第09話 夕食の語らい

 アフェットでの仕事を終えた俺は、表通りで少し買い物をした後、マリーの家へと帰ってきた。

 仕事の途中や、買い物をした時に分かったことなのだが、職業を取得する条件は、仕事を請け負う以外にも、なにかしらの経験をするだけでも取得できるようだった。例えば、先ほどの仕事中にアレンシアの仕込みの手伝いをして、俺は“料理人”の職業を取得していた。忙しい中でしっかりと確認できていなかったが、アレンシアの手伝いをしたことで取得した職業だった。

 他にも様々な職業を取得していたので、改めて取得した職業を確認してみる。頭のなかで、ステータスを呼び出す要領で、取得した職業を表示せよと念じる。
——————
冒険初心者 Lv.16
給仕 Lv.100
料理人 Lv.1
小商人 Lv.1
農民 Lv.1
役者 Lv.1
——————
 目の前に、ステータスが表示されるのと同じように、取得した職業が表示された。小商人の職業は、買い物をした時に取得した職業だ。農民や役者は、条件が分からないが、いつの間にか取得していた。これらも、何かしらの経験を積んだことで発現した職業なのだろう。

 もう一点分かったことがある。職業をステータスにセットしなければ、レベルアップはしないということだ。今の状態だと、給仕のLv.100のみが突出して、他はレベルが低いままだ。これは、今日一日中、給仕をステータスにセットしていて、他の職業をセットしなかった影響だろう。経験値は分配されない設定のようである。

 マリーが帰ってくる前に、夕食を準備してみる。昨日はマリーが用意したパンとチーズだけの簡単な夕食だったので、何か調理したものを食べたいと考えた俺は、料理人の職業のレベルアップも兼ねて、夕食を作ることにしたのだった。食材は、帰ってくる途中に買い集めたものを使う。

 職業の料理人をステータスにセットして、買い物してきた食材を使い、作り始める。簡単に切ったり焼いたりするだけのものを予定していたのだが、料理人の職業をステータスにセットした影響か、頭のなかに料理の手順が浮かんだので、その通りに食事を作り始める。

 マリーが帰ってくる頃には、食事も作り終わった。予定していた料理とは違ったが、料理人の職業によって頭に浮かんだ手順通りに作った料理だ。料理人のLv.27までレベルアップしていた。さすがに、Lv.100の限界値までは行かなかったが、通常では考えられないぐらいの速度でレベルアップしているであろうと考える。

「ただいま、ユウ。夕食を作ってくれたんですね」
「ちょうど、今出来たところですよ」
 出来上がった料理をテーブルに並べている横をマリーが覗き込む。仕事終わりにすぐ帰ってきたのだろう、鎧を着たままだ。

「今すぐ、着替えてきます」
 部屋の奥へと行くマリー。言葉の通り、自室で着替えてくるのであろう。食事を並べ終えた俺は、その間テーブルに座って待った。


「おまたせしました、豪勢な夕食ですね」
 ラフな格好に着替え終わったマリーが戻ってきた。直ぐにテーブルについて、食事に興味津々のようだ。
「簡単なものですが」

「おいしい! すごく、美味しいです」
 直ぐに食べ始めたマリーが美味しいと連呼して褒めてくれる。作った甲斐があったというものだ。

 夕食を食べている間、気になった事について聞いてみた。
「この街の男性って、少ないですよね」
 アフェットの客、全てが女性客だったことから感じた事だった。通りにも男性は、ほとんど居らず、客として捕まえることが出来なかった。この街に男性が少ない事を疑問に思っていた。

「この街だけでなく、この大陸には男が少ないんですよ」
 マリーが語る世界。どうやら、この世界には男が少ないらしく、俺は男性というだけで貴重な存在なんだと言われた。しかも、冒険者を職業にした男性について、マリーは話にしか聞いたことがないらしい。世界中を探せば居るかもしれないが、とても貴重な存在らしい事がわかった。この世界の男性のことについて更に詳しく聞いてみると、マリーは詳しく語ってくれた。
 男性は、普通街の中で守られていて外には出ないそうだ。街の中で知的労働を担う存在らしい。ギルドのカウンターに居た男性を思い出す。
最初、俺が女性に間違われたのは、外から男性が来るなんて、しかも一人で居るなんて思いもしなかったからだそうだ。

「職業を付け替えられるですって? そんな事が可能なのですか?」
 職業について聞いてみると、ココでも食い違いが合った。俺が自由に職業を付け替えられると話すと、職業は、生まれた時に決められた固有のもので、俺のように自由に付け替えることは出来ないとマリーは語った。職業が変わるのは、ある条件を満たして上位職になる場合のみ。それ以外は、変えることが出来ないそうだ。
 男性の冒険者が居ないのも、生まれた時に男性の職業に冒険初心者が付くことが無いからだそうだ。そういう意味で、やはり俺は貴重な存在のようだった。

 逆にマリーが疑問に思っていた、俺のことについて、改めて色々と聞かれた。
「本当はどこから来たのですか? ヌエットですか? もしかしてアヌール国?」
「昨日も言いましたが、地球の日本という所からです」
 ゲームである「Make World Online」をプレイすることで迷い込んだこと、ログアウトできないこと、昨日語ったことを改めて説明するのだが、俺自身わかっていないことが多すぎて、上手く説明できなかった。そんな説明だからだろうか、マリーも理解できていないようだった。しかし、俺は何度も何度も説明することで、マリーに理解してもらおうと頑張ってみた。

 そして、マリーと話し合うことで情報を収集して、少しずつ世界を理解していった。

 

スポンサーリンク

 

back index next