第20話 テレビ取材

「テレビですか?」

 部員が活動に参加するようになってからしばらく経ったある日。何やら話があるからと
部長に呼ばれ、話し合う。

「そう、テレビ。なんだか有名になっちゃったらしくて学校に取材の依頼が来たらしいんだ」
「はぁ…そうですか」

 いきなりな話に、どうも実感が湧かない。
「それで、部活の内容も撮りたいらしくて、佐藤さんに一応大丈夫か聞いておかないとって思って」
「部活の内容って事は、料理するところを撮るんですか?」

 僕に聞くということは、やはりそういうことだろう。眉を寄せて嫌がっているような顔になってしまったのだろう。早口に部長が答える。

「うん、佐藤さんが指導しているところも是非って言われて」
 テレビには前の記憶の時には良い印象がなかったから、あまり関わりたくないというのが素直な気持ちだけれど…

「それって拒否できます?」
「それが、先生方は学校の良い宣伝になるなんてかなりヤル気みたいでね……。もちろん、男子として考慮してもらわないといけない部分は十分注意してもらうけどね」
 部長は違う部分で嫌がったのかと、考えてくれたようだれけど。とても真剣にこちらの顔色を伺う部長。ここで断るということは、かなり難しい。

「はぁ、わかりました指導する部分の撮影お引き受けします」
「本当かい!すまないけど、お願いするよ」


***


 今回の取材の主目的は共学であるこの学校らしい。その一部に部活の取材をするという事らしい。取材を知らされてから、1週間後。

 取材班は、適当な時間に来るからと、いつものように部活動をしていればいいと部員に対して指示されてはいたが、テレビ取材という未知の体験にみんないつもよりソワソワしており、料理にも集中できてないのか所々でミスしていた。さっきひとり包丁で指を切ってしまっていた。傷は浅かったが、念のために保健室へと向かって行った。その部員は、とても残念そうな顔をしていたのを思い出す。

 そういった諸々の事情があり、今日は予定よりも時間と手間が掛かっていた。ふぅと内心で息を吐く。と同時に扉の向こう側で人が歩く音と話し声が聞こえてきた。とうとう来たかと、部員のヒソヒソ声が多くなる。パンパンと手を二回叩いて注意を引く。

「バケットに先ほどのドレッシングを表面にかけて染み込ませてください」
 カメラを気にしてか、急に真剣に作業に取り掛かる部員達。今日の料理はおいしくて
見た目も良いけど簡単に出来る、バケットサンドだ。扉が開かれ、男性のレポーターと
カメラマン、そのあとに数十人の男女が後に続く。

 レポーターとカメラマンはどちらも女性だと聞いていたが、どうやら男性に変更されたようだ。

 集団の中に見たことある人もいた。うちの学園の先生達も付いて居るようだ。見ていると、集団の中の一人がスケッチブックを部員と僕に向けて見せた。

 ”つづけて!つづけて!”

 料理しているところを見たいのだろうか、とりあえず次の指示を出す。
「ドレッシングをかけたら、輪切りにしたトマトとカマンベールチーズをこのように乗せてください」
 手元に作っておいた、トマトとチーズのバケットサンドを部員に対して見せる。すると、ぐいとカメラマンがこちらにカメラを向けて近寄ってきた。
 僕は扉から一番遠くのホワイトボードの前に立っているので、近づくとほかの部員が映らなくなる。

 チラチラと何度か視線をカメラに向けると、すぐ後ろにさっきのスケッチブックの女性が居て、”きにせず つづけて”と向ける。

 すごく、気になる。

「完成したら、お皿に盛りつけて。盛り付けは自由に」
 完成したものを見せてもらいにテーブルを回る。今日のものは簡単なので、大きく失敗しているものは無い。
「みなさんお疲れ様でした。それでは飲み物準備しましょう」

 準備を終えて、食べようとするとレポーターが話しかけてくる。
「お疲れ様でした。今日はどういったお料理を作ったんですか?」
「これです」
 言って、作ったものを指さす。

「これは?」
「バケットサンドです」
「へぇ~、一つ頂いてもいいですか?」

「どうぞ」
「わぁ!おいしいそうですね、パンの上にトマトとチーズが乗ってます」
 パンの両端を、それぞれ持ってカメラに向ける。
「それでは頂ます」
 僕のほうに顔を向けて言い、小さくお辞儀をしてから食べる。
「ん~、とてもおいしいです。トマトの酸味とチーズの濃厚なコクと香り。パンにもしっかり
味がついていますね!とてもおいしいです」
 テレビ番組に良くある、食レポのようなしっかりとしたコメントをくれる。食べ終わると、こちらに体を寄せてマイクを僕に向ける。

「おいしい料理を堪能させていただきました。学生なのにこの料理部で部員に指導しているということですが、お料理はいつから勉強してたんですか?」
「えっと、小さい時からちょっと……」
 僕の適当な答えにほぉと適当に相槌される。その後いくつか質問されるが、どうも乗り気になれずほとんどを気の抜けたような適当な答えを返していると、やっと解放してくれた。

 次は、部長に質問するようだった。
 カメラを向けられていたことで、思った以上に緊張していたのか、ふぅとため息を吐いて落ち着く。後日テレビで放映されることを考えると、引き受けたことに今更ながら後悔すると同時に、本当にテレビに出るのかと実感する。

 僕は、部長へのインタビューを横目で見ながら椅子に座りもう一度ため息を吐いた。

 

 

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