第51話 5人目のメンバー

 緑間拓海に聞いた話について、三喜田社長にも確認をしに行く。拓海の口から既にアイオニス事務所へ移籍してくるという事は聞いていたので、その他の事について色々と確認するためにも、三喜田社長のもとへと話し合いに行く必要性を感じていたから。

 その前に、Chroma-Keyの他のメンバーである剛輝と優人にも話をしておく必要があると、三喜田社長と会う前に事情を説明しておくことを忘れなかった。

「え? 本当ですか? 拓海くんもメンバーに」
「お! それは、ええやんか。大歓迎や」

 優人は驚き、剛輝は即座に歓迎するムード。拓海と2人は文化祭の劇を行う際に既に出会っていて、文化祭期間中も色々と協力しあって仲良くなっていた。だから、今回の4人目のメンバーとなったという事を驚きながらも、喜んでくれていた。

「うん、事務所を来年の春に移籍してアイオニス事務所へ行くことになった。よろしくね」

 正式には来年の4月になるまでは、まだ前の事務所に所属ということでアイドルグループとしての活動がスタートするのは先のことになるだろう。

 けれども事前に知り合っておいて、仲良くなっておけばグループとしての連携も取れるようになって、順調な幕開きが準備できて良いと思う。

 そして、この4人で揃って三喜田社長のもとに行くことになった。移籍前の拓海がアイオニス事務所に足を踏み入れるのは大丈夫なのかと心配したけれど、契約に関する色々な話し合いをしないといけなくて、その話もついでにするからと俺たちと一緒に向かう事になった。

 緑間拓海について話をしたいと三喜田社長を訪ねると、ちょうど良かったと言って三喜田社長からも話があるからと会議室へと通された。

 すると、会議室の中には見知らぬ少年が先客として待っていた。一瞬誰だろうかと少年の正体を考えて、ある事を思い出す。

 それは三喜田社長に会議室の中で、優人が新しいメンバーだと紹介された時と似たようなシチュエーションであることを。まさか彼がそうなのかと俺は思った。

 少年はニコニコと笑顔を浮かべて、俺たちを見ている。身長は背の低い拓海に比べると少し大きいぐらいで、まだ幼い見た目から小学生の高学年ぐらいかと予想する。

 三喜田社長と話し合いをするために、会議室の中にある椅子へと腰を下ろす。そして、見知らぬ少年も当然のように座った。彼は一体誰だと聞こうとする前に、三喜田社長は話し始めた。

「緑間拓海くんの報道については知っていると思うが、アイオニス事務所へ移籍してくることも聞いたのかい?」
「はい。本人の口からお話を聞いて、教えてもらいました」

 三喜田社長との話し合いが始まると、まず拓海に関して確認をする為の質問を投げかけてきたので、俺が答えた。

「それじゃあ、Chroma-Keyの4人目のメンバーとして迎える事も聞いているのかい?」
「それも聞きました」
「なるほど」

 拓海の口からグループの新メンバーとしてオファーを受けていると聞いて、三喜田社長の確認の質問から本当だったのかと改めて驚いている。まさか、既に他事務所に所属している彼をオファーしているとは思っていなかった。

「そういえば、拓海くんと賢人くんの2人は知り合いだったのか」
「えぇ、学園の寮で隣同士になって住んでるんで、入寮してきてすぐの頃に知り合いました」
「僕たちも、この前の学園祭で知り合いになりましたよ」
「おう、俺たちは一緒に劇をした」

 拓海との関係について俺が説明して、付け加えるようにして優人と剛輝も拓海との関係を説明する。グループの新メンバーとなる事を知らされる前から知り合いであった、という事を。

「なるほど、そうか。それじゃあ残り1人のメンバーを加えて5人組として、拓海くんの移籍が完了するのを待ってから、Chroma-Keyは来年の4月をスタート目標として活動していきたいと考えている」
 
 ここに来てようやく、アイドルとしてのデビューが見えてきた。そして、残り1人のメンバーというのは、やはり……。

「君たちの想像している通り、残り1人のメンバーとして加える予定なのは彼だ」
「はじめまして皆さん、僕の名は浅黄龍二(あさぎりゅうじ)です。よろしくおねがいします」

 社長の隣りに座って、会話している最中は大人しくしていた彼こそが、Chroma-Keyの5人目のメンバーだと三喜田社長は言う。それにしても、俺は彼の名前に少し聞き覚えがあった。というか、俺でなくても知っている人は知っている名前。

「龍二くんは、浅黄財閥の御曹司だ。その彼を、5人目のメンバーとして迎える。赤井賢人くん、青地剛輝くん、舞黒優人くん、緑間拓海くん、そして浅黄龍二くんの5人組でChroma-Keyという新しいアイドルグループを立ち上げたいと考えている」

 まさか浅黄財閥なんて由緒正しい家柄の人が、俺たちのグループに加わるメンバーの中の一人となるなんて。俺が驚いていると、彼は手を伸ばして握手を求めてきた。

「あなたが赤井さんですね、リーダーだって聞いてます。よろしくおねがいします」
「あ、ああ。うん、よろしく」

 笑顔を浮かべて差し出された手を、俺は戸惑いながらも応えて握手をする。とりあえず、これで5人が揃ったわけだ。そう思った時、異を唱える者が1人居た。

「ちょっと待ってよ、社長。こんなボンボンを俺たちのグループに入れるんか? 俺は反対やで」

 5人目のメンバーとして紹介された浅黄龍二。彼がグループに仲間入りする事について反対する声を上げたのは、剛輝だった。