第49話 文化祭翌日

 文化祭が終わって翌日。出し物などの片付けをしないと駄目なので、学校の授業は休みとなっていた。そして休みになった時間で俺たちは、クラスの出し物で展示していた作品と劇の片付けをしないといけない。

 クラスで展示していた手ずから制作した作品の数々は、持ち帰ることを希望した人のモノ以外は学園の中にある美術室に保管されることになる。
 どうやら、タラントコースの学生の作った作品ということで、後に大きな価値が出てくせしれないという理由で大切に保管されるそうだ。

 俺も拓海も持ち帰るのは面倒だったので、自分では持ち帰らずに学校で保管していてもらうことに。文化祭に向けて作ったものだったけれど、こんな風に残されて利用されるとは思っておらず少し驚く。そして後に評価されるように、芸能活動を頑張ろうと思えるような出来事だった。

 そして、今日のメインとなるのは文化祭実行委員が主催した劇の後片付け。体育館の舞台上に置かれた様々な大道具を解体してから、片付けていく必要がある。裏方のスタッフとしては劇本番だけでなぐ、前後にある準備と終わりも大変なぐらいに重要だった。

 劇本番が終了して翌日になっても、息を合わせて仕事をしていく大道具方である俺たち。ここ一ヶ月を一緒に作業していたおかげか、団結力のあるチームワークによってすぐに片付けを終わらせていく。この期間内の経験で、大工道具の使い方もだいぶ上達していたから楽勝ムード。

 そして、結果的には午前中の時間だけで大道具の片付けは終了した。朝から夕方まで一日掛かるかもしれないと予想していたが、その想定は大きく外れて半分以下の時間で終わり、という事になった。

 片付けも終わってお昼となったので、皆で昼食を食べに寮の食堂へ向かう。そういえば出演者である拓海とは、昨日の文化祭が終わった後に別れてから会っていないと感じていたけれど、劇をした翌日ということで疲れて自室で休んでいるんだろうと俺は思っていた。

「うわっ、えっ!?」
「これ、本当?」
「ちょっとテレビの音量上げて!」

 食堂に置いてあるテレビの前で誰かの驚く声が上がると、次に何かを疑うような声。そして、テレビの前に集まってきた学生が音を聞こえるように大きくするよう指示を出す。

 俺も何事かと視線を向けてみると、テレビに映る拓海の姿を発見した。テレビに流れている番組では、拓海に関する何かのニュースを流している映像が見えた。

 よく見てみるお、緑間拓海が引退、というタイトルが目に留まる。拓海が引退だって!? と内心で驚いた俺はしばらく、食い入るようにテレビに流れているニュースを凝視していた。

「僕、緑間拓海は現在オファーを受けているお仕事を全て終わらせて、半年後である来年の3月31日をもって俳優として活動を休止すると共に俳優事務所を退所して、別の事務所に移籍することを決定しました」

 拓海の言葉にカメラのフラッシュが焚かれている。彼の言葉を聞いても理解するのに、しばらく時間がかかった。俳優を休業!? しかも俳優事務所を退所して?

「緑間さんは、なぜ今俳優を辞めるのですか?」

 記者の1人が質問をする。俺も同じような疑問を頭に浮かべていた、突然でいきなり過ぎると。一体何故……。

「俳優活動に限界を感じていた為、別のキャリアに大きくシフトチェンジする必要があると感じた為です」

 想定していた質問なのか、拓海はスラスラと記者の質問に対しての答えを言う。すると続けて別の記者が質問する。

「現在、大人気な俳優として引っ張りだこである緑間さんが何故いま、この時期に俳優を辞めようと思ったのですか?」
「俳優を辞めようと考え始めたのはずいぶん前だったのですが、ようやく決心がついたので今の発表となりました」

「別の事務所に移籍するという事ですが、一体どこの事務所に移籍するのか、お教えてただけますか?」
「次の事務所とは現在、契約に関する話し合いをしている最中です。確定したら改めてお知らせするので、今後の発表をお待ち下さい」

「貴方のファンに向けて何か一言、お願いします」
「誠に勝手ではありますが、僕は俳優としての仕事を辞めて新たな世界へチャレンジしてみたいと考えて、今回の記者会見を行いました。応援してくださっている皆様への感謝は忘れず、今後の新たな人生を歩んでいきたいと決意しました。まだまだ未熟者ではありますが、俳優とは違う新たな挑戦をして大きく成長したいと考えています。よろしければ、引き続き応援をよろしくおねがいします」

 記者たちの質問に、次々と答えていくテレビの向こうの緑間拓海。そして彼の発表を見ている俺は、唖然としていた。

 そして、昨日は文化祭の劇では主役を務めていた活躍を知っている大道具方の仲間も俺と同じように唖然とした顔でテレビに流れるニュースを眺めている。

 本当に、思いもかけない急過ぎる発表だった。でも、テレビで流れている以上はドッキリでも何でも無く、本当に事実であるのだろう。

 しかし、別の事務所に移籍するという拓海の言葉に俺は、ある予感を抱いていた。まさか、そんな……。

 事実を確認するため、俺は急いで拓海と会って話が出来ないか、どういう事かを聞くために彼と連絡を取ることにした。