第48話 文化祭の劇

 優人のクラス出し物であるお化け屋敷の見学をした後、剛輝と合流して校庭で模擬店をしている高校生の店を見て回りながら、昼食をすませる。

「本当のお祭りみたいな、すっごい賑わいだ」
「人が多すぎて、ほんまにめんどいわ」

 お昼時ということで飲食店が人気なのか、来場客が沢山集まってきている。まるで、夏の花火大会で賑わいを見せるお祭りのような、それぐらいの混み具合に思えた。

 そんな周りの人混みの様子に、剛輝もうんざりしている表情を浮かべて言う。俺も剛輝と同意見で、表情は彼と同じような顔をしていると思う。

「そろそろ、劇の準備に入らないといけないですね」

 優人の言葉を聞いて時間を確認してみると、もうすぐ午後の1時になろうとする時間だった。劇の開演が2時30分予定だったので、確かに優人の言う通りそろそろ体育館に向かって劇の準備をした方が良いだろう。

「そうだね、もう体育館に行こうか」
「よっしゃ、やったろうか」
「行きましょう」

 気合を入れて、劇に挑もうとする俺たち3人。時間を掛けて、文化祭実行委員主催の劇を皆で準備したので、是非とも成功して欲しいと願っていた。


***


 体育館に入ると、既にスタッフが何人か劇の準備に取り掛かっていたので、俺たちも急いで手伝いに入る。

 大道具を舞台上に配置して、場面が映えるように並べていく。その後は、小道具が揃っているか、衣装に問題が無いか確認していく。その間に舞台音響のテストを行って、本番に挑む準備を完璧なものに整えていく。

「お疲れ様」
「拓海くん、おつかれ」

 劇の最終練習が終わったのだろう、準備を進めている舞台となる体育館にやってきた緑間拓海が、俺に声を掛けてきた。

「衣装は準備が出来ているから、後は着替えるだけかな」
「ありがとう、すぐに着替えて準備するよ」

 そして午後2時頃には全員の準備が無事に完了。そして開演30分前にもかかわらず、体育館に並べられた席が全て埋まってしまうほどの満員状態。

 急遽、追加の椅子を並べてなんとか立ち見の人を少なくしたけれど、それでも人が集まってくるのが止まらない。この集客数は例年、評判となっている堀出祭の劇にプラス緑間拓海のネームバリューによるものだろう。

 とりあえず、劇が始まる前だが今の所は調子がいい状況。少なくとも、多くのお客さんが劇を見に来てくれているから、後は彼ら彼女らを楽しませられるように出演者達の頑張りを期待する。

「皆で円陣を組んで気合を入れよう!」

 俺の一声で、裏方のスタッフ達が集まってくる。

「僕たちも入れて」

 出演者である拓海も混じってきて、裏方のスタッフに出演者も一丸となって舞台裏で皆、肩を組み大きな円陣を作る。

「皆さん、今まで劇の準備お疲れ様でした。後は今日の本番の出来次第です」

 皆を集めた旗振り役として、俺が掛け声を先導する。皆の気もちが高ぶるように、視線を向けて見渡す。

「それじゃあ、絶対成功させるぞー!」
「「「「「おー!」」」」」
 全員が団結する掛け声を上げて、思いっきり気合を入れる。劇に挑む準備は完了した。そして、ステージが始まる。


***


 今回公演の出演者の多くが、舞台経験のある芸能関係者ばかりだったので特に失敗も無く、話は順調に進んでいく。場面転換の大道具配置換えや、舞台音響もバッチリだ。

 俺たちが今やっている劇の長さは40分と、平均的な学校の文化祭で行われる劇の長さに比べると長めでは有る。だけれど、出演者たちの今までに磨いてきたであろう芝居の能力によって、見ているお客さんを熱中させ時間が長いとは感じさせないだろう、観客を夢中にさせていた。

 俺も裏方として大道具方、音響として働きながら拓海達の演技を舞台の脇から見ている。流石、長いキャリアがある筈だと、拓海は凄いと思わせるパフォーマンスを見て思わずため息をついてしまうぐらい。

 次々と劇のストーリーや世界観の中にに引き込まれていく、それぐらいの感じがあった。まだまだ、劇は続く。

 観客達がよほど真剣に見ているのか、出演者たちの声しか聞こえないシーンと静まり返った体育館の会場。感動な場面では、すすり泣く声が聞こえてくる程だった。

 とんでもなく凄い劇が出来ていると、公演中に感じるぐらいの完成度の高さと観客らの引き込まれ具合。

 しかし、劇にも終わりがやってくる。ラストのシーンで、主演である拓海が1人で舞台に立ってセリフを語っていく。そして、最後のセリフを言い終えたら舞台は暗転して劇が終了する。

 拓海が最後の言葉を放って、体育館がパッと真っ暗になった。その瞬間、会場からは大きな拍手が湧き上がった。長い長い拍手がずっと、鳴り止まないんじゃないかと思うぐらいに長く続く。

 そして裏方のスタッフである俺たちも、歓声を上げて劇の終了を喜んだ。劇は、ご覧の通り大成功だったと感じて。

 こうしてクラスの出し物も文化祭実行委員主催の劇も、両方共を何の問題もなく無事に進めて、堀出祭の終わりを迎えることが出来た。