閑話11 謀反の役員会議

 アビリティズ事務所は大手企業である、ということを端的に示すために有るかのような自社所有の超高層ビル。その最上階に近い場所にある会議室で、いつものように三喜田社長と金森副社長、そして役員たちが数名集まって会議が行われていた。

 定期的に実施されている役員会議であり、様々な議題について意見を述べて論じ合う、議論を深める時間であった。

 新しく結成するアイドルグループについての計画についてや、売り出すアイドルの確認、それからアイドル訓練生の成長具合などなど。

 一時間ほどの話し合いで、あらかた議論し終えてので本日の会議は終わりだと三喜田社長が締めようとした時に、金森副社長が会議が終わろうとしているところを止めに入った。

「最後に1つ、決めておかないといけない議題があります」
「どうした、金森?」

 事前に予定はしていない、突然の金森副社長の行動に三喜田社長は何事かと問いただすが、金森副社長は無視をして進行をしだした。

「三喜田社長の、解任を要求します」
「一体どういう事だ、金森?」

 唐突に金森副社長が口に出した議案の内容に、三喜田社長は得心がいかないという表情を浮かべて金森副社長を見つめる。だが、視線を向けられているのを認識しながら自信たっぷりに金森副社長は語り出した。

「アビリティズ事務所の現状は、かろうじて赤字はまぬがれていますが大きな利益も生み出せていない停滞状態にあります。しかし、三喜田社長は対策を講じぬまま現状維持を良しとしています」

 金森副社長は三喜田社長から視線を合わせて、真っ直ぐと見つめると責めるように語りを続ける。

「企業成長を果たすため新たな方針を打ち出すべきだと私達は再三申し上げましたが、三喜田社長は改めませんでした。そこで、私は三喜田社長の解任を要求するという提案をいたしました」

 金森副社長は一旦言葉を止めて、役員たちの顔を見回して確認するような視線を送る。金森副社長の言葉や視線を受けて、頷く役員達が居た。しかし、三喜田社長が視線を向けると目を合わせようともしない。

「では議決に入りましょう」

 金森副社長の言葉に、反対するような声を上げる役員は居ない。既にしっかりと根回しは完了していて、三喜田社長の解任決議は予定調和とも言える流れだった。

 そして、三喜田社長を除いた残りの役員全員が一致で社長の解任が決定した。三喜田社長の解任に反対する者は誰も居ないので、議論の余地もない完全な決定だった。

「ふう、なるほど。そうか」

 三喜田社長は1つため息をついて頷きながら、仕方ないと言うような表情を浮かべていたが内心では予想していた結果だと納得もしていた。

 何故なら、金森副社長が手を回しているのを薄々感づいていながら何も手を打たずに今日の会議に挑んできたから。しかし、全員一致で解任という事実には堪えていた。

 そんな様子の三喜田社長を見た金森副社長は、計画通りだとほくそ笑んだ。

 金森副社長の目には三喜田社長の様子がフィルターが掛かっていて、悔しがっているように見えたから。そして、邪魔だと感じていた上にいる存在を蹴り落とすことが出来た、と。

「では、私の解任は決定ということで人事については後日改めて手続きを行い、後任を誰にするのか決めるのと、社外への発表を進めていこう」

 三喜田社長は最後に自分の解任についてもあっさりとまとめて、本日の役員会議を締めた。

 そして会議も終わり解散となった後は、金森副社長と役員達は足早に会議室から出ていくと、部屋に残されたのは三喜田社長だけだった。

 長年務めてきたアビリティズ事務所の社長から解任という事を決まって、会議室に一人きりとなった三喜田社長だったが、その表情はむしろ晴れやかだった。実は彼にとっても、社長を退任するという事は予定していた事だったから。

 三喜田社長は表情にも感情をあまり出さないで黙ったまま、その言葉を心のうちで思い浮かべた。

 さて、本日の役員会議で目的を達成したのは果たして一体どちらだったのか……。