼きに胡麻の味噌おかか和え、そして鮭の焼き魚である。今日は温泉への出発の日に、あっさり目のメニュー。

 いつも朝は全員が揃うことはなかったが、休日の温泉出発前なので、全員揃って朝食を食べることに。
 頂きますと揃えて言って、ご飯を食べ始める。朝食の間の会話は温泉についてだ。

 沙希姉さんがきのこご飯の2杯めをお代わりした時に、こんな話になった。
「どんなところかな? 温泉」

 豚汁を飲みながら、香織さんが答える。
「本によると、結構有名な老舗旅館らしいわよ」

「混浴あるかな?」
 きのこご飯をかっくらいながら、沙希姉さんがこんなことを言う。

「あったら一緒に入ろうか、優」
 すでに食べ終わった春姉さんが、とんでもない事を言い出した。でもちょっと興味があったりする僕。

「昔の旅館だから、もしかしたらあるかも知れないわね、混浴。今は、全然男の人が入りたがらないから作ってないかもしれないけれど。でも、あったとしても入っちゃダメよ、優君」
 香織さんが、僕に混浴に入らないように注意をする。

「いいじゃないか、ちょっとくらい見せつけてやるのは、なぁ優」
 春姉さんはどうしても僕と温泉に入りたいような感じだ。しかも他人に見せつけてやろうなんて、言い出す。

「いや、ちょっと興味あるけど、恥ずかしいなぁ」
 偽りなき僕の言葉を春姉さんに伝える。

「家族風呂は?」
 春姉さんと同じく、食べ終わった紗綾姉さんがぼそっと呟く。

「家族風呂だったら、他人は入ってこられないから一緒に入っても問題ないよな。優、一緒に入ろう」
 さらに言い募る春姉さん。家族風呂だったら、春姉さんも入る気まんまんだから、まぁ問題ないのかな。

 普通は姉や妹は、兄弟と入浴なんて嫌がりそうなそうだけれど、こういう細かな価値観も違っていて、少々戸惑ったりもする。考えていると、他のみんなも、一緒に入ろうと約束させられた。

 そして、待ちに待った温泉へと出発することになった。

 

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