第06話 朝食

「もう少し、聞きたいことがあるけれど、私はそろそろ仕事に行かないと。ユウは、この後どうします?」
 マリーが、テーブルから立ち上がりそう言う。仕事とは、昨日の門番の事だろうか。
「そうですね。どうしよう」
 昨日と同じように、モンスターを狩って、ドロップアイテムを狙おうか。しかし、昨日のペースだと、二十五万ゴールドを貯めるためには、どれほどの時間がかかるか。嫌、昨日は一時間ほどしか狩っていないから、一日費やせばもっと稼げるかも。

「行くところがなければ、暫くの間は、うちに泊まると良いですよ」
 家に泊めてもらい食事まで頂いて、かなり助かったが、マリーの親切心に、これ以上頼っていいものかどうか。
「とにかく、まだ聞きたいことも有りますから。家に居て良いですですよ。私は行きますね」
 俺が悩んでいるうちに、マリーは言うことを言って、さっさと部屋を出て行ってしまった。とりあえず、親切心に頼らせてもらうことにする。ということで、寝床は確保できたが、後はお金の問題をどうするかだ。お金稼ぎをどうするか考える。
「よし、とりあえず外に行くか」
 部屋の中であれこれ考えていても、お金の問題はどうすることも出来ないので、とりあえず外にでることにする。

 マリーの家から外へ出ると、昨日行ったギルドの前まで歩いて出てきた。ふと、昨日感じた違和感の正体を知った。男性が少ないのだ。通りに居る人間は女性ばかり。何人か、呼び込みをしている男性を見つけることができるが、それ以上に女性が多い。
 そんな事を観察しながら、街を歩く。と、クーと腹が鳴った。朝から何も食べていないことを思い出す。しかし、お金は昨日稼いだ千ゴールドのみ。昨夜は、マリーのおかげで、お金を使わないで済んだので、千ゴールドがより貴重に感じられ、朝食にお金を使うのが勿体無く思えてしまった。
「うーん、どうしよう。どこか、お店に入って朝食を食うか。それとも、そのまま狩りに出てしまうか」
 腹が減ったまま狩りに出る危険性もあると考えたが、どうしてもお金を使うことがもったいなく感じられ、迷う。そんな風に迷っていると、声を掛けられた。

「道の真ん中にボーっと立ってどうしたんですか?」
 女性の声だった。声のする方向へ顔を向けると、身長160cmぐらいの小さな女性が立っていた。こちらを興味深そうに見ている。
「朝食をどうしようかと考えていたのです」
 俺は正直に、今の状況を彼女に伝えてみた。
「朝食ですか! いいところが有りますよ。付いてきてください」
 女性は一言そう言うと、くるりと身体を回し、通りを歩き出した。
「ちょ、ちょっと」
 俺は慌てて、彼女に声を掛けたが、反応無くどんどん歩いて行くので、仕方なく彼女の後を付いて行く。彼女は、通りをドンドンと歩いて行き、こちらに振り返りもしない。少し入り組んだところへと入って行く頃になって、もしかして朝食を食べられるお店は嘘か、女性は自分を騙しているのかと警戒するに至り、逃げようかとした時、彼女は、歩き出した時と同じようにくるりと身体を回して、突然言った。
「つきました。ココですよ」
 路地をちょっと入った所だから、表の通りからは全然見えないであろう建物。こんなところに本当にお店があるのか? 疑わしげに見る俺に気づいたのか女性は、両手をバタバタと交差させ、弁明する。
「ほ、本当ですって。美味しいですよココ」
「なんて言う店何ですか?」

「アフェットってお店です。この店の朝食は本当に絶品なんですって。とりあえず、入って食べてみてください」
 女性の言葉を一度信じてみるかと思い、千ゴールド位ならすぐ稼げるさと自分に言い聞かせ朝食を摂ることを決めた。彼女は、俺が店に入るのを今か今かと見ているので、俺は扉を開けて店へと入った。
「あ、いらっしゃいませ」
 明らかに暇そうに椅子の上でボーっとしていた女の子が、お店に入ってきた俺に気づいて挨拶を投げかける。店の中には、お客一人居ないので良いのだが、大丈夫だろうか。テーブルが幾つか配置されていて、一応、食事処のようだが本当に美味しい店なのか? 俺は更に疑い深く、後ろからついて入った女性に目線を向ける。

「あれ、お母さん。どこかに行っていると思ったら客引きしてたの?」
 お店の女の子は明らかに、後ろから付いてきた女性にそう言った。お母さんと言ったか。
「貴方、お店の人?」
 俺は、この店に案内した女性に言葉短く問いかけると、彼女はニコリと誤魔化すように笑う。
「良いお店ですよ!」
 更に力説された。騙された。普通に客引きされて連れて来られたというわけだ。仕方なく、朝食をこのアフェットで取ることにした。
「あー、じゃぁメニュー見せてもらえる?」
 出入口に一番近い席につき、メニューを求める。
「どうぞ、メニューです」
 女の子に渡されたメニューを見て、値段を確認する。価格はぼったくりじゃないだろうかと見てみたが、この世界の平均がどれぐらいか分からないので、仕方なく百ゴールドと朝食セットの中で一番値段が安いパンケーキのセットを頼む。百ゴールドなら、十分払える額だった。
「注文ありがとうございます。すぐに作りますのでお待ちください」
 女の子は、返されたメニューを持ち、店の奥へと走って行った。どうやら女の子が料理を作ってくれるようだ。俺をココに案内した女性がニコニコと笑いならがら、立っている。
「接客しましょうか?」
「いえ、結構です」
 女性は手持ち無沙汰なのか、話しかけてくるが、俺は正直騙された気分で彼女に良い感情が無かったので、そっけなく返事を返す。

 

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