閑話12 新社長金森インタビュー

「本日はアビリティズ事務所に新しい社長として就任する金森大輔さんに来ていただきました」
「よろしくおねがいします」

 男性キャスターに紹介された金森は、テレビ映りを強く意識しながらの笑みを浮かべて頭を下げてから、丁寧に挨拶をする。視聴者の印象を良くするための振る舞いだった。

 金森が出演しているニュース番組。その時間は普段なら経済評論家などの識者を呼んで、社会問題などを議論するコーナーなのだが、今日は特別にアビリティズ事務所の社長に就任することになったという金森社長のインタビューが特別に行われることになっていた。

 新しくなるアビリティズ事務所のイメージ戦略として、出演料を支払い、つまり番組への出番を買って出演をしているのである。更には社長自らがメディアに出演をして、大企業であるアビリティズ事務所が変化するという事を大々的に視聴者に向けて伝えようとしていた。

 実はこれは、アビリティズ事務所というアイドル事務所の新しい社長は、この金森だぞ! という強い自己顕示欲の現れであった。しかし、そんな内心を隠して番組に出演をしている金森。彼に向けて、早速キャスターが番組を進行させようと質問を始める。

「今回の社長交代人事ですけれど、前任の三喜田氏はまだ55歳とお若い。にもかかわらず、何故今の時期に後任となる金森社長へのバトンタッチをすることになったのでしょうか?」
「そうですね、実は以前から事務所内では2つの主張がありました。1つは前任の三喜田氏が支持していた人材をじっくりと育てる長期論と、私達が支持していた即戦力論の2つ。その名の通りアイドル訓練生の扱いをどうするべきか。長期的に見るべきか、それともすぐさまファンの皆様の前にデビューさせるべきなのかについて。その2つの主張が対立しあい、事務所内でも大きな問題になっておりました」

 じっくりと話す金森の話を、事前の打ち合わせ通りにしっかりと聞き入っているという姿勢を見せるキャスター。

「対立を解消しようと議論をした結果、私の唱える即戦力論を支持してくれる役員や社員達が過半数となりました。その結果を三喜田氏に訴えたところ、彼は一向に改善をする様子を見せずに結果、事務所内の対立が激化してしまいました。そこで役員一同は、改善を見込めない独断専行を良しとしていた三喜田氏の解任を要求するに至りました」

 一部事実に反する事も語っていく金森社長だったが、あまりにも堂々と話す姿と誰も否定する意見を言わない状況を見た番組視聴者は事実なのだろうと信じて、三喜田に対する評価を悪くさせていた。

 金森の話を途中で遮らないようタイミングを見計らって、予定されていた通りにキャスターが次の話へとつなげる質問をする。

「なるほど、つまり2つの主張を議論した結果により三喜田氏の退陣が決まったというわけですか。ところで、今後のアビリティズ事務所はどのような方針で経営していこうとお考えでしょうか?」
「私が先程述べました、即戦力論。我がアビリティズ事務所には、数多くのアイドル訓練生が所属しています。しかし、その多くがまだテレビ出演を果たしていない、ライブ出演を果たしていない、という者たちが多いのです。けれど、そんな彼らも現在活躍しているアイドルに遜色のないほど、誇れる能力や特技を身に着けている者が多くいるのも事実です」

 金森は、実働できていないレッスンだけを受けているアイドル訓練生は、もっとテレビ出演やライブへの出演を果たして実践を経験するべきだと主張している。

「ファンの多種多様なニーズに応えるべく、多くのアイドルを次々にデビューさせる事が今の時勢に大事だと、私は確信しているのです」
「なるほど、今までに日の目を見ることがなかった隠れていたアイドルを次々に発掘していく、というのが大事だと金森氏はおっしゃるのですね」

 金森の語った言葉を、簡潔に視聴者にも分かりやすく、そして良いように聞こえる風に変えてまとめるキャスター。そして番組の出演時間の終わりをもうすぐ迎えそうになっていたので、キャスターは番組のまとめに入る。

「では最後に視聴者への一言、よろしくおねがいします」
「えー、そうですね。アビリティズ事務所は社長交代という大きな変化を迎えましたが、基本的な方針としてアイドルをいかにして大事にするのか、どうやって輝かせるのかを常に考えています。ソレはファンの皆様の応援があってこそ成り立つ世界なので、今後ともぜひ応援したいと思えるアイドルを見つけてもらい、続けて応援していただけると幸いです。ありがとうこさいました」

 こうして、アビリティズ事務所の新社長となる金森大輔のインタビューは終わる。番組を視聴していたおおよその人たちは、アビリティズ事務所というアイドル事務所が変わったことを理解して、新しい社長となる金森という人はいい人そうだと、事実を知らない視聴者の多くは彼に対して好印象を抱く結果となった。