第27話 家族とこれから

「やぁ、久しぶりだね優、元気だったかい」
 香織さんの元夫つまり、僕の元父親だという言う人は、ニコニコっと笑顔を絶やさない男性だった。自宅に入り、リビングに僕たちは居る。

 前の世界の父親とは別の人のようで、前の世界とそんな違いがあるのかと考えた。

「優、部屋に戻ってなさい」
 香織さんが僕に対して言うと、すかさず男が、
「いいじゃないか、優に関係する話なんだから、本人も交えて話そう」
 と言う。

「……」
 どんどんと不機嫌になっていく香織さんに、どうしたものかと考えたが、僕に関係する話かと、気になったので一緒に聞くことにした。

「僕に関係することなら聞かせてください」
 香織さんにお願いする。

 僕の前に、香織さんの元夫の男性が座り、隣に香織さんが座る。香織さんは嫌がったが、結局三人交えての話し合いとなった。

「それで、今頃どうして戻ってきたの?」
 腕を組み、言い放つ。明らかにイラついている表情に声色の香織さん。よっぽど嫌な相手なのだろう事を感じさせる。香織さんの普段は温厚な性格から、全く見せない一面に内心でビックリする僕。

「昨日優君が出ているテレビを見てね、急に会いたくなったんだよ」
 神経が図太いのか、香織さんのイラつきには気にもせず、笑顔でそう言う男。

「だからと言って、なんで今更……!」
 テーブルをバンと叩く香織さん。さすがに、危ないと思い僕は言う。
「香織さん、落ち着いて」

「男の僕に手を出すのかい?そんなことをしたらどうなるか分かっているの?」
 男は尚も、笑顔でそう言い放つ。そんな笑顔の変わらぬ男を、不気味に感じる。ふと今朝、起こった出来事を思い出す。女が男を抱きしめただけで、暴行罪で逮捕されてしまう。ここはそんな世界だった。もしも、香織さんがこの男に手を出してしまったら本当にヤバい。

 香織さんの片手を、僕の両手で包み込むようにつかみ、もう一度言う。
「香織さん、落ち着いて」

「ふぅ……」
 それで、何とか落ち着いた香織さんが話を続ける。
「何故今更、会いにきたの?」
「いや、親権をもらおうと思ってね」

「な!?」

 いきなりの言葉に驚く香織さん。僕も驚く。親権をもらう? 男のあっさりとした物言いに、そんな簡単な問題じゃないだろうと疑問に思う。
「あなたには、離婚のときに慰謝料を十分払ったわ。それに優を生んだときには既に離婚が成立していた状態で、あなたの子でもないのよ。それこそ今更の話だわ」

 話の内容から、僕は彼の実の子どもでないことが分かった。それなら、たしかに今更のような話な気がするけれど。

「今は状況が変わったんだよ、香織。君には優を十分に育てる能力に欠けている」
「何故?状況が変わった?」

「優が春に倒れたそうじゃないか、入院もしている。親として不十分じゃないか」
「……それは」
「それに今日の朝、女性に襲われたそうじゃないか」
「くっ……」

「君が親をしていると、優が不幸になる」
「ちょ、ちょっと待ってください、僕は不幸だなって感じてません。今のままで十分幸せです」
 僕の偽らざる気持ちを言う。それに、香織さんの方が記憶にある母親だし、目覚めてから一緒に暮らしもした。

 いきなり現れた元夫で実の父親でない彼よりも、香織さんを大切に感じている。それにまだ男の名前も知らないし、父親になるとと言われても見知らぬ男性なので実感がわいて来ない。

「優、君はキレイだ。昨日のテレビを見てそう思ったし、今日直接見て確信した。女しかいない、この獣の家に君を置いておくといつか、この家の女性に襲われる。今日一緒に新しい家へ僕と帰るんだ」

 この男と一緒に行くのは嫌だと、さすがに直接は言えないと思った。話題をすり替えて僕は言った。
「それでも香織さんの子供は僕だけじゃないですよ、春姉さんに沙希姉さん、紗綾姉さんに葵がいる。僕のほかに4人の姉妹が居ます。彼女たちはどうするんです?一緒に連れ帰るんですか」
「女を僕の家へ迎える?ハッ、バカなことを言うな優」
 初めて苛立ちを込めて言い放つ男。

「僕は優、君を迎えに来たんだ。僕の言う事を聞くんだ、優」

 男が伸ばす手から、椅子を下げて逃げる僕。
「そうかい、優。君は女側の立場に居るんだね」
 言うと、立ち上がって部屋を出ようとする。
「優、君が嫌がっても、香織には男を育てるのは無理だということが分かっている。女が男の子を育てる家庭なんて稀だからね。近い将来君は、僕と一緒にくるんだ」
 そう言って、男は家から出て行った。

 

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