第43話 昼食の時間

「優人! こっちだよ」
「お待たせしました、賢人くん、剛輝くん」
「おう、待っとったで」

 平日の学校で午前中の授業が終わり昼食時。別のクラスである舞黒優人と合流して、寮の食堂で本日のメニューを手に取ると適当な場所を確保して並んで座り、俺と剛輝の三人で食事を一緒にする。

 少し遅れてきた優人を席に呼んで、いただきますと手を合わせて食事を始めた。

 今日のメニューは、ポークカレーに切り干し大根のコールスローサラダだ。カレーから匂ってくるスパイスの辛味が、非常に食欲をそそる。カレー好きには、たまらない。

「遅れてしまって、申し訳ありませんでした」
「大丈夫だ、全然問題ないよ。文化祭の話し合いが長引いたの?」

 相変わらず丁寧な口調で謝罪の心をいっぱいにして謝る優人に、気にしないようにと返答しながら遅れた理由を尋ねた。

「はい、そうです。うちのクラスはまだ何を出し物にするのか決まっていなくて」
「まだ決まってへんのか? そりゃ大変やなぁ」

 優人がいるクラスでは、まだクラス別の出し物で何をやるのか内容が決まっていないらしい。文化祭はまだまだ予定日が先の行事だけれど、早めに何をするのか決めないと準備をする時間がドンドン短くなっていくから、内容を決めるのならば早めのほうが良い。

「剛輝くん達のクラスは、もう何をするのか決まっているのですか?」
「あぁ、俺らは簡単な美術作品をそれぞれで作って置いておくだけやな」

 文化祭当日までに絵画を描くか、粘土で作品を作るか、とにかく美術に関する展示品を一人ひとりが作って教室に飾って置いておくだけの簡単な出し物。

 芸能活動によって時間が合わないクラスメートたちが多いということで、集まって何かを作る時間が無いので仕方なく展示物を作って置いておくという消去法で決まった結果だった。

「中学の俺たちは食べ物系は出せないし、演劇も元から出来ないから何をするかは、かなり制限されていて正直とても決めにくいよね」

 中学生である俺たちは年がまだ若いということで、文化祭中に火を使うのは禁止されている。それで、食中毒の危険があるから食べ物系は出し物に出来ない、という理由があった。

 演劇も、学校全体で1つの大きな劇をするのでクラス別で演劇をするのは基本的に禁止されている。

「クラスでは、お化け屋敷や迷路等の定番は避けて、奇をてらいすぎないで斬新な出し物を考えようと必死で話し合いをしています」
「それは、なかなか決めるのに時間が掛かりそうだね」

 優人のクラスで文化祭の話し合いが行われているように、堀出学園全体が文化祭に向けて準備を進めるというムードが高まっているのを感じられた。

「そういえば、夏休み明けのテストの結果はどうだった剛輝?」
「え!? あー、まぁー、……ぼちぼち?」

 突然話題を変えて勉強に関して聞いてみたけれど、焦りまくり曖昧な答えを返してくる剛輝の表情を見て察する。あまり芳しくないようだ。

「これは、また勉強会を開く必要があるね」
「僕も手伝います」
「それはいいね! 学年一の秀才が助っ人してくれるなんて、大助かりだ」
「うへぇ」

 毎日厳しいトレーニングを受けて疲れている筈の優人は、それでも成績を落とすことなく2学期の中間テストで一位の成績を収めていた。そんな彼が先生として勉強会に参加してくれるのは頼もしい。

 前からずっと感じていた事だけれど、芸能活動が忙しくても学業は疎かにはしないように頑張りたい。剛輝はダンスを覚える記憶力や理解力がある、元の頭の良さがあるのだから、ちょっと勉強をすれば学年平均は簡単に超えられるはず。

 だから剛輝が感じている勉強に対する苦手意識が消えればなと思いつつ、定期的に勉強会を行っていた。

「赤井くーん!」
「青地くんッ!」

 食事中だが突然名前を呼ばれて声の聞こえた方へ振り返ると、ミーハーな女子生徒が何人か集団でこちらに向かって手を降っているのが見えた。そんな彼女たちに向かって、手を振り返すレスポンスを見せる。一緒に座っている剛輝も。

「こんにちは」
「おう」

 俺たちが反応を見せると、キャーキャーと騒いで食堂から出ていく女子生徒たち。まだ俺たちはデビューした訳では無いけれど、学園内での認知度は有るので時々今のように歓声を上げる見物人の生徒が居たりする。

「優人くん、がんばって」
「は、はい。ありがとうございます」

 そして最近では優人にも声援を掛けるファンも現れてきている。だが慣れていない優人は、真面目な表情と丁寧な口調で対応が硬い。

「また堅っ苦しくなっとるな」
「まぁ、徐々に慣れていくしかないよ」

 剛輝は優人の堅い対応を指摘して、俺は仕方ないけれど早いうちに慣れるように頑張ろうとアドバイス。

「精進します」

 そんな会話をしているうちに昼食も食べ終わって、午後の授業が始まる前に寮の食堂から学校へと戻る。

 優人は別のクラスだから、校舎に入った所で別れてそれぞれの教室へと向かう。剛輝と俺は一緒のクラスなので、廊下を並んで歩いて戻るのが昼休みから午後の授業が始まるまでに行われている日課であった。