プロローグ

「やった、やった、やった!」
 発売前から何かと話題で、超人気のVRゲーム「Make World Online」。ダメ元で、先行体験版の権利に応募した。応募数が公式発表で1521万人居たのに対して、1000人のみ手に入れられる当選枠に見事俺は入り、VRゲーム「Make World Online」の先行体験版を手に入れた。
 一生分の奇跡を使ったような気分だった。
 1000人枠内当選者発表当日には、大はしゃぎしたのを覚えている。今日はそのソフトとハードの受け取りで、会社の有給を使い一日プレイする準備を進めていた。先ほど、やっとハードの設置が終わり興奮冷めやらぬまま、ヘッドマウントを頭に装着し専用のベットに横たわって、ゲームを始める。
 身体の感覚が、薄ぼんやりとなっていく。眠りに落ちる、少し前の状態のようだ。

「ようこそ「Make World Online」へ、いらっしゃいました」

「おぉ~」
 VRゲームが初めての体験で、思わず声が出る。目の前には、スーツにメガネを掛けた髪の長い女性が立っていた。
「まずはじめに、「Make World Online」キャラクターを作ってください」
 案内してくれる女性の言われるとおりに、キャラクターを作る。出身国、身長、体重、性別を正確に入力し、身体スキャンを掛ける。その後、身体スキャンしたデータからキャラクターを調整して作る。だけれど、調整できるデータに制限があり、あまり自分とかけ離れた顔にはできないような仕様になっているので、ほどほどの所で調整を終える。

「これで、よろしいでしょうか」
 目の前に自分の顔が表示される。鏡で見る自分の顔とは、またちょっと違い違和感があったが、良しとする。
「これでいいです」
 言いながら、空中に浮いていた”YES”、”NO”のボタンのYESを押す。

「では、「Make World Online」について説明を行います」

 キャラクターが語り始める。
「”Make World Online”では、道具のメイキングはもちろん、様々なスキルの組み合わせを作ったり、職業や仲間を作っていくことが出来ます。更には、歴史を貴方自身がメイクしていくことができるのです。さぁ、貴方は無限に広がる可能性があるメイキングを楽しんでください」

「操作説明、操作はすべて思考による判定で行われます。ステータス画面の表示は”ステータス”と唱えてください。ステータスを消すときは、”ステータス”とステータスボードが表示されている時に唱えてください。ログアウトをするときは、”ログアウトします”と頭のなかで唱えてください。何か問題が会った場合は、”コール運営へ連絡”もしくは、”強制終了してください”と頭のなかで唱えてください。以上、操作説明でした」
 パチンと目の前が真っ暗になった。

***

 いきなり場面が転換し、いつの間にかベットで横になっていた。木でできた建物にの中、少しお粗末な出来のベットである。俺は起き上がり、周りを見回す。
 室内はベッド以外何も見当たらない。ベッドから降りる。

 さっそく自分のキャラクターについて確認を行う。

「ステータス!」

 音声入力ではなく、頭のなかで言葉を思い浮かべればいい思考操作と、先ほどの女性の説明に有ったが、なんとなく叫んでステータス画面を開く。

 目の前に、ステータスボードが出現する。
——————
ユウ
Lv.1
STR:10
CON:12
POW:10
DEX:15
APP:17

職業:冒険初心者
EXP:0
SKILL:1

スキル:なし
——————


 お、APP(外見)が高い。
 現実世界において、中くらいの顔の良さを自負しているオレは、まず目についた、APPのポイントの高さに喜ぶ。

 次に、高いのはDEX(敏捷性)の15ポイント。その他は、平凡な数値。経験値はまだ無いか。ステータスボードに表示されたポイントの他にも確か、隠し能力として幾つか能力値が設定されているはずだけれど、やはりステータスボードからは見えないか。
 説明書に概要だけ書いてあった”隠しステータス”が見えない事を確認する。

 ステータスを確認し終わり、頭の中で”ステータス”を消すようにと唱えると、ステータスボードは目の前から消えてなくなった。
「ちゃんと消えるね、良し良し」

 次に確認するのは、左の腰にぶら下がっている道具袋。麻のようなもので作られている、その袋に右手を突っ込む。中から、鞘に入ったショートソードと呼ぶに相応しい剣が一本出てくる。袋の大きさに対して、明らかに大きな剣が出てきたがそこは突っ込まないでおこう。
 剣の他には、袋を探っったが出てこない。初期アイテムはこれだけのようだった。

 部屋の中を見渡し、扉を見つける。

 さっそく外に出ると、まずは太陽の光が目に飛び込んでくる。暖かな日差しが、あまりにもリアルで手を顔にかざして、太陽の光を遮って辺りを見回す。どうやら小さな村のようで、石とわらの屋根で出来た建物がポツポツとある。村の中には木が生い茂っていて、この村は森の中にあるのだとわかる。

 これが最初の村かな。説明書に書いてあった、ゲームを始めると開始される最初の村だ。

「おはよう」
 恰幅の良いおじさんにいきなり話しかけられる。

「あっ、はい、おはようございます」
 俺はビックリしながらもなんとか返事を返すと、おじさんはにっこりして俺に言った。
「今日は狩りに行くのかい?」

「えーっとそうです、狩りに行ってきます」
 まずはキャラクターの強化から。レベルアップのためにモンスターを狩りに行こうと思うので、狩りに行ってくると言う。

「あなたは、初めてだから、あちらの狩場がオススメだよ。気を付けて行ってらっしゃい」
 男性はチュートリアルなのか、狩場の場所を指を差して場所を教えてくれている。そう言うと、歩いて行ってしまった。行ってらっしゃいなんて久しぶりに聞いた言葉だなと思いつつ、
教えてもらった狩場へとさっそく足を向ける。

(レベルアップしました。)
「おっと、レベルアップか」
 最初に見つけた頭に”アントLv.01”と表示されているモンスター。雑魚モンスターと思われる、アリのような外見をした虫をショートソードで一振りして切っていくと、頭のなかに、ファンファーレとともにその言葉が頭の中に浮かんだ。どうやら、レベルアップしたようだ。
 ショートソードを振り回したせいで出ていた汗を拭い、一息つく。
「ステータス」
 ステータスボードが目の前に浮かぶのを見ながら、ステータスを確認する。


——————
ユウ
Lv.2
STR:11
CON:15
POW:11
DEX:19
APP:17

職業:冒険初心者
EXP:20
SKILL:1

スキル:なし
——————

「よしよし、上がってる」
 ステータスが上がったのを確認して、満足気に言う。この瞬間がRPGの醍醐味だよななんて、思いながらステータスボードを消して、次のレベルアップ目指して、モンスター狩りを再開する。

 5分後、また頭の中にファンファーレが鳴る。
(レベルアップしました。)
「へ、もうレベルアップ…?」
 ”Make World Online”の前情報だと、確か必要経験値はかなりキツ目に設定されているって話だったけれど、先ほどのレベルアップからそんなに時間もかからずに、頭のなかにファンファーレが鳴り響く。
 早速ステータスボードを確認する。


——————
ユウ
Lv.3
STR:12
CON:18
POW:14
DEX:24
APP:19

職業:冒険初心者
EXP:40
SKILL:2

スキル:なし
——————

 

 さっきも、20経験値を手に入れたらレベルアップしたけれど、それから必要経験値が上がっていない。
「もしかして、ある程度のレベルまでは必要経験値は一定なのかな」
 まぁ、あまり気にする必要もないかと、モンスター狩りを再開する。


***

 

 あたりは夕暮れになるまで、3時間程を費やし、森でモンスターを狩ってみたが、結局レベル10まで必要経験値は20のままだった。
 途中、ドロップアイテムもいくつか拾い、充実したモンスター狩りの時間を楽しめた。腹も減ったし、肉体的にはそんなに疲れはないが、精神的に疲れたので、レベルアップの謎はそのままにして、モンスター狩りを止めて村へと戻る。

 確か、現実世界と連動して時間が進んでいるはずだから、そろそろお昼頃だと思う、お昼ご飯を食べるために、ゲームを終了しよう。そしてお昼ご飯を食べたらすぐにゲーム再開しよう。

 最初に開始されたスタート地点の、ベットしかない部屋へと戻ってきて、ログアウトを試みる。

「ログアウト!」
 口に出す必要のない言葉を、また言ってログアウトしようとする。

 しかし、何も起こらない。頭の中でもログアウトをしようと唱えるが、ログアウトが実行されることはなかった。
「あっれ、おかしいな」

(ログアウトします!)

 今度は思考操作でログアウトを試みるが、何も反応しない。ログアウトするときは、”ログアウトします”と思考操作することで、ゲームが終了すると付属の説明書に書いてあったはずだが。

(強制終了します!終了します!おわり!ゲームを出る!ゲームを出せ!……)
 思いつくままに、いろいろな単語を思い浮かべるが、何も反応してくれない。ログアウトできない…。

 運営側の不具合? 機器の故障? ログアウトの方法が間違っている? あらゆる原因を考えたが、解決方法が分からない。

 ログアウトできない。それは、一昔前に流行したマンガやゲーム、小説のストーリーの始まりのようで、ある嫌な予感が頭をよぎった。

(もしかして、これってデスゲーム…?)

——————
ユウ
Lv.10
STR:36
CON:31
POW:40
DEX:46
APP:25

職業:冒険初心者
EXP:190
SKILL:9

スキル:なし
——————

 

 

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