第41話 3人の会話

 事務所にある会議室に集めれられた、俺と剛輝、そして舞黒くんの3人は三喜田社長からアイドルグループのデビューについて突然な話を聞かされた後。引き続き俺たちはそのまま会議室に残って会話を続けていた。

「そういえば、舞黒くんは何故アイオニス事務所に所属することになったの?」

 起業したばかりのアイオニス事務所では、新人のオーディションをしているとは聞いていない。三喜田社長も、今はとにかく事務所が安定するまでは直近の問題だけを処理していくのと、今所属している人材を優先的に売り出していく準備をすると言っていた。

 それなのに、新しく所属することになったという舞黒くんに関して疑問を持った。一体、どういう経緯で事務所に所属することになったのかを。

「実は少し前から、三喜田社長にはスカウトされていました」

 どうやら、三喜田社長はアビリティズ事務所から退任する少し前の頃から既に舞黒くんを見出してスカウトを仕掛けていたらしい。

 けれど舞黒くんは、勉学を優先して励んでいるから他のことには興味を持てないという理由で、スカウトを断っていた。

「それが、なんで急にスカウトを受けることにしたんや?」
「先日の出来事で、赤井さんに出会ったからです」

 剛輝の質問に、そう答える舞黒くん。先日の出来事、というのはやはり不良との揉め事に関してだろうか。でも、そんな事に巻き込まれて俺と出会ってと言うことがスカウトを受ける理由になる、とは俺には思えなかった。

 舞黒くんの語る理由になんとなく納得出来ないというか、何というか……。

 でも、とりあえずはあの時に巻き込んでしまった事をもう一度お詫びしていたほうが良いか。そう考えて、俺は頭を下げて舞黒くんに謝った。

「あの時は、巻き込んでしまって申し訳ない」
「いえ、僕の方こそ人質なんかになって赤井さんに迷惑をかけてしまいました」

 普段は感情の薄い感じで無表情の舞黒くんは、謝るときだけ本当に申し訳ないというような表情を浮かべている。

 普段の表情は、感情をしっかりとコントロールして相手に弱みを見せないようにしているという事だろうか。他人に弱みを見せたくないという心理、もしくはプライドのようなもので表情が薄くなっている、のか。

 しかし、人質になって俺に迷惑を掛けたというのは順序が逆だ。俺が揉め事を起こすような事をしなければ、彼は巻き込まれることは無かった。だから、俺が謝るのが筋。

「いや、迷惑を掛けたのは俺の方」
「いいえ、僕の方こそ迷惑を掛けることになって」

「ちょいちょい! 終わったことやし、もうその話は止めや」

 謝り合戦になってしまった俺と舞黒くんの間に割って入り、止めてくれたのは剛輝くん。確かに、謝ってばかりでは話を先に進められないか。

「そうですね、とにかく先日の出来事がきっかけで僕は三喜田社長のスカウトを受けることに決めました」

 そう言って話を終えたのか口を閉じる舞黒くん。結局、詳細はよく分からないまま。不良との揉め事に巻き込まれたことが、舞黒くんがスカウトを受けたキッカケの一つで間違いないのだろうけれど、彼は全部を話している感じではない。

 でもまぁ、理由を隠したがっているのなら無理に聞き出すのも良くないだろう。そう思って、話題を変える。

「とりあえず、今後のグループでの活動をどうしていくか意識合わせをしておこう」

 と言ってみたものの、まだデビューは確定したわけじゃないけれど。でも高い確率でデビューは決まっているらしいので、今後の活動についてメンバーとなる俺ら3人で話し合っておいたほうが良いだろう、と思って言ってみた。

 ……言ってみたけれど、一体何について意識を合わせておくべきか言った後で悩む。

「とりあえず、グループのリーダーは決めたほうが良いんじゃないでしょうか?」
「リーダーね。確かに、決めておいた方が良いかな」

 英語で”導く人”という意味のリーダー。舞黒くんの言う通り、成果を挙げるためにメンバーを目標に向かって導いていく人、というのを決める必要がある。

「僕は赤井さんがリーダーとなるのが適任だと思います」
「おう、俺もそう思うわ。賢人がリーダーになってくれ」
「俺!?」

 どうやら、2人ともリーダーとして俺を指名してきた。舞黒くんはともかく、剛輝は自分がリーダーになりたいと言いたそうな性格だと思っていたけれど、意外な事に俺をリーダーにと指名してきた。いや、リーダーと言うのを面倒だと思って俺に譲ったという可能性もあるか。

 ともかく、2人に指名されたのならリーダーを引き受けるのも吝かではない。ということで、Chroma-Keyのリーダーは赤井賢人が引き受けるという事はあっさりと決まった。

「後は優人の話し方、硬すぎひんか? 同い年やろ俺ら」
「赤井さんにも説明したんですけれど、僕のこの話し方は癖になっていて直せないんです」

 僕も前に気になった彼の話し方について、剛輝もやはり気になったのか突っ込んだが彼の癖ということで直せそうにない。

「そんじゃあ、名前の呼び方くらいは親密に呼んでえや」
「んっと、はい。わかりました。剛輝くんに賢人くん」
「あー、まぁええわ」

 というやり取りの結果、話し方は丁寧なままだけれど呼び方は変わって、お互いに賢人、剛輝、優人という下の名前で呼び合う関係には進展した。