第15話 部活動

 授業が終わり、鞄に教科書などを仕舞い込み立ち上がる。

「佐藤、ちょっと待ってくれ」
 家に帰ろうとドアに向かい歩き出そうとしたとき、担任の加藤先生が教室の前のドアから入ってきて僕を見て呼ぶ。

「話がある、ちょっと来てくれないか」
「わかりました」
 話ってなんだろう、と疑問を抱きながら加藤先生の後に付いて教室を出る。

 廊下に出て、向かい合う。相変わらずデカい。150cm対190cmだから当たり前かなと思いつつ話し始めた加藤先生の言葉を聞く。

「佐藤、部活はどうする?」
「部活ですか?」
 思わぬところからの話だったので、疑問を疑問で返してしまった。

「この学園は部活動を奨励していて、全員何かしらの部活に入っているんだ。佐藤もある部活に所属していたんだが覚えているか?」

 言われて、考えるが記憶にない。前の記憶でも、中学生の頃は特にどこの部活にも所属していなかった。

「思い出せません。いったい僕は、何の部活に所属しているのですか?」
「料理部だ」
「料理部?」

 佐藤優が料理部に所属していた。聞いて、あまりピンとこない。僕が目覚める以前の佐藤家は、家での食事のほとんどをスーパーのお弁当や出前などで済ませていたみたいだから、以前の佐藤優も料理などはしなかったのだと考えていたからだ。

 実は、料理ができたけど家族などには振る舞わなかったのだろうか。考えていると、先生が続けて説明してくれた。

「あぁ、料理部と言ってその名の通り料理をする部活だ。ただ、今はほとんど活動していないみたいだけどな」

「活動していないのは何故なのですか?」
「今の料理部は殆どが所属だけして活動には参加しないからな。先ほど話した通り、全員が何かしらの部活に入るよう強制されているから、何も所属しないというのが出来ないので部活は適当に決めて、活動には参加しないって事が結構あったりする。この料理部はそれがひどくてな」

「もしかして、僕も以前は所属だけしていたのですか?」
「そうらしい。悪いが、一度部室に行って部長さんと話をしてくれ。今居ると思うから、この紙に書いてある教室に行ってくれ」
 言われて、一枚のプリントを渡される。学校の見取り図だった。料理室という場所に、マル印でわかりやすいようにしてある。

「もし、料理部に興味が出なかったら他の部活もあるから先生に言ってくれ。それじゃ、頼んだぞ」

 料理は、好きなので部活として活動できるなら是非参加したい。そう思った僕はすぐに料理室へと向かった。 料理は学校の端の方にあり、教室から少し歩くことになった。 扉の上の教室名が“料理室”となっているのを確認して、一応ノックして中へと入る。

「すみません」
 言って、中を見渡すと誰も居なかった。先生は部長が居ると言っていたが、部長も居ないようだ。少し、待ってみようと思った。それに、教室内を見渡すときに見えたシステムキッチンがとても気になった。

「これすごい」
 ステンレス製でできた、広々としたクッキングカウンターに豊富な収納スペース。足元収納まで付いている。道具は、中にしまってあるのか見ることは出来ない。横は、業務用と思われる冷蔵庫があった。

 学校の部活としては、設備がかなり整っているのでびっくりしてしまった。と、考えていると後ろから音がしたので振り返って見た。

 頭半分だけ扉から覗きこむように出して、身体は下は出さないでこちらを伺っている女性を見つけた。

「すみません、ここって料理部ですか」
「そ、そ、そうです、けど。あの、さ、佐藤さん?」
 声を掛けるとびくっと体を飛び跳ねさせて、怯えさせてしまった。ただ、向こうは此方の事を知っているようで、“佐藤さん”と呼びかけてくる。

「あの、部長居ますか?」
「い、居ます。しょ、少々お待ちを………」
 僕の質問に答える声は、だんだんと声が小さくなっていき、最後の方は聞き取れなかったが、多分今すぐ呼んできますと言ったのだろう。言ってすぐ、立ち上がり一度足を縺れさせたような感じでバタバタと料理室を出て行った。開けっ放しになっている扉を閉めて、待つことにする。

 5分程、窓の外から校庭を眺めているとドタドタと外から大きな足音が聞こえてきた。続いて、料理室の扉が開く。

 先ほど部長を呼んでくるといった女性と、見覚えのない男性が入ってきた。彼が料理部の部長だろうか。
「待たせてごめんなさい。私がこの料理部の部長です。少し部活の話をしたいんだけれどこの後時間がありますか?」
「えぇ、大丈夫ですよ」

 制服を見ると、上級生のようだが僕に対して気遣い敬語で話してくれる。
「では、付いてきてください。桜も付いてきて」
「えっ、わ、私もですか」
「一緒に付いてきなさい」
 僕に対しては優しく、“桜”と呼ばれた女性の方は、拒否させないような口調で言って、料理室の出入り口とは別の扉を開き中へ入っていった。僕はその後へと付いてった。

 

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