09.昼食前の会話

マリアとダリヤに連れ立って、歩いて行くと、
大きな空間へと出る、中央に長テーブルと椅子が何脚も並んでおいてある。

「なんじゃこりゃ、でっかいなー」
「ワシの城の食堂じゃ、驚いたか?」
「あぁ、驚いた」
確かに城ならこの大きさも納得の、食堂だった。

テーブルの上には3人分の皿が用意してある。
先程の会話通りなら、マリアの作った食事に違いなかった。
「マリア何時も、済まないな」
俺がマリアに対してお礼を言うと、マリアは恥ずかしながらも答えた。

「いいえ、私の好きでやっていることですから」
三人がそれぞれの席につき、食事を始める。
「いただきます」

「お、懐かしいのう。ワシもいただきますじゃ」
ダリヤが俺にならって、手を合わせていただきますと言う。
「あ、じゃあ、わたしもいただきます」
するとマリヤも同じようにして手を合わし言う。
「マリヤ、日本人は食べ物や作った人に感謝の気持ちで
このように手を合わせていただきますといんじゃ。
ちなみに料理を作った人はお粗末さまですと、
謙遜の気持ちを表すんじゃよ」

「そんな理由があったんですね、ユウトさんは毎回
そのようにしていたんで不思議に思っていたんです」
俺の代わりに解説をするダリヤ。
というか、よく知っているな。

「なんでそんなに詳しいんだ?」
確か、前は日本が好きとか何とか言っていたような。

「何故って、ワシも日本に住んでたからの」
「す、住んでただって?」
意外な答えにビックリする。じゃあ、もしかして。

「もしかして日本と行き来できるのか?
俺も日本に帰れるのか?」
「それは無理じゃ」
にべもなく否定られる。

「い、いや住んでたんだろ?」
「ほんの100年前の話じゃ。今は、ゲートが閉めておるから、
日本との行き来は出来んぞ。それに元々魔法使いしかそのゲートを使えんしの」

「はぁ?100年前?ゲート?」
意味がわからない単語に理解が追いつかない。
「ワシが日本に行ったのは大体100年前の話ということじゃ」
「だって見た目子どものお前が100年って?」

「だから言うとろうじゃろうが、ワシの見た目と年齢はつりおうとらんと」
「いやいや、初めて聞く話だぞ?お前一体何歳なんだよ!」
最後の方は叫ぶように言う。
「ふっ、女性に年齢を聞くのは失礼に当たるぞ」
「そういう問題か?少なくとも100歳以上なんだろう?ずっとその見た目のままなのか?」
と、言うとマリアが補足して説明してくれる。

「ダリヤ様は、私の小さい時から今のお姿でした」
「うむ、ワシの身体はもう成長しないからな、昔からこの姿じゃ」

「あー、うー、そうか、そういうことで理解するとして、ゲートってなんだ?
なんで閉められたんだ?なんで魔法使いしか使えないんだ?」

「1つずつ説明するぞ?ゲートとは異世界とを繋ぐ扉のことじゃ。
日本もその扉の出入口の一つじゃった。
その他にもマクワルトやヘカシュタにも繋がっていたな、
といっても日本以外の国については言ってもよく知らんじゃろうがな」

たしかにそのマク何とかやへク何とかは聞いたことがなかった。
マリアに目を向けたが、首を横に降ってわからないと返す。
どうやら、その異世界の名前は一般的な名称ではないようだ。
「続けるぞ、そのゲートを閉じられた理由は、
意図しない訪問者が後を絶たなかったからじゃ。
意図しない訪問者とは、
異世界からエイロスに、つまりこの世界に無意識に来る人間のことじゃ」
無意識に?俺のような人間のことだろうか。

「そういった人間が絶えず来るようになったために勇者山田一郎が
魔法使いにゲートを閉じるように命じたのじゃ」
山田一郎だって?日本人が勇者をしていたっていうのか?
と、マリアがまた補足して言ってくれる。
「勇者ヤマダの伝説は、子どもに語って聞かせる昔話として有名ですよ」
「うむ、その山田一郎が、これ以上意図しない訪問者が増えないようにゲートを閉ざしたのじゃ。
ソレが100年前の話。閉じたのはこのワシ。
閉じる前に1度日本に住んでみたくてのう、
1年ほど日本で過ごしたのじゃ。あの時は楽しかった」

「魔法使いしか使えないというのは?」

「ゲートを通るときに魔力を制御できないと、
魔力で身体が弾けてしまうためじゃ」
弾ける?恐ろしい単語を危機身震いする。
「だから、魔力を制御できる魔法使いじゃないとゲートは通れないんじゃ」
だが、今俺はこの世界にいる。何故だ?
「俺は、日本からこの世界へ意識せずに来た。俺も意図しない訪問者じゃないのか?」
「ソレが問題じゃ。確かに魔法の制御が出来ないままでもゲートを通れるものは少なからずおるんじゃ、
しかし、ワシがゲートを閉めてから異世界から来る人間は一人もおらんかったはずじゃ。
少なくとも、私が監視している間は、一人も出入りはしていなかった」

ダリヤは一度目をつむり、考えるような仕草をしてから更に続けた。
「ワシが見逃したのならゲートを締め直すだけで良いのじゃが、
他のルートから来たとなると、ちと厄介じゃな。他のゲートが出来たのかもしれん」
「俺は、帰れないのか?」
帰る気などは無いのだが、自然にそう口に出てダリヤに帰れるかどうかを聞いていた。
言うと、ダリヤは目を開けて改めて俺を見る。
「とにかく、今すぐには無理じゃ。それに、一度お主を調べる必要があるようじゃな」
そう言うと、ダリヤはすぐに俺から目線を外し昼食を食べ始めた。

 

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