第09話 佐藤の一日

 俺の朝の目覚めは、ミヨさんと一緒に寝ているベッドの上から始まる。

眠りから覚めた俺は、左隣に人の気配がするのを感じながら目を開ける。それから、身体を起こして横に眠っていると思われるミヨさんの方へ目線を向けると、いつも俺よりも先に目覚めているらしいミヨさんと目が合う。

「おはようございます、ミヨさん」
「ん、おはよう。サトウさん」

 起床した時には必ず、目覚めの挨拶を一日の一番はじめにミヨさんと交わすのが俺の習慣となっていた。

 朝の挨拶を済ませて上体を起こしたミヨさんは、薄い灰色の布一枚で出来た裸体を隠すだけのような寝間着を身に纏っているので、女性特有の身体のラインがハッキリと分かるぐらいだった。そして、俺もミヨさんと同じような寝間着を着ているので、それが見られていると自覚してしまうと、恥ずかしくもあった。

 恋人未満の関係である男女が一緒の布団で寝るという事に、少しだけ抵抗を感じていた俺は、それとなくミヨさんに寝床を別にできないか相談してみたけれど、ミヨさんからは家にベッドが一つしか無いと強く主張されて、他に寝る場所は無いから寝床を一緒にするのは仕方がないと言い切られてしまうという経緯があった。

 そう言われてしまうと、住まわせてもらってお世話になっている俺は、それ以上は突っ込んでモノを言うこともできず、以降は毎日寝床を一緒にしていた。

 同居というよりも、同棲というような意識をしてしまう俺にとって、美人であるミヨさんと一緒に寝れるというのは、非常に嬉しく思っていた。けれど、ミヨさん相手だと美しすぎて、いつも緊張してまうという難点もあったけれど……。


***


 ベッドから起き出してきた後は、すぐに朝食を済ませる。この時に出される食事は、ミヨさんが森に入って狩ってきた動植物を使って料理をしてくれたモノ。それを、俺は毎朝用意してもらい食べている。

 朝から充実した内容の食事を、ミヨさんはわざわざ毎朝用意してくれるので、元の世界に居た時の朝食である、食パン1枚と牛乳だけ、という様な質素な生活を送っていた過去に比べてコチラの方が充実していると断言できるぐらいだった。

 しかも、女性に作ってもらう手料理というだけでもポイントが高いのに、毎食の料理がどれもが非常に美味いという、料理上手なミヨさんだった。

 そんなわけで、朝食の時から充実してた生活を過ごせていた。

 朝食をミヨさんと一緒にして食べ終えると、ココからはミヨさんと俺とで別々の行動になる。俺は、ミヨさんから教えてもらった異世界の知識を頭に覚え込むために以前に習った事の復習をしたり、ミラさんの家の各部屋を掃除して回って、家の中を綺麗にしたりしているのが主な俺の日常だった。

 一方、ミヨさんは食料を確保するために森の中へ狩りに入っていったり、森の奥で魔法の修行をしていると彼女から聞いていた。

 時折、家の中に居る俺の耳にも、森の奥の方から大きな破裂音や、爆発音等と共に、ピカッと光る何かが見えたりしていたので、ミヨさんはかなり大規模な魔法の修行をしているらしい、と俺は考えていた。

 こんな風にして、あっという間に午前中の行動は終わり。

 そして午後からは、元の世界への帰還する方法についてアイデアを考えてみたり、午後からもミヨさんの家の中の掃除を行ったり、異世界について教えてもらった知識の復習をしたりと、午前中の行動と似たような事を繰り返していた。

 そんな中、家の中に引きこもってばかり居るのは駄目だと考えていた俺は、森に居るであろう獣などの存在に注意しながら外に出てみたり、家の周りを歩いてみたりしていた。

 家の周りを回るだけと言っても、辺りは整備されていない凸凹の地面に、鬱蒼と生えた草花、そしてなによりも、注意を続けても何が起こるか分からない危険地帯の森の中、という事で外に出るだけでも大きな緊張感があって、結構なカロリーを消費して運動になっているだろう事は分かった。これで、運動不足も解消できるだろうと俺は確信していた。

 そして、日が落ちてきて夕方になる頃。

 狩りを終えたミヨさんが、狩った獣の肉を肩に担いだり、魔法で浮かせて持って戻ってくる。そんなミヨさんが家に入ると、すぐに夕食の準備を始める。そして直ぐに完成させると、夕食の時間となった。

 夕食を食べ終えると、ミヨさんから直々に異世界の知識を教えてもらっていた。今までに習ったことを考えてみると、やっぱり元の世界と大きく違って知っておいた方が良い知識ばかりだった。

 例えば、この世界では男女出生する比率が大きく偏っていて、女性が生まれる確率が非常に高くて、男性が生まれる確率は非常に少ないという。

 という訳で、この世界で男性である人は非常に希少であると見られていて、性別が男性であるというだけで大事に保護されるのが一般的だという。そして時々、男性を狙った盗賊団も居るらしく、迂闊に一人で外を歩いていては危ない、という事は小さな子供でも知っている常識だという。

 その他にも、魔法という能力の存在が知られていながら、その力は忌み嫌われているモノだということ。

 魔法を使えると分かった人は、人里から強制的に追い出されるか、殺されるか。かなりシビアな状況に追い込まれるという。その大本の原因は、過去に存在したとされる魔王が世界を滅ぼしかけたという歴史に有るらしい。

「詳しくは分からないけれど、大魔法を使える魔王が世界中に対して呪いを掛けたから、この世から男性の数が大幅に減っていったと言われている」

 魔法を使える人であるミヨさん本人から、魔法が使えると言う原因で迫害されているという事実を語ってもらった。

 このようにして、俺は夕食後に少しずつ異世界の知識を学んでいった。

 そして就寝の時間になれば、またミヨさんと一緒の布団で寝るというのが俺の生活の基本的な一日の流れだっだ。

 

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