00.プロローグ

美人は性格が悪くても、許されるなんて昔から言われているけど、
俺に言わせると、性格が悪いと全てが台無しだ。

なぜなら、ココロを覗いてしまうと俺は、
皆とは違った人の見え方をしてしまうからだった。
嘘を付く人間のココロは、ぐにゃぐにゃと形なく蠢き、俺を恐怖させる。
悪口ばかり言う人間のココロは、ねじり曲がったココロに吐き気を催す。
他人を貶めようとする人間のココロは、真っ暗闇でココロの底が見えない。
大人のココロを見ると、その人が果てなく醜く見えてしまう。

だから俺は、人の目が直接見れなかった。
あの醜いココロを直視すると、自分も影響されてココロが染まってしまう
そんな恐怖から、
人を見るのが怖い、目を合わせられないと思うようになった。

清らかなる子供時代は良かった、ウブな彼や彼女たちは、
見ているだけでココロが安らいだ。

しかし、年齢を重ねるごとに、皆のココロは薄汚れていってしまった。
俺だけが、この世界の絶望を知ってしまっている。

男友達は言う、彼女たちは綺麗になったと。
でも俺だけが、彼女たが汚れていくのが見えてしまっている。

あの醜くなった、女性と付き合って結婚して、家庭を築く未来を俺は想像できなかった。
俺の出会ってきた女性は、例外なく全てが汚れていた。
醜さの差はあれど、どれも酷いものばかりだった。

俺だけが。

***

いつもの残業が終わり、家路につく。会社を出て、駅まで10分間道路脇を歩く。
毎日なんでこんなにつかれるまで、仕事なんかしてるんだろうと思いながらも、
今の仕事を辞めたら、次の仕事を見つけることが出来るかどうか全く分からず、
それが怖いので、今の日常から脱せずに居た。

階段を上り、改札を抜ける。

日が変わるぐらいの時間で、しかも、ココは都会とは程遠い田舎町なので、
ホームにはいつものように殆ど人は居なかった。

電車が来るまでは、ベンチで少しでも休もうと、疲れた身体を引きずりながら、
ベンチ目指して歩くと、女性が一人座っているのが見えた。


そこで俺は見た。見てしまった。

今まで生きてきた中で、圧倒的に醜く暗いココロを持った女性だった。
一瞬で恐怖するような、あまりにも酷い見た目な彼女のココロを直視してしまい、呆然としとしてしまう。

彼女は、俺に気付き、ニヤニヤと嫌なココロで笑うとこちらに近づいてやってくる。
俺の前まで来ると、指を2本ピースを逆にした形で、
手の甲をこちらに向けて指を立て言う。
「二万でどう?」
どうやらウリをやっている女のようだ。
ココロが本当に醜くて、最近やっと慣れたと思っていた恐怖が俺を襲う。

「い、いや…」
見たところ彼女は160cmぐらいの身長で、俺は181cmある。
身長差では圧倒的にこちらが有利なのに、
俺は彼女に恐怖する。

口がカラカラになり、今すぐ叫んで逃げ出したくなる。
女はチッと、舌打ちすると視線を俺から外す。

彼女の視線が俺から外されることで、恐怖がほんの少し緩み、
縛られたように動かなかった身体が、
何とか動くようになる。
早くこの女から、離れろ!
自分に言い聞かせ、何とかその場を離れようと彼女から視線を無理やり外し、
改札の方へ来た道を戻ろうとする。

瞬間、背中を押される。
恐怖としていた俺は、あっさりと抵抗もできないまま、線路へと落ちる。
あまりにもあっさりと。

目の前に電車が迫っていた。
「…なんで」

<<今日未明、△△駅で電車事故があり、27歳の男性1名が死亡しました。
亡くなったのは、○×市の会社員佐間勇人さん27歳で……>>

 

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