第39話 意外な結末

 忘れていた過去の因縁によって新道という名の不良に呼び出されて、1対1で対決することなったが、あっさりと決着をつけたその後。

 人質とされていた舞黒くんを無事に引き取ることが出来て、廃工場からも何事も無く出て来られた。

 舞黒くんを引き取る際に、他の不良たちとも少しだけ会話をした。今度うちの学園の生徒に何かしたら、こいつと同じような事になるぞと言って、地面に失神させた不良を指差して忠告する。

 それから、俺に何か文句があるのならば人質を取るようなことはせずに直接話しに来い、とも言っておいた。

 新道との戦い最中に乱入してこないで、1対1で最後まで本当に決着をつけさせてくれた。もしかしたら乱入する暇もなく終わってしまった、という可能性もあるけれど……。

 まぁ不良であっても道理はわきまえているらしい不良なら、ある程度なら話を聞くだろうと思って警告するように言ってみたけれど、どこまで応じるだろうかは分からない。

 でも、自分の住んでいる街に彼らのような不良達が集まっているとは知らなかった。知ってしまった今は、過去の経験から何か対策を講じないとイケナイと思ってしまう。

 だが、それよりも今は。

「舞黒くん、だよね」
「はい、そうです」

 曖昧な記憶だったが、彼の名前は正しく覚えていたようだ。俺が名前を呼ぶと、頷いて答えてくれた。

 身長は俺よりも少し小さいくらいで165センチと、中学1年生にしてはなかなか背が高いと思う。それに顔には秀才そうな見た目の黒フレームなメガネを掛けている。そのメガネも特にレンズに傷が入ったり、フレームが壊れた様子はなかったので良かった。

 でも今までは、芸能人である俺はタラントコースであり、新入生代表に選ばれるぐらいに頭の良いらしい彼は、特待生が試験を受けて入学するコースだったはず。入学したコースが違うので、顔を合わせる機会も無かった。

 友人関係でも知り合いでもない。俺と共通点なのは堀出学園の生徒というだけの彼を巻き込んでしまって、本当に申し訳なく思う。

「俺は赤井賢人。それで、怪我とかはしてない?」
「大丈夫です」

 あっさりとした舞黒くんの態度に拍子抜けしてしまう。先程まで、不良たちに拉致られて廃工場で囲まれて人質だと言われていた。なのに今は、なんにも感じていないような他人事という風な無関心の表情で舞黒くんは俺に並んで付いて歩いてきていた。

 顔や服装を見たところ、怪我はしていないようで安心していたが念のために本人にも尋ねてみれば、大丈夫という一言の返事で安心する。

「ごめんなさい、俺のせいで巻き込まれたみたいなんだ。どう、お詫びしていいか」
「いえ、僕は問題ないです」

 彼の性格なのだろうか表情は無表情の一種類で変わらず、話し方もマイペースな感じで、か細い声で答えてくれた。

「そういえば、上着は俺の友達が寮に持って帰っているから、あとで俺が持っていって返すよ」
「ありがとうございます」

 お礼を言われるほどのことでもないのに、律儀に感謝の言葉を丁寧に伝えてくれる舞黒くん。

「それと、同級生だから敬語で話さなくて普通の喋り方でいいよ」
「僕のこれは癖で、丁寧にしか話せません。ごめんなさい」

 せっかく出会えた機会だからと、話し方をフランクに変えて距離を近づけようと思ったけれど拒否されてしまった。

 やっぱりこんな事に巻き込んでしまったから距離を取られていると思ったけれど、舞黒くんは今までの無表情を申し訳無さそうな別の顔に変化させて、本当に申し訳ないという感じで謝られてしまった。

「いや、いいんだ。俺の方こそ、ごめん。あぁ、こっちも話し方を丁寧にしたほうが良い?」
「赤井さんは、今のままでいいです」

 先程までの出来事もあってか、初対面なのにあまり良い感じじゃない会話で終わってしまった。そして、そのまま学生寮にまで戻ってくると、すぐに舞黒くんとは別れてしまった。

 しかし今回のことは、本当に予想外の出来事であり周りの人も巻き込んでしまった。これは、早々に対策が必要になる出来事だと俺は思った。


***


 そんな事があって数日後。あの後にも、念のためにとしばらく不良達の復讐を警戒していたけれど、特に何事もなく過ごせていた。不良達に関するような噂も、特には聞いていない。

 そして今日は、三喜田社長に事務所へ呼ばれて会う約束をしていた。しかも、俺だけじゃなくもう1人。俺が座っている横に剛毅も座って待っていた。

「なんで俺らが呼び出されたか賢人は知っとる?」
「いや、聞いていないよ」

 俺たち二人は事務所の中にある会議室で、じっと待機していた。何やら発表があると聞かされていたけれど詳細については何も聞いておらず、三喜田社長を待っている間にどんな話なのかドンドンと気になってくる。

 前もって詳細を聞いておけばよかったと、今更になって後悔する。まぁ、今は考えたって三喜田社長に話を聞かないと分からないから仕方ない。だから、来るのを今か今かと待ち構えていた。

 しばらく待っていると、会議室の扉が開いて三喜田社長が部屋にスッと入ってきた。いつもの定番なラフな格好で。

「遅くなった、すまん」

 謝りながら部屋の中に入ってきて、どうやら急いで来てくれたみたいだった額から少し汗をかいている様子だった。そして三喜田社長の後ろにもう一人、誰かの影が見えた。

 その三喜田社長の後ろに付いて会議室に入ってきた人物を見て驚く。彼は、先日顔見知りになったばかりの人だったから。

「お久しぶりです赤井さん。青地さんは初めまして、舞黒です」