第47話 堀出祭

 クラスの出し物、そして劇の準備を万端にして堀出祭が開催される当日を迎えた。朝早くから来場者が多く、学園の中には普段と違って人混みが出来るほど大いに盛り上がっていた。

「これは、かなり人が多いなぁ」
「学校の中に、めっちゃ人がおるな」
「何処から見て回りましょうか?」

 いつものように、俺と剛輝と優人の3人組で初めての文化祭を見て回る。拓海も誘おうと思ったけれど、劇の最終練習に入っているという事なので邪魔はできない。そういう訳で、この3人で校舎の出入り口に集まっていた。

 どこの出し物から見て回るか相談した結果、自分たちが今いる位置から一番近い場所の出し物ということで、俺と剛輝のクラス出し物である美術制作の展示から見に行くことに。

「おぉ、ちゃんと置いとるな」
「凄いですね」

 教室の中にある机は取っ払って、学生が制作した絵や彫刻等の美術作品が並んで置かれている。芸能関係の人間が作っているからなのか、審美眼があまり無い俺でもなかなか魅力的だと感じる作品が多数展示されている。製作者の感性が豊かなのかな。

「これが剛輝の作品か。なかなか凄いじゃん」
「賢人のやつも、かなり良い出来やんけ」

 俺と剛輝は、文化祭当日まで互いの作品を見せ合わなくて本番までどんな作品なのかを知らなかった。ということで、今この場所で剛輝の絵画作品を初見で見せてもらったけれど、結構良い感じの出来栄えだった。

 そして俺の提出した、馬の彫刻作品も展示されている。昔から山に分け入って木を削ったり石を削ったりして修行をしていたから、その頃の経験が生きて彫刻で馬という作品を創ることだ出来た。

 そして、今回の作品制作途中で小学生の頃に山の中で修行していた日々を久しぶりに思い出していた。今度の休みにでも、しばらくぶりに山へ行こうかな、と思うくらい。

「他の人の作品も、完成度が高いですね。特に、この絵は素人が書いたとは思えません。凄いです」

 優人が珍しく興奮しながら、教室の中に展示されている作品をじっくりと見て回っている。意外に優人は美術関係が好きらしい、という事を初めて知ることになった。

 優人が満足するまで、しばらく展示を見て回ると次の出し物を見学に行く。次は、1つ上の学年である緑間拓海のクラス出し物である写真展。

 教室は近くて、数分で到着したけれど既に中には人が多く集まっていて、展示物である写真が人混みに隠れて外からは完全に見えない状況。中に入るのにも苦労しそうだった。俳優として活躍している拓海の写真は、流石と言える集客数である。

「めっちゃ人おるな」
「ちらっと見る、ぐらいしか出来なそうだ」

 教室の中に並んで展示されているという写真を見るために中へ入っていくが、人混みの間にチラッと見ただけで、後に並んでいる人に背中を押されて先に進むように歩くしか無い。そして、すぐ教室の外へと出た。

 1つの写真を数秒見るだけで、次へ次へと強制的に先へ進められる。そして、展示されている教室の中に居られたのは5分程度だった。ここはゆっくりと見ることは出来ないようだ。

「次に行こう!」
「人多すぎや」
「もともとの来場者が多いですから、仕方ないですね」

 次に見学へ行くのは、優人のクラスの出し物。結構ギリギリまで議論しあって、結局出した結論がお化け屋敷という文化祭の定番と言われそうな、普通の出し物だった。

「クラスの皆はかなり話し合って色々と案を出したんですけれど、実現性がなくて却下されてしまいました。そして話し合いの時間も徐々に少なくなって、自分たちが出来るモノをやろうという結論に至って、結局はお化け屋敷になってしまいました」

 まぁ、初めての文化祭で大きく失敗でもしてしまったら語り継がれて、学園生活でも後々に大きく響きそう。だから、先ずは無難に置きに行ったお化け屋敷でも正解だと思う。

「お、お、お化け屋敷かいな」
「うん、次は優人のクラスの出し物を見に行こう」
「俺はパス、うん、2人で行ってきぃ。俺は、校庭の出店で何か買って食べなから待っとくわ」

 突然、剛輝は優人のクラスの出し物を見学しに行く事を拒否しだした。というか、剛輝はお化け屋敷が駄目なようだった。これも優人の美術好きに続いて、初めて知る事実であるらしい。

「剛輝ってお化けと駄目だったんだね」
「な!? ち、違うわい! ただ、急に腹が減って何か食べたい気分やねん。うん」
「……」

 あんまりな言い訳で、優人が唖然としている。お化けが怖いという事よりも、お化けが怖い事を隠しているのが少し情けない。

「本当に行かないの?」
「行かん!」
「分かりました、賢人くんと2人で行ってきます」

 本気の拒絶にあったので剛輝とは別れて、俺と優人の2人になって出し物の見学に行く。剛輝とは別れて、本当にお腹は空いているみたいだったので、校庭にある食べ物が売られている出店に行くようだった。


***


「うーん、もう少し驚くようなインパクトがあれば良さそう」
「そうですね。でも反省点は見つかりましたし、次はもっと立派なお化け屋敷が出来ると思いますよ」

 優人のクラスの出し物であるお化け屋敷を見終わった後の、俺達の感想。全然駄目じゃないけれど、物足りない感じ。

 教室の中にはしっかりと遮光カーテンで真っ暗にしていて、小道具の配置に衣装もバッチリ、でも驚かし方が少しイマイチだったかも。

 学園祭の出し物と考えれば、まぁまぁ平均的だと思えるぐらいの出来栄えだった。ただ特徴的な何かが無いので、あとはその何かもう一つ、アッと驚くような仕掛けが用意できれば楽しめそうなぐらいたった。

 偉そうに語った俺の感想を怒らず聞いてくれた優人は、次に出し物でお化け屋敷をするときの為に反省点を出して次に繋げるために、お化け屋敷について学んでいる様子だった。

 勉強熱心だけれど1つ疑問なのは、優人は来年も学園祭の出し物でお化け屋敷をするのかな、と思ったけれど黙っておいた。