第11話 巷で評判のお店、アフェット

 俺が雇われて仕事をこなしていくうちに、アフェットはこの街でかなりの評判になった。
 かなり腕の立つ料理人であるアレンシアが居るこの店で、客が来ないことが不思議だったのだ。少々、立地条件が悪いこのアフェットだったが、最初のキッカケさえあれば、繁盛していただろうと思われる。俺が雇われることで、繁盛するキッカケにはなったのだろう。俺が雇われて三日目以降は、固定客や料理の評判を聞いた客達が、直接アフェットへと訪れるようになり、店は客引きがなくても繁盛するようになった。
 客達が来るようになってからは、俺とアレンシア、チェーナさんの仕事量は、かなりのものになった。俺は、スキルのお陰か、給仕のレベルが限界値に達しているためか、上手く仕事をこなしていたが、アレンシアやチェーナさんは、かつて無い程の仕事量にてんてこ舞いになっていた。俺が手伝いに入っても、限界ギリギリまで働かされるようになった為に、アレンシアは友人を頼ることにしたらしい。

 そして、今日からアフェットに新たに二人の従業員が来ることになった。二人共、アレンシアの友人らしい。

「はじめまして! オデットです」
 元気な挨拶をしてくれる少女。真っ赤な長髪をしている。かなり可愛らしい美人である。

「……はじめまして、シモーナです。よろしくお願いします」
 オデットとは逆に静かで丁寧な挨拶をしてくれる少女。黒髪の短髪に、身長も小さい。彼女も、美人と言っていいような美貌をしている。
この街にきてから出会った女性は皆、美形ばかりだ。

「ほんとに男の人が働いているんだね! 私、びっくりしちゃった」
 俺を見て、オデットはそんな事を言う。
「俺が珍しいか?」
「うん、珍しい」
 やはり、この世界では男が珍しいらしく、オデットはそんな風に俺を珍しいと言う。そして、ジロジロと観察するような目で俺を見ている。地味にシモーナも、オデットの影で興味津々な目で俺を観察している。

「はい、さっさと準備に取り掛かって。すぐに店を開けるのよ!」
 パンパンと手を叩きアレンシアが注目を集めて、そう言う。確かに、何時も店を開けている三十分前である。準備をしているうちに、店を開ける時間が来るだろう。アレンシアに指示された通りに動き、下ごしらえに取り掛かる俺たち。

 オデットとシモーナの準備の動きは、かなり機敏で手慣れた動作をしている。さすがアレンシアの頼った人物である。これなら、客が大勢来ようと大丈夫だろうと感じさせる。

「じゃあ、何時もどおりユウは給仕をしてね。オデットもユウの手伝いで給仕をして頂戴。シモーナは私と一緒に料理を。母さんは、会計ね。じゃあ、今日もよろしくお願いします」
 店を開ける時間になり、アレンシアが配置の指示を出す。俺はいつもの様に、給仕だ。店を開けて、開店待ちをしていたお客さんを店内へと案内する。
 朝の時間。店を開けてから十五分もすると、テーブルは満席になり、朝食を求めて来る人達が店の外に行列を作り始める。

「今日は、昨日より多いかも」
 行列の長さが、昨日よりも長くなるのを見て、そう感じる。厨房に料理を急かして、作らせる。配膳を間違いなく進めて、料理が食べ終わった人から、直ぐに席を離れてもらう。

 朝食を求める人が、少しずつ途切れた頃に、次は昼食を求めて来る人達が行列を作り始める。休憩時間は少しの間しか無い。

 そんな風に、夕方までの時間を仕事で潰す。そして、終わりまで突っ走るようにして夕方を迎える。

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「あー疲れた」
 オデットが、テーブルに突っ伏して、言葉を漏らす。
「お疲れ様、オデット」
 アレンシアが、ねぎらいの言葉を掛けて、水の入ったコップを渡している。二人は友人同士だと聞いていたが、かなり親しい関係のようだ。そんな風景を横目で見ながら、俺は今日の給料についての話をチェーナさんとしていた。

「今日は、三万ゴールドをお給料として支払います」
「そんな大金、いいんですか?」
 ここ数日、給料の値段が上がり、とうとう当初の給料の二倍の金額だ。
 「お仕事に見合った料金ですよ。さあ受け取ってください」
 このまま順調に行けば、目標の二十五万ゴールドは直ぐに貯まるだろう。そして、冒険者身分証明証を発行してもらえるだろう。

 そして、お金を貯めるための仕事をこなす日々が数日続いた。俺はその間、取得した職業の全てのレベルを上げられるだけ上げた。今の職業の状態はこうだ。
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冒険初心者 Lv.100
給仕 Lv.100
料理人 Lv.100
小商人 Lv.100
農民 Lv.100
役者 Lv.100
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 どれも、レベルを上げるのには苦労しなかった。冒険初心者のレベルは、夜、外へ狩りに出かけてレベルを上げた。数十匹モンスターを狩ったら限界値までレベルが上った。小商人のレベルは、買い物をするごとにレベルが上がった。数日間、買い物を繰り返したら、限界値まで到達した。農民は、マリーさんに農具を借りて農業の真似事をしたら、レベルが上った。役者は、何かの役を演じるように一人で色々試したらレベルが上った。

 そんな日々を繰り返したら、ようやく目標の二十五万ゴールドを大きく上回る三十万ゴールドを手に入れることができた。今からギルドへと向かうところである。

 

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