03.ワワラルズの村

彼女の後を付いて歩いていく。
途中俺は疲れきって歩くのが精一杯で、何も喋れないでいた。
彼女も、特に何も言わず前を歩いた。

30分ぐらい歩いたところで、森を抜ける。
森を抜けると、どこまでも続くような草原が見える。
目の前は小高い丘になっていて、空と地面との境がくっきりと見える。

そういえば、最近はずっと自宅と会社の行き来だけで、
こんなにきれいな草原もずっと見てなかったなと思い出し、
おもいっきり深呼吸をしてみる。

こういう場所で、空気を吸うと本当に気持ちい。
空気にも味があるように感じる。緑のような森の味。

「すいません、もしかして私歩くの早かったですか?」
彼女は心配そうなココロで俺に聞いてくる。

どうやら、深呼吸したのを見て、俺がよっぽど疲れていたのだろうと思ったのだろう。
「いや、あまりにも綺麗な風景に、チョットな」
俺がそう返す。

「……?この辺りは、王国方までずっと草原が続いてますし、そんなに珍しい景色でもないですよ」
彼女は不思議そうにそう言う。


「とりあえず森を出ましたが、ニホンへ帰る道は分かりますか?」
「いや、分かりそうにない」
そもそも、ココが何処なのか、森を抜けても分からなかった。

「それじゃあ、一度ワワラルズの村に来ますか?そこなら、地図も見れるので、帰る道が分かるかもしれません」
彼女は、何故か嬉しそうなココロをして言う。

ココで彼女と別れるともう二度と会えない、そんな気がして
できればもっと一緒に居たかったと思っていたので、ちょうどいいとすぐに返事を返す。
「あぁ、すまないが、村まで連れてっていってくれ」

「もう少しで日が暮れそうなので、少し早めに歩きたいんですが大丈夫ですか?」
「あぁ、かまわない」

俺と彼女はワワラルズの村へと道を進める。

***

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、、、、」
「ユウト、大丈夫ですか?」

日が暮れる直前で、何とかワワライズの村へと到着したようだった。
少し早めといった彼女だったが、少しなんてもんじゃないスピードで進むので、
息が切れ切れになっている。

途中、彼女が俺をおぶりましょうかなんて言ってきたが、
そんなこと女性にさせるわけにはいかないと、断った。

ただ、不思議に思ったのが、思った以上に自分に体力が有ったことだ。
最近は運動不足で、1階から2階へ階段を普通に登るだけで息を切らしていた俺が、
彼女に1時間以上もの早足に着いて行けたから、思った以上に俺には体力があるんだなと、
妙なところで自分の身体が健康だった事を確認できた。

いや、もしかしたら彼女と離れたくないという気持ちが強すぎて、
ここまで付いてこれたのだろうか。

膝に手をつき、休んでいたが息が整い、何とか身体を起こす。
「ふぅ、、、もう大丈夫だ」

「それはよかったです」
ニコニコと彼女のココロが笑う。
それだけで、先ほど感じていた疲れが癒された。

ワワラルズの村は、のどかに見える村だった。
遠くの方に畑のようなものが一面に広がってるのが見える。
黄金色に見えるが、麦畑だろうか。

「おい、ブス。その男は誰だ!」
キンキンした甲高い不快な声が、耳に届く。
声のした方を見ると、マリアと同じぐらいの身長160cmぐらいの小柄な男が立っている。
見たところ、どうも難儀なココロをしているようだ。

「彼はユウト。アーデンの森で会いました」
「は?アーデンの森でだと?それは本当か、ブス」

アリスが首を縦にふる。
不快そうに鼻を一度鳴らすと、次に俺の方に目を向けた。
「貴様、この村になんの目的で来た」
「さあな、なんでここに居るのか、俺にもわからん」
「何だその言葉遣いは!俺を誰だと思っているんだ!」
知らねぇよと心のなかでつぶやく。
面倒なことになりそうな予感がしたので、
俺は黙ってそいつを睨むだけにした。そいつはまた鼻を鳴らすと
「背が高いからって生意気な野郎だ。おいブス、早くこの男を村から出て行かせろ!」

「しかし、彼は困っています。今、村から出すことは出来ません」
彼女の反論を受けると、舌打ちをして踵を返して何処かへと歩いて行った。

「なんなんだ、あいつは?」
「このワワラルズの村長の息子ジャスタス・ヒルトンです。
……ごめんなさい、彼はこの村の村長の息子として、村を守ろうとして、
村の外から来たユウトにああいう態度を取ったんだと思うの。
普段はもっと優しい人なのだけれど」

あいつは村のためなんて、そんな殊勝な気持ちで言ったんではなくて、
単純に俺を気に入らなかったから、そう感じたが。
「それよりも、君を何度もブスと言っていたが」
「それは仕方のない事です。私はあまり容姿が優れていませんから」
信じられない思いだった。
「そんなことを言うな、マリア。俺は生きてきた中で君ほど優れた美人に会ったことは無いよ」
生まれて初めての口説き文句だったが意外にスラスラと言えた。

ココロを真っ赤にさせる彼女を見て、
「え~っと、、、あっ、家に案内しますね!付いてきてください!」
声を張り上げ、家へ案内するというマリア。
仕方なく、またついていくことにする。

 

 

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