第23話 顛末とお昼ごはん

 布団のにおいがする。早く朝ごはん作らないと…ってあれ?

 気づくと見知らぬ場所。掛かっていた布団をのける。制服を着たまま、寝ていたようだ。

「気づいたかい?優君」
「あ、あの、ここは?」

 椅子に座り顔だけを此方に向けて見ている男性に聞く。周りを見渡しなすと、真っ白な壁に白い仕切りと、壁の方には棚や鏡がある。

 少し見覚えがある、最近来たような場所だけど思い出せない。思い出そうとしていると、男性が立ってこっちに近づいてくる。手にはコーヒーコップを持っていた。

 男性はコップを傾け一口飲むと言った。
「ここは保健室だよ」

 なるほど、身体測定をした場所だった。あの時は、僕の検査を行った女性のインパクトが強く、保健室の内装のイメージはうっすらとしか残っていなかった。

「あの、なんで僕保健室で寝てるんでしょうか?」
「覚えてないかい?」

 朝、食事を作ってみんなで食べてから圭一と一緒に学校に来て……。
「そうだ、あの女の人は?」
 聞くと、驚きの答えが返ってきた。

「捕まったよ、あの後警察が来て大変だったよ」
「ぇえ?捕まった?なんでですか?」
「いや、なんでって君に危害を加えたから暴行罪だか、傷害罪だかで警察が来てお縄ちょうだいだよ。っとそれよりも、気分はどうだい?」

 捕まった?暴行罪?傷害罪?なんでと頭の中で疑問符が飛び交うも、聞かれた質問に答えることが優先かと答えを返す。

「大丈夫です。体は何ともないです」
「君は、この春に入院していたそうだから無理はしないように」

 男性はちらと顔を時計の方へと向ける。時間はもうお昼前になっていた。
「もう午前の授業は終わりそうだし、もう少しここで休むか?」
「その、お願いします。それよりも失礼ですがあなたは?」

 するとちょっと驚いたようにしながら、こちらを見る。
「おっと、こっちは君のことを知っているから、もう自己紹介したものと思っていたよ。すまない。僕は、田中忍。保険医をしている。よろしく」
 手を差し出されたので、反射的に握手をする。妙にすべすべで柔らかな手だった。

 そう言えば荷物とかどうなったんだろう。ベットの周りにはない。
「僕の荷物って、ここにあります?」
「ああそこにあるよ」

 田中先生が身体をずらして、後ろを指さすとゲーブルの上に僕のカバンが置いてあった。

「コーヒー飲むかい?」
 コーヒーポットをこちらに向けて聞いてくる田中先生。
「頂きます」
 ベットから降り、田中先生が座っていた椅子の、テーブル挟んで向かい側の席に座りなおす。ちょうど、コーヒーを入れたカップを僕の前においてくれる田中先生。

「しかし災難だったな」
 一口コーヒーを飲んで思った以上の苦味に、砂糖とミルクが欲しいなと思っていると、田中先生がそう言った。

「え、えぇ」
「昨日のテレビが原因だって先生は言ってたな。多分これからもちょくちょく言われるだろうけど街に出る時には気を付けないと今日みたいに襲われるぞ」
「やっぱり、テレビが原因だったんですね」

 僕の方は知らないが、向こうは名前を呼んでいたんでテレビで見たんだろうと見当をつける。
「いや、テレビが原因だけど、テレビだけが原因じゃないだろう、君ぐらいの美貌があるんだ。以前ストーカー被害もあったって言うじゃないか」

 僕の知らない話だった。
「僕にストーカー被害?」
「っと、僕が言っちゃまずかったかな。たしか、記憶障害があって春ごろに入院したんだろ? ストーカー被害は去年のちょうど今頃だったはずだけど」
 詳しく教えてもらおうと質問しようとすると、扉の方からノックの音が聞こえる。

「どうぞ!」
 田中先生が、少し声を張り上げて扉の方へと返事をする。すると圭一が保健室へと入ってきた。

「優、起きてるね、大丈夫?」
「おはよう圭一」
 なんとなく今日二度目の”おはよう”のあいさつを返すと呆れたような顔をする圭一。

「おまえなぁ~、のんきすぎるよ、もう大丈夫なのか?」
「大丈夫って?……うん、大丈夫だと思うけど」
 思っていた以上に心配してくる圭一に、今一度身体の調子を確認しなおして、返事をする。

「大丈夫ならいいけど」
 まだ心配そうにする圭一に、話題を変えるために言葉を投げる。
「ご飯もう食べた?」
「いや、まだだけど、一緒に食べようかと思ってパンは買ってきたけど」
 圭一はいつもパンを食堂前の購買で買って食べている。僕は、いつも朝は弁当を作って持ってきている。

「あっ!」
 驚いた声を上げた僕に、田中先生が圭一と一緒になって心配しだしそう言う。
「どうした!?やっぱり、どこか具合悪いのか?」
 心配する二人を、今は忘れて、確認する。弁当箱を。
「あ~やっぱり」
 朝女性に抱き着かれたときの衝撃で、ご飯とおかずがごちゃごちゃになっていた。

「なんだ、弁当か」
「弁当かよ~焦らすなよ優」
 安堵の表情を浮かべる田中先生と、焦った表情をした圭一。
「いや、でも今日は唐揚げを作ったのにこんな見た目じゃ、美味しさ半減だよ」
 料理の見た目の重要さを語っても二人は、共感してくれなかった

「そんなもん、食べちまえば一緒だろ。それよりも田中先生、お昼ここで食べて行ってもいいですか?」
「あぁ、良いよ、でも僕は一度職員室に行かないといけないから、君たちは部屋を出ないで待っててくれるかい」

 コーヒーを一気に煽り、立ち上がりながら言う田中先生。圭一が勝手に話を進める。
「はい、わかりました、待ってます」
「教室に戻らないの?」
 田中先生が職員室に戻るなら、僕たちは直ぐに教室に戻った方がいいんじゃないかと思ったけど圭一が反論する。

「優は平気そうだけど、念のためにね……」
 圭一が意味ありげに、意味不明な事を言う。なんの念のためなんだろう。

 そんなことを言い合っていると、田中先生が保健室を出たので、圭一と
二人でご飯を食べ始めた。

 

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