第31話 結末とこれから

 先日放送された番組についての詳細は、弁護士の日下さんから情報が持ち寄られた。

 どうやら都築 精児がマスコミへと情報を持ち込み、独断で行われた放送だったようだ。マスコミ関係者に都築 精児の知り合いがいて、その知り合いがマスコミで高い立場にいる人間だったらしく、実現した企画なのだそうだ。

 僕たちは事前に何も知らないのに、マスコミへと情報を流し、それが放映されたことは、やはり問題となった。都築 精児に対して日下さんを通して相手側弁護士に、注意を行ってもらった。さらに都築 精児は、家庭裁判所からも厳重注意を受けたようだ。

 調停委員の心象も悪くなっただろうと、日下さんは評した。さらに、日下さんは相手の弁護士がかわいそうなほどに、今回の裁判がやり易くなったと言っており、自信満々に裁判の事について進めてくれた。

 そして、番組を放映した放送局や、企画を通した人間に対しても僕の名前が、実名報道されてしまったことが問題となった。しかし、僕と香織さんは今の親権問題に対して頭を悩ませているので、実名報道に対しては問題を大きくしたくないと考え、訴えに出ることはなかった。
 問題が大きくなることで、さらに他の放送局、新聞などのメディアに、また情報を載せられるよりもほうっておいてほしかった。

 ただ、二度とその放送局では僕の事を実名報道しない方針を要請し、問題の番組を放送した放送局は問題が大きくならないことで安心したのだろう、それをすんなりと受け入れた。正式な書類の手続きなのは日下さんに進めてもらった。なんでも頼りになる人だった。

 更に、数日の時が過ぎ、合計すると数か月に及んだ家庭裁判所での話し合いは、結局は、香織さんの意見が完全に通った形となり、都築 精児の求める結果にはならなかった。つまり親権は動かず、そのまま香織さんが親として継続する形となった。

 この世界では基本的には働きに出るのは女性であるらしい。父親が子育てをするのが当たり前というのが世間一般の考えなのだ。そして女親が、親権を持つことはめずらしいらしい事で、後から出来た子供でも、男親が親権を持つことが普通だと考えられていたのだが、今回の場合、都築 精児の言動や行動が家庭裁判所では受け入れられず、親の資格なしと認めたようだ。

 裁判の内容は詳しくは聞いていないが、都築 精児マスコミへと独断で情報を流した事を、多少は反省する態度を見せたものの、その他の場面で、かなりの自己中心的な言動が目立ち、判決の決め手となったらしい。

 なぜ、僕が生まれたときに親権を求めなかったのか、なぜ、あんな不利になるような行動をしたのかについては詳しくは分からなかったが、とりあえず、親権はそのまま香織さんのものとなった。

 そんな経緯を香織さんが家族みんなで集まって話した後。僕は今、香織さんに抱きしめられているところだ。

「あぁ、良かった。私はまだ、あなたの親のままで居られるわ」
「僕も良かったです。香織さん」
 家族みんなが居る中、抱きしめられるのは気恥ずかしいが、僕も香織さんの子どものままでいられるのが嬉しくて、抱きしめられたままだった。

 何度となく抱きしめられたが、相変わらず、香織さんからは安心する匂いがする。
 とにかく、何とかこのままの状況を続けられるらしい。

 頭を撫でてくる春姉さんの手をうれしく思う。どうも、そのうれしく思う感情は前の世界から目覚めて以来、精神的に子供に戻ってしまったなと考えさせられた。

 前の世界では33歳を過ぎたおっさんが、頭を撫でられてうれしいと思うよりも恥ずかしいと思うだろうが、今の僕にはうれしさのほうが強かった。

「しっかし、なにかお祝いしたいな」
 沙希姉さんが、本当にうれしそうな顔をしながらそう言った。
「お祝いって?」
 僕は聞き返した。

「なにかおいしいもの食べたりしたい」
 すると紗綾姉さんが、ニコリと笑いながら僕の問いかけに答えてくれた。

「じゃぁ何か作ろうか?リクエストは?」
 何か御馳走を作ろうかと、思いみんなにそう聞く。

「いや、優君のお祝いだから、優君にさせるんじゃなくて、何か別のことにしましょう」
 抱きしめるのをやめて、肩に手を置き香織さんが言う。

 と、春姉さんがポンと手をたたきこういった。

「今度の休日みんなで、どこかに出かけるというのはどうだい?」
 一番に反応したのは香織さんだった。
「いいわね、みんなで休みの日にどこかに出かけましょう!」

 その夜、家族みんなで遅くまで休日をどうするかを話し合った。そして、その次の週みんなで泊りの温泉に行くこととなった。

 

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