07.急展開

「起きてください、ユウト」
「ん~、どうしたマリア」

夜遅くに、彼女は俺の肩を叩いて起こす。

「シー、静かに。問題が発生しました。申し訳ないんですが、
今すぐ家を出ないといけないんです」
声を潜めて、そう言う彼女に、何故と質問する。
「一体どうしたんだ?家を出る?」

「すいませんが、必要な荷物だけ準備してください、
もうこの家に戻ってこれないと思いますから、必要なものは必ず持って来てください」
言って、彼女は部屋を出て行った。

準備をして、と言っても、スーツを畳んで風呂敷に包み、肩に掛けるだけで、
家を出る準備が出来た。

居間に行くと、真っ暗闇の中に、薄ぼんやりとした火の光。
マリアは弓を片手に、俺と同じような風呂敷を方から下げていた。

「準備は良いですか?もうこの家に戻ってこれないと思いますから、注意してください」
「どうしてだ?」
「後で説明します。付いて来て下さい」

何時も使っている正面の玄関ではなく、裏の扉の方へと回る。

マリアは扉をそっと開け、外を注意深く伺った。
やがて、少しだけ開いている扉の間に身体をすりこませて、外へ出る。
俺もあとに続いて、窮屈な扉から外へ出ると、マリアが中腰になりながら、辺りを伺っている。

そうやって、一番近くの林の中まで、中腰のまま進む。
俺も、同じような格好でマリアの後に続く。

「ふぅ、もう大丈夫だと思います」
林の中へ入るなり、マリアが言う。
そして、林の中へと歩き出す。俺は彼女について生きながら尋ねる。

「一体どうしたんだ?」
「…私達が、村の人達に避けられているのは気づいていましたか?」

「あぁ、避けられているとは思っていたが」
「それで、今夜、私の家が襲撃されるとダリヤ様から連絡があって」
襲撃?そして気になったのは、
「ダリヤって、確か今日の朝出会った魔法使いか」
「えぇ、そうです。夕食の時に話した、魔法使いのダリヤ様です」

「襲撃って何故?」
「…もともと、私は村を出るように言われていたんですが、勝手にあの家を借りて生活していたんです」

勝手に?どういうことだ。マリアは、質問する間も与えてくれないまま、話を続ける。
「それで業を煮やした村長が、今夜村の人達と一緒に私を村から追いだそうと画策したらしくて」
「なんで今夜なんだ?」

「多分、畑の収穫が終わって、今朝ダリヤ様に畑のご加護を授かったので、今日だったんだと思います」
話しながらも歩を進めていたマリアが急に止まる。

「ちょっと待っていて下さい。……ダリヤ様、今家から抜け出してきました」
前半部分は俺に向かって言い、後半は手を前で組み、目を閉じて祈るようにして呟く。

と、林がガサガサとなったと思うと、空から女の子が落ちてきた。
「とぅ!」
掛け声とともに、上手に着地する。
女の子は立ち上がって、ローブの汚れを叩きながら言う。
「待っておったぞマリア!だから言うたじゃろうが、早く家を出ないと危ないぞと」
「ご心配をおかけしました、ダリヤ様」

「良いんじゃ、良いんじゃ、家を出る決心をしてくれたならのう」
ダリヤがこっちを向く。
「それで、この日本人も一緒にいくのかの?」

「そうです、ご迷惑をおかけするのですが、どうしても彼を置いて行くことは出来なくて」
「良い良い、マリアが来てくれるなら男の一人や二人増えたところで問題ない」

「話について行けてないようじゃが、あとで説明してやる。今は、わしの手を握れ」
と差し出された、小さな手。
言われたとおりに、その柔らかい手を握ぎる。
片方の手にはマリアも同じようにダリヤの手を握っている。

「良し、飛ぶぞ」
ダリヤが何事かを叫ぶと、周りの景色がグニャッと曲がり、
俺も上下左右がわからないような不思議な空間へと飛ばされる。

「な、なんなんだ、一体」
そこでプツンと意識が切れた。

 

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