06.女の子?

今日も、マリアとレンガの家の前で別れて、畑へと向かう。
最近、この畑を耕すというのが完全にルーチン化されて困っている。
このままじゃ、一生マリアの世話になりっぱなしだなぁ、なんて考えていると、
畑の前に真っ黒のローブを着た子どもが一人しゃがんで居るのが見えた。

おかしいなと思う。

どうやら、この村で俺は避けられているらしく、
村民を時々見るが、話しかけることも出来ずに逃げられる。
そしてマリアもどうやら村人から避けられているのか、避けているのか、
どっちかわからないが、村人とマリアが話し合っている所を見るのは、ほとんど無い。
ほとんどと言っても、村人とマリアが話しているのを見たのは、
初日の村長の息子だったヤツと話した所を見ただけの一回だ。
1週間、ソレ以外で見ることはなかった。

考えてみると、レンガの家がある場所は村から少し外れたところにある。
そして麦畑も、村から結構な距離を離された場所にあって、村民が近づくことはこの1週間なかった。

しかし、今目の前には子どもがしゃがんで、顎に両手を当てて居る。

おかしいと思っったが、調度良い機会だとも思う。
村人になんで避けられているか、この子と話して探ってみよう。
「どうしたんだい、お嬢ちゃん」
とりあえず、無難に怪しくないように言葉を選んだが、
客観的に聞くと、どうしても怪しく聞こててしまうような言葉を言う。

「なんじゃ、お主は?ココはマリアの畑じゃぞ」
妙な年寄り臭い言葉遣いで返される。
声を聞くと、どうやら子どもは女の子だったらしい。
その彼女が、しゃがんで両手を顎に当てたまま顔をこちらに向ける。

「いや、そうなんだけど、マリアに頼まれて俺が耕して畑を大きくしてる途中なんだ」
「む、お主、マリアの知り合いか?マリアは今何処に居るんじゃ?」

「今日も、アーデンの森に狩りに行ったはずだけど」
「なんじゃと!マリア、約束をすっぽかす気かの」
そう言うと、立ち上がって身体をこっちに向ける。
ローブで良くは見えないがココロの均衡のとれた真円に、驚く。
この子は、ココロを全く動かさずに居る?
今まで、ココロをこんなに動かさない人間に会ったことがなかった。
多かれ少なかれ、ココロというものは常に動いているものだというのに。

それに、ちっちゃい、身長140cm無いんじゃないのか?

「む、今、お主、ワシのことちぃっちゃいとか思わんかったかの?」
小さいくせに、妙な迫力がある。言葉遣いも変だし。
「イヤ、そんなことよりも、君は誰だい?」
「なんじゃぁ、畑を頼まれているのにワシのことは聞いとらんのか?」

マリアが何か言っていただろうか?記憶を探っても、女の子のことは分からなかった。
「ふっふっふっ、」
女の子がバサッとフードを取る、
「知らざあ言って聞かせやしょう!
名せえゆかりの魔法使いのパタノフ・ダリヤたぁ、ワシのことじゃあ!」

「は?」
「なんじゃ、お主、日本人じゃないのかのぉ?」
一気に白けた風に、彼女は言う。

「いや、日本人だけど?いきなり何なんだ?」
「なんと!日本人なのに知らぬのか、せっかく日本人に会った時用に練習しておったのに、
分からんとはやり甲斐の無いヤツじゃのぅ」

あまりにもあんまりな自己紹介、歌舞伎か?
え、日本人ッて聞いたということは、
「日本を知っているのか?」
「知っとるも何も、ワシは日本が大好きじゃ」

両手を腰の左右に当て、胸を思いっきり張って、フフンと何だか自慢げだった。分からん。
そして、もうひとつ気になる点、魔法使いって言ったか?
「魔法使いなのか?」
「本当に聞いとらんのか?マリアも気が利かんのう」
「なんで魔法使いがこんな所に?」
マリアに聞いた話だと、魔法使いは本当に少ないらしく、大陸中でも10人はいないらしい。
そんな人間が、こんなところで何してんだと真面目に疑問に思う。

「まぁ良いか、お主、マリアの知り合いということは、あとでマリアに言うてもらえば良いか」
こっちの話もよく聞かずに、その女の子は話を進める。
そして、よく分からないことを言いながら、自己解決しているふうに、何度か首をウンウンと振ると、
ローブに手を突っ込み何かを取り出す。
「おぉ、魔法使いっぽい」
取り出したのは、15cmほどの長さの木の棒。あれは、魔法使いの杖なのか。

「ちょっと下がっておれ。そしてよく見ておれよ」
言い、なにか唱え始める。俺は、彼女に言われたとおり少し下がる。
何を言っているのか俺には理解できないが、どうやら魔法を使う気らしい。
彼女は、唱える呪文が終わったのか黙りこくると、杖で大きく円を描いた。
瞬間、光が差して目が見えなくなる。
「ぐぁ、眩しい」
腕で顔を覆うが、まだ目がチカチカする。

「ほれ、終わったぞ」

目が見えるようになって、畑を見たが特に変化はなかった。
「ん?何も変わっていない?」

「土にちょっとした力を加えただけじゃから見た目は変わらん。
ソレよりも耕した部分もついでに、魔法を掛けておいた。感謝するんじゃぞ」
「は?」
よく意味がわからない。
「じゃ、今年も畑に魔法を掛けておいたと、マリアに伝えるんじゃぞ、では、さらば!」
「は、ちょ、ちょっと待て、意味が分からん。お~い」
どこからか飛んできた箒?を掴むと、あっという間に、その箒に乗って飛んでいって見えなくなった。

「一体何だったんだ?」
意味の分からない、女の子だった。

 

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