第09話 見えてきた真実

 王子とその婚約者とのいざこざによってパーティは中止された。元々は生徒会主催の本パーティー、生徒会長の王子が問題の中心に居るために中止はやむを得ない。多くの貴族たち、特に新入生は不満を露わにしながらも会場を後にした。

 そして貴族たちの殆どが帰っていった後、王国お抱えの治安部隊が到着。彼らは王子自身の連絡によって現場へ招集。10名の部隊員が現場に駆けつけた。到着してすぐに彼らは、王子やアデーレ嬢に状況を聞き出していた。その後にはカロル嬢と俺にも事情を聞いてきた。王国所属ということで、王子寄りに調査を進められるかと危惧していたが少なくとも話は聞いてくれるようだ。

 俺とカロル嬢は分担して説明を行った。最初に有った出来事をカロル嬢が説明し、途中で俺が乱入してからのことは俺が説明した。そして、先ほどの王子やアデーレ嬢達は説明の途中でカロル嬢を貶す言葉を何度も繰り返し言っていたので、俺はなるべく客観的に説明するように心がけた。

 説明を聞いた治安部隊員はこの場では全てを判断できないと考えて、王城の側に建てられている治安部隊が詰めている館で引き続きの調査を進めること。そして俺は王子とカロル嬢との問題に直接は関係ないが、パーティーで起こった出来事に割って入った人物として更に詳しく事情聴取を受けることになったために、王城の方へ彼らと一緒に行くことに。

 治安部隊へ連れられて王城へ行ったはいいモノの、早々にカロル嬢の疑いは晴れた。というのもアデーレ嬢の話す内容には物的証拠がひとつも無く、決定的だったのはカロル嬢が存在しないはずの場所で、カロル嬢から被害を受けたという証言をアデーレ嬢が複数出した事。カロル嬢がある事情で学園へ行けなかった時に、物を隠された、悪口を言われた、階段から突き落とされた等など。しかしカロル嬢が学園へ行かなかったという記録が残っているために、アデーレ嬢の偽った証言で間違いないと判断された。

 アデーレ嬢が語るカロル嬢からの被害は偽言だと判明したために、カロル嬢は開放されアデーレ嬢は拘束されることに。そして、アデーレ嬢について治安部隊は嘘をついた目的は何なのか詳しく調べていくことになった。すると、取り調べを進めていく内にとんでもない事が判明していった。

 カロル嬢を陥れるアデーレ嬢の目的を探る聞き出しはきわめて困難だった。なぜならアデーレ嬢が語る事は意味不明で理解できないものばかり。自分は物語のヒロインであり、このような仕打ちを受ける人物ではないと泣き喚く。空想と現実が区別できていないようだった。薬物や魔法による影響かと考えられて調べてみたが、それらが使われた痕跡は見当たらず謎は深まるばかり。

 そして更に謎なのは、彼女の語る“イベント”と言うものには妙に整合性が取れていて聞く者にとっては真実のように感じられる情報について。

 その殆どは調べてみると間違っている情報だった。だが、彼女の語る言葉の中には真実も少しだけ含まれており、彼女が知り得るはずのないような真実が隠されていたらしい。その内容とは王族の内情について、他貴族の公にできないような秘密の事情、そしてアデーレ嬢が生まれる前に起きた大昔の事件について等など。

 そして、おかしなことにそのほとんどの内容には微妙な違いがあった。例えば彼女の語るある事件に登場する人物の名前が微妙に違ったり、語られる人物の性別が違っていたり、中には最終的な事件の結果が違っていたり。聞き取りしている人間の知識だけでは判断できないために、精査が必要な情報ばかり。

 その結果を踏まえて、裏で彼女を操る真犯人が居てその人物は他国の密偵である説というのが現実味を帯びてきた。

 更に調査が進むと、アデーレ嬢と交流のあった貴族5人の話となった。5人のうちの4人は、パーティーでの事件に居た王子の取り巻きである事がわかった。

 そして残りの一人。問題はこの人物について存在が確認できなかったということ。彼女が証言するには没落した貴族であり、最近復興した貴族の家の人間であるとのことだが、その存在について彼女以外に誰も確認したものは居ない。
 詳しく調べてみると、本当にその貴族の名は彼女の言うように没落した貴族でかつて実在していた。しかし、何十年も前に消えた貴族だし、存在自体が忘れ去られていた家名だった。もちろん復興したという事実はないし、かの家の血脈は途絶えているという記録が残っている。

 男の存在を聞いて、ますます他国が王国へ侵略するための計略のように思えてきた。存在を確認できない男の指示によって、アデーレ嬢はカロル嬢と王子との仲を引き裂く。その内に、アデーレ嬢は王子に取り入る。将来は王妃という存在になった彼女は、王族という中枢部から王国の情報を奪い取り、他国へ流す。こんな状況が容易に想像できた。

 治安部隊は、この人物が他国の密偵であると予測し捜索と情報収集が行われることになった。

 治安部隊が捜査を進めている間に、王子の方にも問題が発生していた。というのも、王様の様態が悪化して、いつ国王の位の継承が行われるか分からない状況で、彼が気にしていて口に出す言葉は「アデーレはいつ開放されるか?」という女の事だけ。

 この王子の状況は、多くの貴族たちに伝わり王国への忠誠を無くさせる結果となった。そして、数多の領を持つ貴族たちは王都から離れて自領へ引きこもるようになった。

 そんな風に王国の状況が悪くなっていく中、国境付近で謎の軍団が王都へ向かってくるのが発見された。

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