第08話 初めての客引きと結果

 表通りへ向かう前に、建物の影でまずステータスを確認した。
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ユウ
Lv.16
STR:50
CON:49
POW:56
DEX:63
APP:32

職業:冒険初心者
EXP:300
SKILL:10

スキル:全力切りLv.10
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 職業を付け替えてみる。職業を給仕にするように、イメージで操作する。

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ユウ
Lv.1
STR:50
CON:49
POW:56
DEX:63
APP:32

職業:給仕
EXP:300
SKILL:10

スキル:全力斬りLv.10
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 Lv.1に戻ったのと職業の欄が給仕へと考えたとおり変化したが、ステータスの変化は無いようだ。客引きの間は、給仕を職業にセットしておこうと考えた。

 改めて、表通りへと出た俺。まず、客となりそうな人を見極めるために、同じように客引きをしている人物を観察することにした。客引きなんてしたことない俺は、どんな風に客引きをすればよいか周りを観察して参考にしようとした。
 表通りに出て客引きをしている人物は、見える限り十人ぐらい。その中で、三人が男性なので、彼らを注意深く見ることにする。

 観察している彼らが、客を店へと引いていく。彼らは単純に声を掛けるだけで、特になにか特別なことはしてないようだ。これ以上、観察だけしていてもしょうがないので、俺も彼らと同じように、まず声を掛けてみる。

 ちょうど目の前に、女性が一人。
「お客さん、朝食どうですか?」
「朝食? さっき食べたところなんだ、ごめんね」
「そうですか、ありがとうございます。また今度おねがいします」
 まぁ、一人目から捕まるとは思わなかったけれど、残念な気持ちが広がる。しかし、ダメだったけれど、返事はしてくれたから、そんなにダメージはない。次に気持ちを切り替える。
(レベルアップしました。)
 へ? 急なアナウンスにびっくりしながらも、声を掛けただけで失敗しても経験値は入ることがわかった。しかも、レベルアップまでしたので、失敗を恐れずにドンドンと挑戦していこうという気持ちになれた。

 また、目の前に女性が歩いてくる。長身で褐色の女性だ。
「お客さん、朝食どうですか?」
「調度良かった、今食べようかと思っていたところなの。案内してくれる?」
 まさか二人目で成功するとは。そんな風に考えていると頭にアナウンスが流れる。
(レベルアップしました。)
 客引きが成功すると、さらに経験値が入る? とりあえず、お客さんを案内しなければ。
「お店はこちらです」
 お客に先行して、道を進む。付いてきてくれているのを確認しながら、お店の宣伝も忘れない。
「パンケーキが美味しいですよ」
「そうですか、それは良いですね」

 扉を開けて、中へと案内する。
「いらっしゃいませ」
 アレンシアが、カウンターで掛け声を出す。客をテーブルへと案内して、 俺はメニュー0を取りにカウンターへと向かう。
「すごい、こんなに早くお客さんを引いてきたのね」
「とりあえず、注文とってきます」
 お店に来た客に感動しているアレンシアを横目に見て、俺はメニューを片手に持って注文を取りに行く。
「メニューをどうぞ、注文はどうします?」
「じゃぁ、オススメのパンケーキのセットをちょうだい」
 ニコリとカッコいい笑いを俺に向けて、道すがらおすすめしたパンケーキのセットを頼む褐色の女性。
(レベルアップしました。)
 またか、と思う。注文を取ることを成功して経験値が入ったのだろう。給仕の職業についても、冒険初心者と同じくレベルアップの必要経験値がバグって、少しの経験値でもレベルアップがしやすくなっている。レベルアップの事は、頭の隅に追いやって、注文を受ける。
「ありがとうございます。少々お待ちください」

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 数十分後、店は女性の客で一杯となった。大繁盛というやつだ。何故か、あの後、客引きをするごとに客がすぐ捕まるようになって、客が寄ってくるようになってからは、食堂アフェットはテーブルが全て埋まるぐらいの盛況ぶりになっている。
「注文、承りました。少々お待ちください」
 最後に残っていた席に、女性客を案内して注文を取り終えた俺は、アレンシアに料理はまだかと聞きに厨房へと向かう。

「ちょ、ちょっと待って! 今、急いで作っているから!」
 アレンシアは、すごく忙しそうにしているので俺も厨房に入り、簡単な仕込みの手伝いをする。アレンシアの指示を受けて、野菜の皮をむいたり、切ったり、盛り付けしたり。それでも足りないのか、食堂から注文は、まだ来ないのかという催促の声が聞こえてくる。

 超特急でアレンシアが料理を仕上げていく。俺は、それを間違いなく客へと配膳していく。その繰り返しを二十五回程こなすと、テーブル席全員に食事が行き渡り、少し落ち着く。すると、次はドンドン食べ終わった客が会計に来るので、次はチェーナさんがてんてこ舞いになりながらお金を受け取っていく。
「ありがとうございます、五百ゴールドになります」
「はいよ」
「ありがとうございます」
 お客が店を出る時にも、俺は掛け声をかける。
「ありがとうございました!」

 そんな風に、朝から昼、そして夕方まで繰り返し、客を案内する。体力的には、まだまだ大丈夫だったが、精神的にすごく疲れる。

 やっとの思いで、夕方になると俺の担当の時間が終わる。

「お疲れ様でした! すごく盛況しましたね」
 今まで、会計をしていたチェーナさんがカウンターから出てきて俺にねぎらいの言葉を掛ける。
「ほんとうに疲れました。初日からこんなに疲れるなんて」
 台詞の通り、こんなに疲れるとは思っていなかった。これも、客引きが思いの外、上手く事が運んだからだった。俺はステータスを確認する。


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ユウ
Lv.100
STR:69
CON:78
POW:75
DEX:112
APP:181

職業:給仕
EXP:2320
SKILL:109

スキル:全力切りLv.10
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 APPポイントが、かなり高くなっている。もしかしなくても、客引きが想像以上に上手く行ったのはこのお陰だろうか。それにLv.100と限界値になっている。「Make World Online」では、職業の限界値はLv.100に設定されている筈だから、給仕のレベルは限界状態だ。

「お母さん、今日の売上どうだった?」
 お金の管理は、チェーナさんがしていたから今日の売上はどれ位か、把握しているはずだ。
「今日の結果はなんと!」
「「なんと?」」
 俺と、アレンシアの声が重なる。
「0でした!」
「「へ?」」
 またしても、俺とアレンシアのへんてこな声が重なる。
「な、なんで?」
 アレンシアが、もっともな疑問で問う。
「今までの借金の返済をしたら、今日の売上分全部持って行かれちゃいました。結果儲けは0になっちゃいました。あ、ユウさんのお給料一万五千ゴールドはここに分けてありますから、明日もよろしくおねがいしますね」
 呆然となっているアレンシア。その横で、同じく呆然としながらもちゃっかりと給料を受け取る俺。
「明日から頑張りましょう!」
 空元気で振る舞うチェーナさん。うなだれるアレンシア。そんな風に、初めての異世界(?)での仕事をこなし終えた俺だった。

 

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