閑話09 懐かしのゲームプレイ編(佐藤優)

「うわっ、懐かしい!」

 それは、買物に向かう前、あるゲームセンター前を通りかかった時に見つけた懐かしのゲームを見たときにあげた声だった。そのゲームは格闘ゲームで昔ブームになったこともあり、僕は何度もゲームセンターで友達とプレイしたことがあるものだった。

「っと、違う違う」

 意識的には、過去のゲームだが、良く考えると、意識的には今は1996年だった。筐体の配置からも、最新のゲームだとわかる。

 ワンコイン、プレイしていこうかな。腕時計を見る。ワンコインプレイなら急いでいけばタイムサービスに間に合うぐらいの時間だと、頭の中で計算された。

 よし、やろう。

 ちょうど空いた席に、並んでいる人もいなかったので、イスに体をすべり込ませて、ボタンに手を乗せる。

 懐かしい音楽に、選択画面で一番得意にしていたキャラにカーソルを合わせる。操作の感じを確かめながら、意外に覚えているものだなと思う。
 感覚では数年前のモノだけれど、身体が勝手にコマンドを入力して、COMが操作するキャラクターに面白いように技が決まっていく。 どんどん出てきて、次第に強くなっていくCOMのキャラクターをバッタバッタと倒していく。

 やがて、EDが流れ始めると、いつの間にか後ろに人が居たのか話しかけられた。

「スゴイな、兄ちゃん」
「えっ?」

 声を掛けてきたのは小柄な女の子だった。帽子をつばが逆になるようにかぶって、腰まで届いているロングの髪の毛に、愛嬌たっぷりの大きな目と口をした女の子。身長は僕と同じか、僕よりも低いかもしれない。

 僕が座って彼女を振り返り見上げると、彼女はにっこりと笑ってつづける。
「このゲーム出たばっかりなのに、もう攻略できてる」
 人差し指をゲーム画面に向けながら言う。

「ゲーム好きなん?」
 関西弁訛りの入った言葉で聞かれて、
「あっと、えっと……そうです」
 僕は咄嗟に聞かれたことにそんな風にしか答えることが出来なかった。

「あっ、ゴメン、ナンパとかやないんやで。ただ気になっただけやから。そんなに緊張しんでもええよ」
 彼女は若干、早口でそう言うと両腕を目の前で振り、否定する。

「それよりも、私もそのゲームやってもいい?」
「あっ、どうぞ、終わったところなんで」
 言って、席を空ける。ゲーム画面はちょうどEDが終わったところだったのでちょうど良い。彼女はコインを素早く投入口から入れると、キャラクター画面でしばらく悩んで、聞いてくる。
「どれかオススメのキャラクターはおる?」
 僕は古い記憶を探り、そしてキャラクターを指さしで解説していく。

「このキャラクターはオールラウンドで初心者向けです。このキャラクターは素早く動いて攻撃を繰り出すので、爽快感抜群です。このキャラクターは火力が高くて一気に勝負を決めるのに向いています。っと時間が無いですね」
 キャラクター選択画面には時間が設定されており、見たところ残り10秒で強制でキャラクターを決められて、ゲームを進行させられる。

「じゃあ、このキャラクターでやらせてもらおうかな!」
 彼女はオールラウンドと説明したキャラクターを選択して、ゲームを開始する。初めは戸惑いつつも、何とかキーを入力して技を出していく。

「あ~なるほど、技はあのゲームと大体いっしょやな」
 そして、勝ち進めていくが、ボス一歩手前の所で負けてしまう。コンテニュー画面の数字が減っていくのを見ながら彼女はがっくしと肩を落としていた

 やがて、彼女は顔を上げて僕の方に向いて関西弁訛りでこう言った。
「ありがとうな、解説してくれたおかげでいいところまで行けたわ」
「いえ、どういたしまして」

「よければ、この後・・・」
 彼女が何か言いかけたが、僕は急に時間が気になって時計を見た。時間は既にタイムサービスが始まる時間で、今からスーパーまで走って行かないと間に合わない時間だった。
「ごめん、用事があるからもう行くね!」
 僕は彼女の返事も待たずに、走り出した。

 

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